スマホを使う前に…
「子どもの発達に何がいちばんいいのか」に立ち返って

2015.10.02

ミキハウス編集部

2歳までスマホの利用はやめましょう そして親子での触れ合いを

アンケートの中でスマホを使わせるのは、「外出先で子どもの機嫌が悪く、静かにさせたいとき」が1位でしたね。これは“電子ベビーシッター”と呼ばれています。出かけたときだけでなく、食事のしたくなどの家事の最中にというときも含まれます。スマホを子守り代わりにする使い方です。

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僕は、子育ての中でスマホを使うことを全否定するつもりはありません。お父さんは仕事から帰ってくるのが遅い、おじいちゃんおばあちゃんも近くにいないし、助けてくれる人がいないような場合もあるでしょう。お母さんが電子ベビーシッターに頼る状況は理解してあげる必要があります。ただ、いつもスマホに子守りをさせることはけっしてよくないです。アプリで、いないいないばあを見せるより、お母さんがやってあげたほうが楽しいですから。「子どもの心身の発達にとって、何がいいのか」ということを考えることが大切だと思います。

最近のお母さんは子どもとの遊び方を知らなかったりします。手遊びの「1本橋こちょこちょ」を知らないお母さんもいるんです。実際の子育て文化を引き継いでいないから、日中どんなふうに遊んでいいかわからない。だから、こちょこちょをするとか、公園に行って葉っぱを踏んだり拾ったりして遊ぶんですよとお母さんに教えたりすることが必要です。そうすると、電子メディアに頼らずにすむんです。

これは、社会や僕たちにも責任がありますよね。お母さんを責めるだけではだめだと思います。

あとは、早期教育の一環として、知育アプリやその他の電子メディアを使うということですね。子どもが生まれた途端、「今、あなたのお子さんの能力を伸ばさないでどうしますか?」と家庭に上手に商業主義が入ってきますよね。自分の子どもに賢く育ってほしいと思わない親はいないですから、子どものためになるならと始めてしまうのも無理はないことでしょう。

ただ、電子メディアが早期教育に役に立つかどうかはまったく証明されていません。アプリでも、何か問題が与えられてそれが達成できると、「よくできました」とはいうけれど、お母さんに「よくできたね!」といわれたほうが絶対いいんですよ。双方向性のある関わり合いを大切にしてほしいですね。

1999年にアメリカ小児科学会が「2歳以下の子どもにはテレビを見せないようにしましょう」と提言を出しました。これをNPO「子どもとメディア」、日本小児科医会でも採用しています。当時、対象はテレビでしたが、今はスマホという便利なツールまででてきてしまって、一気に広まっている状況です。スマホはコンセントもいらないし、外出先でも使えるので、スマホは遠ざけるのが難しい。

またこれは、お母さんに限ったことではありませんが、スマホに依存している人は多いですよね。「本当に今、それをやらなくちゃいけないの?」という場面でもスマホをいじってしまう。スマホに使っている時間を考えることは、子どもの問題じゃなくて、僕ら大人の問題です。

メディアリテラシーという言葉も一般的になっていますが、「使い方を学び、注意して使いましょう」という、使うことを前提とした考えが乳幼児期の小さい子にまで適用されることに、大きな疑問を感じます。それよりも、五感を通して、ともにかかわりあって、昔ながらの子育てをしましょう。“子どもの心身の発達に何がいいのか”ということを基本に考えれば、安易に子育てにスマホを使うという状況が健全でないことはわかると思います。

【プロフィール】

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佐藤和夫(さとう・かずお)
九州医療センター 小児科医長。約30年小児科医として活躍中。NPO法人「子どもとメディア」代表理事、「日本小児科医会」子どもとメディア委員会委員も務める。

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