シリーズ「赤ちゃんと眠り」第一部 “眠りのメカニズム”から考えるよく眠る赤ちゃんの育て方

シリーズ「赤ちゃんと眠り」第一部
“眠りのメカニズム”から考える
よく眠る赤ちゃんの育て方

妊娠・出産インフォ

生まれたばかりの赤ちゃんは、ずっと眠っているものだと思っていたけれど、いざ子育てがはじまってみると、寝付きが悪かったり、深夜に夜泣きがひどかったり、とお悩みのママやパパもいらっしゃるのではないでしょうか? 
そこで、今回は赤ちゃんの眠りについて詳しい同志社大学の小西行郎教授にお話を伺い、赤ちゃんの不眠の原因と対処法を伺いました!

dr_konishi

小西先生は、兵庫県立リハビリテーション中央病院子どもの睡眠と発達医療センターで、睡眠障害の子どもたちの治療にもあたっておられます。

すやすやと眠る赤ちゃんは、はじめての育児に戸惑うことばかりの新米ママ・パパに、癒しとひと時の安らぎをもたらしてくれるでしょう。赤ちゃんの生活の大部分を占める「眠り」について学び、わが子の健やかな成長のためにママ・パパが今できることを考えてみませんか。

 

まずは知っておきたい、赤ちゃんの眠りのメカニズムについて

「寝る子は育つ」ということわざがあるように、睡眠は成長をうながし、健康な体と心を育てると言われています。それは、どうしてなのでしょう? 赤ちゃんが眠っている時、体の中では何が起きているのでしょう。

まず小西先生に子どもの睡眠と成長の関係について伺いました。

「子どもに限らず人間はメラトニンという睡眠ホルモンの働きで眠ります。そして眠っている時に成長ホルモンが最も多く分泌されます。ですから、『寝る子は育つ』という言葉の通り、子どもの成長・発達には、睡眠が非常に重要な役割を果たしていると思われます。またメラトニンは記憶力や学習能力、情緒の安定などにも影響すると言われています。たとえば眠っている間に脳がその日の出来事を整理して必要なものだけ記憶に残す、というように。少なくとも大人の脳に関しては、メラトニンはそうした作用をもたらすというのが定説です。そういう意味においては、赤ちゃんの場合でも、眠ることは生命維持や脳の活動にも大いに影響を与えていると考えることができます」(小西先生)

睡眠は赤ちゃんにとってとても大切なこと。生まれたばかりの赤ちゃんが一日に約16時間も眠っているのはそのためなんですね。その一方で、赤ちゃんは一度に長く眠ることができません。お世話をするママ・パパにとっては、睡眠時間がこま切れになりがちで辛い時期ですが、赤ちゃんの眠りのメカニズム上、致し方ないこと(もちろん個人差はあります)。

理由の一つは、生まれたばかりの赤ちゃんは、体が小さく、消化器も未発達なために、2~3時間おきに起きてはおっぱいやミルクを欲しがるため。これはよく聞くお話ですね。実は、その他にもこんな要因があるようです。

「ママのお腹の中にいる赤ちゃんにも、睡眠リズムは形成されつつあります。脳が活動状態にあり眠りが浅いレム睡眠と脳を休めるためのノンレム睡眠のサイクルは、妊娠30週ごろから少しずつ出現し始めます。胎児期はママのリズムの影響を受けているようですが、誕生後、赤ちゃんは自分自身のリズムを作り始めます。そこで、ママのリズムと生まれたばかりの赤ちゃんのリズムにずれが生じてしまうんですよね。生後3カ月頃には、体内でメラトニンの分泌が始まり、だいたい生後8カ月ぐらいになると、お昼寝は必要ですが、大人と同じように夜になると眠って、朝には目が覚めるようになります。」(小西先生)

成長とともに赤ちゃんの一日の睡眠時間は短縮されていきます。ただ、これは夜の睡眠が短くなるのではなくて、昼寝の回数や長さが減ってくることで短くなるだけ。そのため夜はそれなりに成長してからもたっぷり眠ることが大切だと小西先生は言います。

小西先生は他の小児医と連携をとり、2012年から4年間にわたって、全国の保育園で延べ7000人の睡眠調査を実施し、睡眠と発達の関係について分析しました。その結果、夜遅く就寝し、睡眠が不足している子どもは落ち着きがないなど、発達に影響が出てくるケースが見られたそうです。「幼児期は、夜9時に就寝し、朝は7時に起きる規則正しい生活が理想です。1歳前なら、午前も午後も昼寝をするでしょうし、3歳でも1~2時間の昼寝は必要でしょう。でも昼寝は成長ホルモンの分泌ないなど夜の睡眠とは質が違うので、夜の睡眠時間が短かったからと昼寝で補えるものではないのです。やはり基本は夜にしっかりと眠ることなんです」(小西先生)

