シリーズ「赤ちゃんと眠り」第二部寝ない赤ちゃん 原因は“リズム”の乱れ?ほどよい日光浴も睡眠を助けます

シリーズ「赤ちゃんと眠り」第二部
寝ない赤ちゃん 原因は“リズム”の乱れ?
ほどよい日光浴も睡眠を助けます

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前回記事に引き続き、今回は赤ちゃんの生活リズムが乱れる原因とそれがどんなトラブルにつながっていくのかについて、同志社大学赤ちゃん学研究センター長の小西行郎教授にお聞きしたいと思います。ママとパパにとっては、ちょっぴり身につまされる話題が出てくるかも知れません。でも理由を知れば、解決できる悩みもあるものですよ。

 

大人の生活が赤ちゃんの生活リズムを乱す!??

最近、問題となりつつある赤ちゃんの不眠。小西先生のところにも治療の相談にくる親御さんが後を絶たないと言います。小西先生はこんな現実を教えてくれました。

「平成12年に行われた調査では、保育園に通っている1~2歳の子どもの50%以上が、夜10時以降に寝ているということが明らかになっています。医学的に見れば、本来8時に就寝するべき年齢にも関わらずです。これはね、現代の社会問題なんです。たとえば保育園から帰るのが夜7時という生活が当たり前の家庭も少なくない。そうなったら、子どもたちの就寝時間が遅くなるのは当然です。7時に帰って、ご飯を食べさせてお風呂に入れると、どうしたって寝かせるのは10時。それが今の世の中だから仕方がないとママもパパも保育園の先生たちでさえ、あきらめているんですよね」(小西先生)

小西先生の言葉を裏付けているのが、日本小児保健科学会の調査。それによると、実は4~5歳の子どもより、1~2歳の子どもの方が、就寝時間が遅いという事実が明らかにになっているとのことです。
「4~5歳の子どもは、親を待たずに眠くなったら自分でさっさと寝るぐらいには自立しています。ところが1~2歳だと、寝かせてくれる親の生活時間に合わせる形となるため、必然的に寝る時間が遅くなるのでしょう」(小西先生)

もっとも、「保育園で長く昼寝するので、夜なかなか寝付かなくて困っている」というママ・パパもいらっしゃるでしょう。ただ、先生によると、夜になって眠たくなるのはメラトニン(睡眠ホルモン)が分泌されることが主な要因なので、必ずしも昼寝が長かったから夜寝つけないという事ではないとのこと。

「1~6歳の幼児期には、午後6時には遅くとも晩御飯をすませて、それからお風呂に入るのが理想です。お風呂で上昇した体温が2時間ぐらいかけてゆっくり下がっていく時に、メラトニンが分泌されて眠たくなります。そうするとだいたい8時半か、9時までには眠れます。これでも遅いくらいですが、10時や11時となると、言うまでもありません。メラトニンや成長ホルモンの分泌にも影響が出て、子どもたちの心身の健全な成長に悪い影響を与える可能性だってあると思います」(小西先生)

小西先生は怒りを抑えるように、つとめて穏やかにそう警鐘を鳴らします。ただ、現代社会で、特に外で仕事をしながら子育てをするママやパパにとっては、先生が言う「理想の生活リズム」を手に入れることは至難の業。

「今でも精一杯なのに、どうしたらいいの?」と思われるママ・パパもいることでしょう。

それでも、子どもを9時には寝かせることを大前提に生活のリズムを改善するしか方法はありませんと小西先生。具体的には夕食とお風呂を先にすませて家事を後回しにするとか、早起きして家事をすませ、朝のうちに夕飯の準備もしておくなど、時間をやりくりするしかありません。しかし、ママもパパも外で働いているご家庭はどうでしょうか。そもそも毎日5時すぎに保育園に迎えに行くこと自体、すでに無理という方も少なくないでしょう。

「そこなんです! 先程、私が『これは社会問題です』と指摘したのはそういうこと。パパ、ママの個人の頑張りや努力ではどうしようもないんです。ママ、パパの働き方が今のままなら、犠牲になるのは小さな子どもなのです。社会のせいで、子どもの睡眠時間が削られているのです。これを親御さんだけの責任に押し付けてはいけません。日本は社会全体で子どもたちの生活リズムを守り、健全な成長を支える育て方、働き方の改革に取り組まなければならない段階に来ていると、私は本気で考えています」(小西先生)

なお文部科学省でも、最近の子どもたちの生活習慣の乱れは社会全体の問題として、平成18年に「早寝早起き朝ごはん」国民運動を立ち上げ、子どもの生活改善策の推進、さらには社会全体の意識を変えるべく啓蒙活動を行っています。しかし、小西先生は「こうした運動があっても、状況は悪化しています。ということは、もっと抜本的な改革が必要でしょう」と指摘します。

