特別対談
少子化や待機児童はどうなる?
「2020年以降の日本の子育て」

2017.04.27

ミキハウス編集部

小さな子どもを持つ親御さん、そしてこれからママ、パパになろうという方々にとっては、将来の日本の子育て環境がどのようになっているのか気になるところでしょう。ご存知のように、日本では少子(高齢)化が進んでおり、その傾向は今後も続くことが予想されています(2015年は年間出生率1.45と前年に比べ上昇はしたものの、1991年以降、緩やかな減少傾向にあります。 ※厚生労働省「平成27年人口動態統計の概況」、内閣府「平成26年度版 少子化社会対策白書」を参照)。

これだけ少子化問題が叫ばれてもなお、その波を食い止めることができないのはどうしてでしょうか。そしてその解決策はあるのでしょうか。そこで出産準備サイトでは、現状の子育て環境を鑑みつつ、“2020年以降の日本の子育て”をテーマに、おふたりの専門家に対談を依頼。

産婦人科医であり第2次・第3次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を総理に進言してきた慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典先生と、少子化問題を専門とする社会学者で、内閣府「少子化危機突破タスクフォース」の一員としても活躍する中京大学の松田茂樹先生が意見を交わしました。

 

◆「働く女性が増えたから少子化が加速した」はおかしい

——まずは、現在日本が直面している少子化問題の原因について伺いたいと思います。おふたりはどのような点にその要因があるとお考えですか?

吉村泰典先生(以下、吉村):一般的に言われている少子化の原因としては、「女性の社会進出」があります。キャリア形成を望む女性が多くなり、それに伴って未婚化や晩婚化の傾向が強まり、なかなか子どもを持てない……それが少子化の要因になっていると。

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戦後から70年代初頭までは上昇傾向にあった婚姻率と婚姻件数ですが、その後は右から下がり

——女性の社会進出が進むにつれて、未婚化や晩婚化の傾向が強まったとはよく聞きますが、こうやって表で見ると、こんなに下がっているんですね…。

吉村:ところが海外においてはね、そうした“働く女性”が多いにも関わらず、少子化を克服した国はいっぱいあるんですよ。ですから僕は、女性の社会進出が少子化の原因とは単純には言えないんじゃないかとは思っています。

松田茂樹先生(以下、松田):その通りで、働く女性が増えてきたことが、必ずしもダイレクトに少子化に結びつくものではないです。それは世界どこでもそう。最新の研究では、女性が子どもを持とうとしたときに、子育ての役割と他の役割(仕事や自分の生活等)とのバランスがとれるということが、出生率の高い国に共通する条件なのではないかとも言われています。

——女性が家の外で働くことと子育てをうまくバランスを保ちながらやれている社会では、出生率が高いというわけですね。

松田:はい。ですから、たとえば仕事においては、ものすごく働くコースと、少し緩い働き方のコース、そして一旦は専業主婦になるものの、復職して同じような職に就けるコース…など、選択肢を整えてあげることが日本にも必要なのではないかと思います。

吉村:その通りですよね。一口に「働く女性」といっても、ものすごく多様性があるわけですから。

松田:仕事というのは、やはり選択するべきものですし、自分の能力、体力、価値観によっても違ってきます。しかし日本では、少し緩い働き方に対する待遇が低すぎる。

——少し緩い働き方、つまりパートタイムであるとか時短や定時で帰れる仕事に対して待遇が低いと。

松田:そうですね。パートにしても昇進の機会が少ない。子育てと仕事が両立しやすい国というのは、そうしたところがしっかりと作られているため、さまざまな働き方のチョイスができるんですよ。そのようなワークライフバランスの問題は、日本の少子化を考える上で大きな問題かと思います。

吉村:日本の場合、女性は結婚をしないと子どもを産めない状況にあります。婚外子は約2%くらいしかないわけです。僕はこれも少子化の一因じゃないかと見ています。出生率を回復してきたヨーロッパの国々をみると、婚外子の割合が50%を超える国はいくらでもあるんですね。オランダに関しては、この30年で10倍近くも増えている(アメリカ合衆国商務省「Statistical Abstract of the United States 2012」など参照)。日本でも近年、婚外子を巡る環境は良くなってきてはいると思うんですけど、欧州で起こったような急速な変化はやはり日本では起こりにくいですか?

松田:急速に婚外子が増えるとはみていません。その理由を二つ挙げると、ひとつには、日本はまだ婚外子を法的に保護する仕組みが弱い。もうひとつは日本だけでなく、韓国やシンガポールなどについても言えることですが、アジアでは依然として家族や結婚に重きを置いています。家族制度が強いんです。それに対し欧州では、いわゆる伝統的な家族生活よりも個人の生き方重視、自己実現重視といった価値観の変化がこの数十年の間でありました。もちろん日本で同じようなことが起きれば変わるかもしれませんが、それはなかなか難しいと言わざるを得ません。

吉村:となると、日本において出産は、結婚とセットと考える必要が今後もあると。

松田:そうですね。データをみても、子どもをもうける前に結婚したいという意識が強いようです、若い世代でも同じですね。

次のページ ◆日本は子育てしやすい国、しにくい国?

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