心を育む最高の“相棒”…だけど心配も? 赤ちゃんとペットの「いい距離感」とは

心を育む最高の“相棒”…だけど心配も?
赤ちゃんとペットの「いい距離感」とは

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赤ちゃんを愛おしそうに見守る犬、寄り添って眠る赤ちゃんと猫。ネットにもテレビにも、赤ちゃんと動物たちのほほえましい写真や動画が溢れています。

ペットを飼っているご夫婦が赤ちゃんを授かったら、「うちのペットも赤ちゃんとあんなふうになるのかな?」と楽しみな気持ちの一方、「感染症やアレルギーの心配はないだろうか」と心配になる方もいるかもしれません。

もっとも、いろいろなメディアで、小さなうちからペットと触れ合うことの効用も取り上げられています。そういった心配よりも、「思いやりのある優しい子になってほしいし、命の大切さを感じるきっかけになればいいな」と前向きに考えているママ、パパも少なくないでしょう。

そこで今回は、ペットと暮らすリスクの「本当のところ」、または「望ましい距離感」について取材しました。

今回の記事のポイント
①ペットからの感染症を防ぐには?
②ペットが赤ちゃんを傷つけてしまう「事故」を防ぐには?
③ペットがいることのよい影響とは?

 

まずはペットの健康管理をしっかりと。その上での行動管理が大切

ペットは家族の一員 ――― こうした言葉もいまでは当たり前。事実、国内でペットとして飼われている犬と猫の合計数は、平成27年度時点の推計で、約2000万匹弱と言われています。快適な室内で、食べ物にも気をつかって飼育されている最近のペットの寿命は、30年前と比べるとおよそ2倍。結果、人とペットとの付き合いは長くなり、それに伴い関係性もより密接になっているようです。

日本獣医生命科学大学獣医学部の水越美奈先生によると、ペットを清潔な状態にして健康管理をきちんと行い、かつ口を舐めさせたりするなどの濃厚な接触をさけていれば、赤ちゃんに感染症などの心配はほとんどないそうです。

「予防接種とフィラリアの予防、内部寄生虫(お腹の虫)と外部寄生虫(ノミ、ダニ)の予防などをしっかりして、定期的な被毛の手入れで皮膚疾患を防ぎ、健康診断を受けていれば、ほとんど問題はないでしょう。また喘息などの原因にならないようお部屋に落ちたペットの毛などもお掃除しましょう。いずれにせよペットが健康であれば、赤ちゃんや小さい子に病気がうつる心配はかなり少ないといえます。しかし口の周りを舐めさせるなどの濃厚接触があったり、引っ掻かれたり咬まれたりすることで、犬や猫の口の中にいる常在菌が体内に入ると、免疫力の低い赤ちゃんはお腹をこわしてしまうこともあります。稀ですが、重い病気になってしまう赤ちゃんもいます。ほんのちょっと目を離したすきにこのようなことがおこらないようにベビーベッドを利用することは良い方法だと思います」(水越先生) 

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犬や猫に関わらず、小鳥やフェレットなどその他のペットについても、同様に健康管理と濃厚な接触をしないように管理してあげさえすれば、それほど感染症を気にすることはないようです。また、ペットを飼う上で感染症と同じくらい注意しなければならないことが他にもあると、先生は言います。

それは、ペットが赤ちゃんや子どもを傷つけてしまう事故。日本でもアメリカでもこうした事故の被害者の8割は、10歳以下の子どもだそうです。

事故はなぜ起きるのでしょうか。次の章で、どうしたら事故をなくすことができるかについて、先生に解説いただきます。

 

妊娠が分かったら、ペットをケージやサークルに慣れさせましょう

赤ちゃんは好奇心のかたまり。目の前にあるものは、何でもつかんだり、ひっぱったり。ハイハイができるようになると、動くものに興味を持って動物を追いかけたりもします。そして自由に歩けるようになった時には、よりアクティブに……そんな元気な姿は、ママやパパにとっては、ほほえましいものですが、ペットには「脅威」であり、それが事故につながることが多いようです。水越先生によると、事故の要因として以下のようなことが考えられるそうです。

