孫育てに積極的にかかわるおじいちゃん“イクジイ”の力に注目し、その可能性を講座や講演会などで説いている人がいます。NPO法人「ファザーリング・ジャパン」理事で、同組織内の「イクジイプロジェクト」のリーダーを務める村上誠さんです。まずは、同プロジェクト発足のきっかけから、お話をうかがいましょう。
おじいちゃん、おばあちゃんだからこそ、伝えられることがある
イクジイプロジェクトは、2011年4月に始まりました。僕自身、共働きで父が“孫育て”にかかわってくれてとても助かったこと、地元のおじいちゃん、おばあちゃんが息子に声をかけてくれて地域のつながりを実感したことが、イクジイプロジェクト誕生の原動力になりました。
父は工事の現場監督をやっていた職人気質の男。僕が小さいときは遊んでもらったり、世話をしてもらったりした記憶はないのですが、孫が生まれてからはすごく変わりました。孫育てというと、忙しいお父さん、お母さんを助けてくれる“手”というイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。今の人が忘れがちな礼儀や道徳心を話して聞かせるなど、若い父親、母親ではなかなか伝えきれないものをうまく伝えてくれます。
僕の母は6年前に脳出血で倒れて、3年前に他界しましたが、いま小学3年生の息子は、僕が介護していたおばあちゃんとの記憶があります。弱者、老いといったものに触れることによって、子どもの感受性が刺激され、弱者をねぎらう気持ちが育まれたと思います。データをとったことはないですが、介護職に就く人って、おじいちゃん子、おばあちゃん子だった人がすごく多い。老いを見てきたことが心の成長にプラスになっているからなのでしょう。