妊婦さんや赤ちゃんのための防災(後編)わが子のためにできること

妊婦さんや赤ちゃんのための防災(後編)
わが子のためにできること

妊娠・出産インフォ

地震大国、日本。国土技術研究センターよると、2000年から2009年の間に地球上で起きたマグニチュード6以上の地震の実に20.5%が日本で起こっているそうです。また豪雨にともなう水害、台風被害、豪雪被害、そして火山の噴火による被害。ありとあらゆる自然災害のリスクも忘れてはならないでしょう。

「妊婦さんや赤ちゃんのための防災」と題して前後編でお送りしている本企画。前編の「いざという時の備えは万全ですか?」では、災害への備えについて紹介しました。続く後編では、「もし災害が起きた時、どう行動するべきか」について考えていきます。

01

今回お話を伺ったのは、乳幼児や未就学児のママ向け備災講座「防災ママカフェ®」を主宰している一般社団法人スマートサバイバープロジェクト特別講師のかもんまゆさん。

かもんさんは、東日本大震災の際、被災地のママと子どもたちへの物資支援活動を機に、「ママが知れば、備えれば、子どもの未来は変えられる」を合言葉に、東北や熊本のママたちのリアルな被災経験から学ぶこと、家族の笑顔のために備える大切さを全国のママたちに伝える「防災ママカフェ」®」を開催、9000人を超える方が参加しているそうです。

02

参考:ママのための防災ブック『その時ママがすることは? 被災地のママの声から学ぶ子どものいのちを守る防災』
http://sspj.jp/brochure-mama/

 

大地震!まずは「自分のいのちを守る」こと。

「『防災!なんて言われても、正直なかなかピンとこない』、『毎日家事に育児に忙しくて、いつ来るか分からない地震に備えるなんて正直面倒』、『怖いから考えないようにしている』—-そう考えているママも少なくないと思います。でも日本は、 体に感じない地震を含め、一日平均300回を超える地震が起きている地震大国。もし今、大地震が起きたら、あなたは大切な赤ちゃんのいのちを守ることができるでしょうか?『この子は絶対に私が守る!」という想いだけでは、いざという時何もできないかもしれません』(かもんさん)

東日本大震災や熊本地震などで被災したママの姿、そして生の声を知っているからこそ、そう語るかもんさん。たしかに“気持ち”だけでは守れないこともあります。だからこそ、ママやパパが、いざ災害が起きたとき、実際にどう行動したらいいのか、事前に何を準備しておいたらいいのかを考え、行動しておく必要があるのです。

東日本大震災や熊本地震、そして全国いつどこで起きてもおかしくないといわれている巨大地震の揺れの大きさは「震度7クラス」。これだけ大きな地震になると、人は自分の意志では行動できなくなると言われています。

宮城県石巻市に住むママは東日本大震災が起きた時のことをこんな風に振り返ります。
「ゴーッというスゴい地鳴りがして、大きな揺れが。いつもより長く、大きくて、すぐに尋常じゃない地震だと分かった。よつんばいになっても前に進めず、子どもがいるベビーベッドまで中々たどり着けなかった。防災無線は全く聞こえなかった」(『その時ママがすることは?』より)

03

そんな状況の中で、まずわが子を守らなくてはと考えるのがママとパパですが、まずは大人が自分の命を守ることが第一、とかもんさんは言います。

赤ちゃんを守るためには、まず大人が命を落とさない、ケガをしないこと。実際、『ママ・パパが犠牲になっては、赤ちゃんを救う人がいなくなってしまうから』と東北のママたちは言っていました」(かもんさん)

子どものいのちを守るために、まずは自分たちが命を落とさない、ケガをしないよう、地震の瞬間は全く動けないと考えて、日ごろ長くいるリビングや、寝室の家具は、「落ちない」「動かない」「倒れてこない」ように、しっかり固定しておくなど、日ごろから身近なところでも防災の工夫をしておくことが大切です。

 

■「緊急地震速報が鳴ったらやること」を決めておきましょう

最近では大きな揺れの前に、スマホやテレビから緊急地震速報が流れることも多くなりました。1995年に起きた阪神淡路大震災を教訓に実用化された緊急地震速報は、災害を予知して警戒を呼び掛ける地震早期警報システムです。