 

UVカットを意識しすぎて、日光浴が足りていないケースも

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子どもたちの睡眠をおびやかす原因について、小西先生がとりわけ「問題の根が深い」というのは、昨今のUVカットの常識化。女性や子どもが日光にあたる時間が極端に少なくなっていることが、子どもの睡眠に悪影響を及ぼしているというのです。

「紫外線は有害だから日に当たってはいけないという話がいつの間にか世間の常識になってしまい、世の中にはUVカットの商品が溢れ、“美白”が若い女性たちの合言葉のようになっています。ベビー用品も例外ではありません。ただこの美白ブームは、日光に当たることによって得られる大きなメリットを放棄することにもなった。ずばり、過剰なUVカット傾向で、多くの女性や子どもの体内のビタミンD量が極端に少なくなっているのです。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、丈夫な骨を作るために必要なものとされてきましたが、実は睡眠や免疫力など体の他の機能にも大きく関わっていることが最近の研究(※1)で明らかになってきています」(小西先生)

日光に当たらないママの母乳は、ビタミンDがあまり含まれないそう。そんな母乳で育ち、十分な日光浴もさせてもらえない赤ちゃんは、ビタミンD不足となり、それが睡眠に悪影響を及ぼしていると小西先生は指摘します。

「一番注意が必要なのは母子ともどもUVカットを徹底して、さらに母乳だけに頼っているママの子ども。こういう子はビタミンDが欠乏しがちです。ちなみに、日照時間の少ないヨーロッパでは、母乳育児にはサプリを処方するなど、ビタミンD不足にならないような対策が取られています」(小西先生)

2008年の京都大学の調査でも、ビタミンDが不足することで起こる新生児の「くる病」(※2)が増加していることが報告されています。他にもビタミンD不足が引き起こす発達障害に自閉症があるとも言われているとか。

「ここ20年で、日本では自閉症の子どもが急増しています。自閉症の原因の多くは環境がもたらすものと考えられていますが、ビタミンDには環境によるストレスから脳を守る働きもあることが解明され、自閉症の原因の一つがビタミンDの不足ではないかと言われるようにもなっています。睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をうながすためにも昼間に日光を浴びることが不可欠なことを考えると、UVカットがもたらす損害についても、もう少し科学的な議論が進むべきだと思っています。もちろん、だからといって日に焼けるほど日光浴をしなくてはいけないというわけではありません。春から夏には毎日30分、冬なら1時間ぐらい手足を日光に当てるだけで体に必要なビタミンDやメラトニンを生成できます(※3)ので」(小西先生)

大人だって、太陽の光をいっぱい浴びた日の夜はぐっすり眠れるものです。赤ちゃんの眠りが浅かったり、なかなか寝つかないなどの悩みがあるなら、日光浴をさせてあげたらどうでしょう。

さて「赤ちゃんと眠り」シリーズの第三弾では、小西先生が薦める「よく眠る赤ちゃん」の育て方について、まとめていきます。

 

〈参考文献〉
※1米国国立医学図書館2017「睡眠障害とビタミンDの関係」 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28475473
※2日本小児内分泌学会ガイドライン「ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き
http://jspe.umin.jp/medical/gui.html
※3、※4国立環境研究所「ビタミンD生成に要する日照時間の推定」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html

 

dr

小西先生プロフィール
日本赤ちゃん学会理事長
同志社大学赤ちゃん学研究センター 
センター長/教授
兵庫県立リハビリテーション中央病院・子どもの睡眠と発達医療センター
小児科医(小児神経専門医)

京都大学医学部卒業。同大学附属病院未熟児センター、福井医科大学勤務を経て、1989年に文部省在外研究員としてオランダにて発達行動学を学ぶ。帰国後は、埼玉医科大学小児科の教授を務めた後、2001年に東京女子医科大学に乳児行動発達学講座を開設し、教授となる。また、同年に赤ちゃんをまるごと考える“日本赤ちゃん学会”を設立。
2008年、同志社大学大学院心理学科の教授、同大学赤ちゃん学研究センター長に就任。
2013年、兵庫県立リハビリテーション中央病院・子どもの睡眠と発達医療センター長に就任(2013年4月~2017年3月)。

主な著書は、『赤ちゃんと脳科学』(集英社新書)、『早期教育と脳』(光文社新書)、『もっと知りたい、おなかの赤ちゃんのこと』(赤ちゃんとママ社)、『赤ちゃんのからだBOOK』(海竜社)、『赤ちゃんのしぐさで気持ちがわかる本』(PHP研究所)、『0歳の赤ちゃんの気持ちがわかる本』(講談社)など

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