「飼い主に良くなついていて、おとなしい性格の犬や猫でも、好奇心いっぱいで近づいてくる赤ちゃんといつも一緒に生活するのは大変。ペットは言葉をしゃべれませんが、嫌なことをされたら、ちょっと避けるなどして『やめて』というサインを出します。大人はわかってやれますが、赤ちゃんはそんな“ボディランゲージ”を理解できません。しかも赤ちゃんは背が低いので、犬なんかとは目が合いやすい。そして赤ちゃんはじっと目を見つめてしまう。犬にとっては、じっと見られるということは威嚇されていることと同じ。加えて赤ちゃんは体をつかまれたり、しっぽや耳を引っ張ったりもする。そうするとペットは驚いて、場合によっては噛んだり、引っ掻いたりという反応をしてしまうんです」(水越先生)

赤ちゃんにとっては単なるじゃれあいでも、時として犬や猫を追い詰めてしまい、“反撃”をすることもよくあること。赤ちゃんや子どもの皮膚は柔らかいので、そうしたペットの反撃で、思わぬケガや事故につながってしまうこともあると水越先生は語ります。

(大人の)飼い主にとってどんなに聞き分けのよいペットだとしても、「ベビーシッター」にはなれないことは、しっかりと心に留めておいた方がよさそうです。

とは言え、ペットも家族の一員と考えているご家族も多いと思います。ペットも赤ちゃんも、みんなでハッピーに暮らすためには、どうしたらいいのでしょう。

「まず大人が絶対に目を離さないこと、赤ちゃんとペットを『ふたりっきり』にしないことが前提です。もし、大人が赤ちゃんから目を離す時には、ペットはケージやサークルなどの隔離した空間で、おとなしくすごせるように、しつけておく必要があります。ペットだけのスペースを作っておくと、ペットの餌やトイレを赤ちゃんが触るのを防ぐこともできます。ペットにとっても、家の中で落ち着ける場所があるのは大切なことですしね。また、ペットの爪を切ったら、必ずやすりをかけて先を丸めておくと、けがの防止に役立ちます」(水越先生)

ちなみに水越先生によると「相手への配慮とか思いやりがちゃんと身につく小学校の高学年ぐらいまでは、親がペットと子どもの間に“介入”して、いい関係を作ってあげて欲しい」と語ります。安全に、安心に赤ちゃんとペットが暮らすには、ママとパパがしっかり見守ることが重要なポイントのようです。

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赤ちゃんの心の成長ばかりでなく、体質にも好影響が期待できます

続いて、ペットのいる家庭で赤ちゃんが育つことのメリットについても先生に解説いただきましょう。

「ペットとの暮らしは、いろいろな面で赤ちゃんにいい影響を及ぼします。まず、ペットの世話をすることで、子どもたちには自尊心が育ち、協調性、共感性が豊かになると言われています。だいたい幼稚園児ぐらいになると、餌やりや散歩、ブラッシングなどのお手伝いができるようになりますよね。それまで大人に世話をされるだけだった子どもたちは、自分がお世話をする対象を持つことで『自信』を持てるようになるんです。また一緒に遊ぶと、思いやりややさしさが育ちます。これは大きくなってから、人間関係を作っていく時に役に立つものですよね」(水越先生)

動物とともに暮らす効用は、精神的な面ばかりではありません。犬と暮らしている子どもたちは、アレルギーを起こしにくい体質になるという研究が数多く発表されています。

「例えば、旧国立成育医療センターなどが広島市内の約1万人の小学2年生の保護者を対象にしたアンケート調査(日本アレルギー学会、2006年発表)によると、生後1歳までに犬と生活していた子どもには、アトピー性皮膚炎の発症リスクの減少がみられたといいます。またアメリカでも、小さい頃から犬と暮らしている子どもは、感染症や呼吸器疾患にかかるリスクが減るというデータが報告されています」(水越先生)