速報といっても実際の揺れが起きるまでは数秒しかないのが現状ですが、「もしかしたらその数秒でも、家族のいのちを守る行動ができるかもしれません。」とかもんさんは言います。

「ただし、緊急地震速報を聞いてから何をするか考えたのでは絶対に間に合わないので、例えば、『玄関のドアを開けに行く』とか、『大声で家族に知らせる』『家の中の決まった場所に集まる』など、速報が聞こえたら何をするか事前に決めておくと、すぐに行動に移すことができるはずです」(かもんさん)

熊本地震で被災した0歳児のママはその時の自分の心境をこう語っています。

「とにかく大パニックでした。食器が大量に割れたので、きっとすごい音がしたはずなのに、それすら気付かないほど、この子を失ったらどうしようという恐怖感がとても強かったです」(『その時ママがすることは?』より)

04

「地震はいつどこで起こるか分かりません。人間は大きな災害に遭遇すると、ショックで頭が真っ白になり、普段は何でもない行動すら出来なくなってしまうことも少なくありません。普段から『今ここで起きたらどうなるかな』『どうしたらいいかな』とシミュレーションしてみるクセをつけておきましょう」(かもんさん)

次の章では揺れが収まってから何をしたらいいのか、どんなことに気をつけるべきかについてまとめます。

 

揺れが収まったら、するべきこと

揺れがおさまったら、すぐに3つのことをチェックします。

1 次の行動を決めるために「正しい情報」を得ること。

2 家族がケガをしていないかを確認すること。

3 家の中の状況を確認すること。

火を使っている時は、揺れがおさまってから、慌てずに火の確認をします。大地震の際は、停電している可能性が高いので、普段から電源がなくても使えるラジオやスマホ(+バッテリー)を用意しておきましょう。

「子どもが大きなケガをしていても、余震が続き、道路が寸断されている可能性もあり、救急車などがすぐには来られるとは限りません。応急処置など、自分でもできるように事前に準備を。室内で割れたガラスなどを踏んでケガをしては、その後逃げられなくなってしまうので、普段からスリッパを履くようにしておいたほうがよいでしょう」(かもんさん)

周りの様子がわかってきたら、避難するか、留まるかを決めます。

宮城県石巻市のママは避難する時について、こんなアドバイスをくれました。

「赤ちゃんを抱くと、手がふさがり、危険を避けたり、モノを運んだりできなくなるし、体力がなくなれば、手が離れ、赤ちゃんとはぐれる可能性も。その点、抱っこひもは、手で抱くより軽く、両手は自由。ママと赤ちゃんを一体化するから、自分の身と赤ちゃんを一度に守ることが出来ます」(『その時ママがすることは?』より)

かもんさんも、ベビーカーで外出する時でも、常に抱っこひもを持参することをすすめています。

「道路が壊れてがれきだらけになれば、ベビーカーで逃げることは困難です。手で抱くといっても、体力に限界があります。そんな時、両手が空く抱っこひもは防災グッズとなります。お子さんが歩けるようになり、抱っこひもの使用頻度が低くなっても、幼い子どもをお連れのママ・パパはふだんから抱っこひもを携帯しておきたいものですね」(かもんさん)

 

■避難所は「見知らぬ人たちとの共同生活」

見ず知らずの人と狭い空間で暮らす避難所は、小さな子どもや女性にとってはつらいこと
が多いようです。

「災害はどの自治体にとっても突然のこと。多くの人であふれかえる避難所は、不衛生で危険な場所になってしまいがちです。しかも余震も続く中、みんな不安でピリピリしています。そんな不慣れな環境で、赤ちゃんが泣くとママ・パパは肩身が狭くていたたまれないという声は、どこの避難所でも聞きました」と、かもんさんは言います。

熊本県阿蘇郡のママもこんな経験をしているようです。

「避難所は満員で、子連れでいられる場所がなく、外のテントで生活していました。炊き出しや物資が来ても、子連れで何時間も並べないので、もらわず我慢しました」(『その時ママがすることは?』より)

備えがなくてつらい思いをしたと話してくれたのは宮城県石巻市のママです。

「私は何も準備していなかったので、うちの子には食べ物を何もあげられませんでした。避難所の隣のシートで食べ物を食べている子を見て子どもがぐずり、『私が備えていれば…』と申し訳ない気持ちでいっぱいでした」(『その時ママがすることは?』より)