「赤ちゃんと睡眠」の第二部では、赤ちゃんの睡眠時間についてより詳しく取り上げていきます。また第三部では、赤ちゃんをより良い眠りに導くためにママ・パパができることについても小西先生のご提案を紹介していきますので、参考にしてください。

人間にとって“リズム”は、あらゆる活動の基本となります

1-2

赤ちゃんが泣いた時、寝かしつける時、ママ・パパが赤ちゃんを優しくトントンしてあげると泣き止んだり、寝てくれたりすることがあります。これはトントンという手のリズムと心拍が同期するため。

「コミュニケーションの基本は言葉ですが、体のリズムや行動が同期して通じ合うこともあるんです。そして、体のリズムは生活のリズムにも通じています。ちょっと難しい話になってしまいますが、人間の脳には、夜は寝て朝には起きるなどの生活のリズムを保つための“体内時計”があります。その体内時計のもとになるのは、受精卵が細胞分裂を始めた時点で刻み始めるリズム。細胞のリズムが集まって心臓の鼓動になり、他の臓器もそれぞれのリズムで動き始めて、胎児として成長していくのです。一方、ママの体は、おなかの中の胎児も自分の臓器の一つととらえられるようです。そこで胎児期の赤ちゃんは、ママの生活リズムから大きな影響を受けるわけです。そのため、ママが妊娠中に眠れなくなったりすると、当然リズムの乱れは胎児にも影響することになります」(小西先生)

赤ちゃんの臓器の一つひとつが刻んでいるリズムが重なり合って、赤ちゃんの脳の中に独自の体内時計ができるのは、誕生後のことだと小西先生は言います。そして臓器のリズムから体内時計ができ、それが夜暗くなったら眠り、朝明るくなったら目を覚ますという生活リズムを形成していくのだとか。なんだか、人体の神秘を感じてしまいますね。

そして人間の活動の原点は、睡眠を中心とした生活リズムの中にあると小西先生。

「だから生活リズムが乱れると、睡眠に障害が出て、それは呼吸や心拍など、生命維持に深くかかわる機能の不調につながると考えることができます。特に1~2歳の幼児期にしっかりとした生活のリズムを確立しておくことは、非常に大切な事です」(小西先生)

規則正しい生活リズムを身につけた赤ちゃんは、「よく眠る赤ちゃん」になって、すくすくと成長するのでしょう。そんな赤ちゃんは、ママ・パパの子育てをちょっぴり楽にしてくれそうですね。

続く第二部では、睡眠時間が遅くなりがちな現代の赤ちゃんの生活を取り上げ、現代の子育てに警鐘を鳴らす小西先生がママ・パパに伝えたい子どもの睡眠についての問題を取り上げます。

 

dr

小西先生プロフィール
日本赤ちゃん学会理事長
同志社大学赤ちゃん学研究センター 
センター長/教授
兵庫県立リハビリテーション中央病院・子どもの睡眠と発達医療センター
小児科医(小児神経専門医)

京都大学医学部卒業。同大学附属病院未熟児センター、福井医科大学勤務を経て、1989年に文部省在外研究員としてオランダにて発達行動学を学ぶ。帰国後は、埼玉医科大学小児科の教授を務めた後、2001年に東京女子医科大学に乳児行動発達学講座を開設し、教授となる。また、同年に赤ちゃんをまるごと考える“日本赤ちゃん学会”を設立。
2008年、同志社大学大学院心理学科の教授、同大学赤ちゃん学研究センター長に就任。
2013年、兵庫県立リハビリテーション中央病院・子どもの睡眠と発達医療センター長に就任(2013年4月~2017年3月)。

主な著書は、『赤ちゃんと脳科学』(集英社新書)、『早期教育と脳』(光文社新書)、『もっと知りたい、おなかの赤ちゃんのこと』(赤ちゃんとママ社)、『赤ちゃんのからだBOOK』(海竜社)、『赤ちゃんのしぐさで気持ちがわかる本』(PHP研究所)、『0歳の赤ちゃんの気持ちがわかる本』(講談社)など

books

妊娠・出産インフォ トップに戻る