先生によると、「清潔すぎる環境で育った子どもは、アレルギーを起こしやすいと言われています。犬や猫のいる家の中は、お掃除が行き届いていても、ほどよくホコリなどが舞っているんじゃないですか」とのこと。ペットが原因でアレルギーや感染症を発症するのではないかと心配するママ、パパにとって、これはちょっと意外な効用と言えそうです。

ペットと心を通わせる幸せな子どもたち

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ペットと赤ちゃんのいる暮らしは、実際はどんなものなのでしょう。最後に先輩ママ、パパの声から、その一端をご紹介しましょう。

Mさんは、20代の専業主婦。東京の郊外に住み、2歳の女の子と8か月の男の子がいます。独身時代から飼っている8歳のポメラニアンのポチについて、「子犬のころからサークル飼いしていたので、本当に手がかからないんです」とMさんは言います。

「上の子ができるまで私は働いていましたから、ポチはサークルの中でのお留守番に慣れていました。今でも散歩の時と夕食後の数時間だけ、サークルから出すことにしています。ポチもサークルの中が落ち着くようですし。子どもたちはもちろんポチが大好き。ポチがサークルから出されると大喜びで、遊ぼうとします。最近ハイハイを始めた息子に、娘が『ポチは小さいから、やさしく触るんだよ』と何度も教える姿に、成長を実感しています。今は、上の子をベビーカーに乗せて、下の子は抱っこひもで、ポチのリードを片手に近くの公園まで出かけていますが、上の子がますます活発になってきたので、このスタイルでのお出かけは、難しくなりつつあります。そろそろポチのお散歩は、帰宅した主人に頼むしかなくなるでしょうね。今は子育てが一番大変な時期なんでしょうけれど、ポチは家族のアイドル。ポチのいない生活は考えられません」(Mさん)

自分とは違うものに対する思いやりや想像力を身につけることは大切なこと。子どもたちは、生活の中で生き物の温かみを知り、気持ちが通じ合う喜びを感じるようになるようです。

一方、鹿児島市に住む30代のパパ・Tさんは、4年前奥さんのために子猫を飼うことにしました。
「結婚して3年経っても子どもができなかったんです。ところが、猫のシェリーが来て4か月目に待望の妊娠、娘が生まれました。最初のうち、シェリーは赤ちゃんというものを理解できないようで、娘を避けているように見えました。でも2、3か月経ったある日、ふと気が付くとバウンサーで眠っている娘のそばで、見守るように座っているシェリーの姿があったんです。今では大の仲良しで、娘が幼稚園から帰ってくるのを、毎日玄関で待っているほど。猫らしく、ちょっと気まぐれで、リビングの棚の上から部屋の中を眺めていることも多いのですが、家族が揃った団らんの時など、気がつくと、ちゃんと加わっている姿がなんともかわいい。シェリーも自分が家族の一員だと自覚しているのかな」(Tさん)

猫をケージやサークルの中に閉じ込めるのは難しいかもしれません。赤ちゃんから目を離すときには、猫が落ち着ける小部屋などに入れて、ドアを閉めてしまうのがいいようです。赤ちゃんとペットが最良の友達になるためには、ママ、パパの気遣いが欠かせませんね。
ペットと一緒に育っていくことで、赤ちゃんは、動物を身近に感じ、そのぬくもりややさしさに包まれて育ちます。もし今ママとパパに大切なペットがいるのなら、妊娠したからと言ってペットと暮らすのを諦める必要はないようです。

ペットの健康管理をしっかりとすること、目を離すときには別々にしておくことなど、基本的なことを忘れずに接していれば、かわいい我が子と大切なペットが、どちらもお互いを大切な存在と感じて、幸せに暮らせるでしょう。ママ、パパにとってもいやしと愛情に満ちた日々になりそうですね。

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