被災地では、避難所に行っても自宅にとどまっても、電気や水道が使えなくなるばかりでなく、物流も滞って食料や水が不足しがちです。大人向けの炊き出しやお弁当が食べられない赤ちゃんのために、離乳食やミルクは十分な量を買い置きしておきましょう。アレルギーなどで特別な食べ物が必要な場合は、特にしっかりと備えを。前編の「いざというときの備えは万全ですか?」(http://baby.mikihouse.co.jp/information/post-9134.html)でも、日常備蓄や災害時の緊急持ち出し品について取り上げてありますので、参考にしてください。

かもんさんは食料以外にも、被災地のトイレ事情についても指摘します。

「おむつがなくて大変だったという話はよく聞くと思いますが、私の印象ではおむつが外れたくらいの子どもたちが一番大変だったように思います。避難所などに設置される仮設トイレは、段差があって手すりがない和式トイレ。子どもはまたぐことも難しかった。暗くて、臭くて、怖いトイレに、たくさんの人たちが並んでいました。子どもたちを不安にさせないためにも、事前に子ども用のミニおまるなどを備えておくと、子どもはもちろん、ママも安心できます」(かもんさん)

 

■プレママは、産院の被災状況の確認を!

まずは、かかりつけの産院が被災していないか、診察が受けられるか、まず確認しておきましょう。もし違う産院を探さなくてはいけないようなら、早産など非常の場合に備えて早めに決めておきましょう。

プレママはいつもと違う環境の中でストレスがたまりがちになります。

「炊き出しやお弁当は、塩分が多く、味も濃い目。野菜が少ないので栄養のバランスが偏りがちです。買い置きの中に、果実のジュースや栄養補助食品も用意しておくとなにかと安心です。また、おなかが大きいプレママは、和式の仮設トイレを使うのがとても大変だったので、簡易トイレの準備をおすすめします」(かもんさん)

何かあった場合、プレママだと対応を変えなくてはいけないこともあるので、避難所に行く際は必ず運営責任者に妊婦であることを告げ、かかりつけの産院なども伝えておくといいでしょう。

 

子どもにも「自分の身は自分で守る」を教えましょう

05

地震や大雨、大雪や嵐などは自然の営みの中の一つ。私たちにとっては災難でも、地球にとってはごく当たり前に起き続けている自然の現象である――かもんさんはそう言います。

「災害の多い国に生まれた子どもたちに、どうやってその危機を乗り越えていくのかを伝
えていくのは、私たちの大人の務め。天災は、『小さな子どもだから』『妊婦だから』といって、避けてくれるわけではありません。むしろ、弱い人ほど大変な思いをすることになるんです。だから早いうちから子どもたちにも自分の身は自分で守ることを教えてあげてほしいです」(かもんさん)

地球の営みや地震をテーマにした小さな子ども向けの絵本も出版されています。かもんさんは「地震をタブーにすることなく、日ごろから地震の絵本を読んだり、家族でよく話し合っておくことが大事。熊本地震の前に、防災ママカフェ®に参加してお話を聞いたり、絵本などで地震の仕組みを知っていた子は、熊本地震の揺れが来た時にも、むやみに怖がることはなかったそうです」と言います。

「防災なんて言うと何だか小難しいですが、本当はシンプルに『ママとして、大切な命を守りたい!ならどうするか?』だけなんですよね。『あの時こうしておけばよかった』なんて後悔は、もう誰にもしてほしくありません。震災の『あの日』ママと子どもたちに何があったのか、どうやって子どもを守ったのか。そして、自分たちが大地震に遭遇する前に、今、ママ・パパとして何ができるのかを知り、行動することで、未来は必ず変えていけると信じています」(かもんさん)

「防災ママカフェ®」は赤ちゃん同伴でも参加できます。ママやパパに知っておいてほしい知恵と備えについて、かもんさんが分かりやすくお話ししています。気になる方はぜひホームページ(http://sspj.jp/project/bousai-mamacafe/)をチェックしてみてくださいね。

 

《参考資料》
「その時ママがすることは 被災地のママの声から学ぶ子どもの命を守る防災」/
スマートサバイバープロジェクト事務局
(1冊200円、5冊より販売しています。http://sspj.jp/brochure-mama/

熊本地震における 緊急地震速報の利活用実態調査 報告書/気象庁
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/eew- hyoka/09/shiryou4_1.pdf

妊娠・出産インフォ トップに戻る