寒さが本格化!だから知っておきたい「妊婦が冬に気をつけるべきこと」

寒さが本格化!だから知っておきたい
「妊婦が冬に気をつけるべきこと」

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誰もが体調を崩しやすく、冷えや乾燥も気になる冬。お腹に赤ちゃんのいる妊婦さんはどのようなことに気をつけて、毎日を過ごせばいいのでしょうか。専門家にお話を聞いてみました。

 

産婦人科の権威、栄養学のプロが真っ先にあげたのは「感染症」対策

それではまず、冬の妊婦さんがいちばん気をつけたいことについて、産婦人科医で慶應義塾大学名誉教授の吉村泰典先生にお話をうかがいました。

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「やはり冬はインフルエンザ対策です。妊婦さんには必ず、抗インフルエンザワクチンを接種してもらいたいです。ワクチンと聞くと、怖いと感じる妊婦さんも多いでしょうが、不活化ワクチンである抗インフルエンザワクチンは打っても大丈夫。子ども、高齢者、妊婦さんはインフルエンザにかかると重症化してしまう“三大弱者”ですから、早めに接種することが望ましい。できれば例年流行が始まるちょっと前に打つのがいいですね」(吉村先生)

ワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。生ワクチンは生きた細菌やウィルスを繰り返し培養して、病原性が弱くなったものから選んで作ったもので、不活化ワクチンは、細菌やウィルスをホルマリン処理するなどして毒性を弱めたもの。妊娠中に生ワクチンを打つことはできませんが、不活化ワクチンなら大丈夫。“有益性投与”と言って、ワクチンを打つことで高い効果が得られるときは、投与すべきという考え方が医学の世界では一般的なのだそうです。

今年は例年より早い時期からインフルエンザの流行が始まりました。こんなとき、予防接種をまだ打っておらず、万が一インフルエンザにかかってしまったらどうすればいいのでしょうか?

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「その場合はタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を処方してもらってください。妊婦さんがこれらの薬をのんでも問題ありません。また、家族がインフルエンザにかかった、インフルエンザの人と接触してしまったなどという場合にも、予防的処置として抗インフルエンザ薬をのむことを推奨しています」(吉村先生)

なるほど、インフルエンザはお薬で対処することができるのですね。ちなみに風邪などインフルエンザ以外の症状があらわれたとき、妊婦さんはどうすればいいのでしょうか。

「基本的に妊娠中は、お薬はのまないほうがいいと言われていますが、咳止め、鼻水止め、抗生剤などいわゆる風邪薬は、基本的にはのんでもかまわないものです。ただ、中枢神経系のてんかんの薬や抗うつ剤などは、胎児へ影響を与えることが非常に大きいので注意が必要です」(吉村先生)

吉村先生は、妊婦さんが薬をのむときは、産婦人科医のところへ薬を持っていき、ひとつひとつ確認してもらうのが望ましいと言います。また、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」に相談するのもいいとのこと。

【参考】
妊娠と薬情報センター:授乳とお薬について
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/index.html

 

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予防医療コンサルタントで、今年9月に第一子の女の子を出産した細川モモさんは、ご自身が冬に妊娠初期を過ごした経験を振り返り、「私がいちばん気をつけていたのも、感染症にかからないことでした」と話してくれました。とにかく風邪などの病気にかからないように細心の注意を払い、食事でケアをしていたそうです。

「たとえば鍋料理なら、薬味でニンニクやしょうがをとるようにしたり、炒め物などにもニンニクを入れたりして、免疫系の強化を心がけていました」(細川さん)

感染症の予防効果があるといわれている栄養素「ビタミンD」。骨を強くするためにもしっかりとりたい栄養素ですが、「ビタミンDはインフルエンザを発症リスクを50%も低減するとして、世界的に注目を集めているビタミンです」と解説。その栄養素を体に取りこむ方法は、「含まれる食品が限られるので、それらをしっかり食べることと、食事に加えてとくに冬は意識的に日光を浴びるようにすることが大切です。ビタミンDは日光を浴びることで活性化させる必要があるビタミンなのです」と細川さん。

ビタミンDが体内で作られるために必要な日光量は場所や季節で変わりますが、国内で行われた研究によると、真冬なら沖縄県で17分、茨城県で22分、北海道なら76分ほど。夏はその半分〜1/3でいいそうです(※1)

「寒さをしのぐために、マフラーをぐるぐる巻きにしたり、帽子をかぶったりしていると、せっかく外出しても日光を直接肌に浴びなければ、ビタミンDは体内で生成されないので、病気のリスクが上がってしまいます。また日光浴は授乳で低下してしまう骨密度の回復を助けますし、生まれてくる赤ちゃんの骨も強くなるので、一石三鳥くらいの効果があると思います」

真冬であっても女性ならUVケアを欠かさないという人も多いと思いますが、「ビタミンDのことを考えると紫外線を完全カットするという考え方は危ない」とも。顔のシミやそばかすが気になるようなら、顔だけUVケアをして、手など皮膚のどこかを露出させて、30分程度、天気のいい日に散歩などをしてみてください。

また、ビタミンDを食事からとるには、魚、卵、きのこなどをこまめに食べることが大切だといいます。

「ビタミンDの血中濃度がより高まるのは魚なので、DHAを摂るという意味でも魚を食べたほうがいいです。鮭やたらなどスーパーで売っているものでかまいません。海鮮鍋なら冬の献立に向いていますね」(細川さん)

 

妊婦の冷えによいことなし! 冷え対策はマスト

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寒さの厳しい冬。妊婦でなくても、冷えに悩む女性は多いでしょう。もちろん妊婦さんにとって冷えは大敵。吉村先生はこういいます。

「そもそも女性は皮下脂肪が多く、脂肪は熱を通しにくいものなのでいったん冷えると温まりにくい性質をもっています。さらに、筋肉が血流をつくって熱量をつくるのですが、そもそも男性と比べて女性は筋肉が少ないですよね。だから女性は冷え性になりやすい。妊婦さんの場合、運動量が減り、筋肉量も減るため、この傾向が顕著になることもあります。そうやって冷えると血管が収縮します。すると血流が悪くなって、子宮に行く血流量も減るわけです。これは赤ちゃんのところへ行く血流量も減るということですから、あまりいいことではありませんね」(吉村先生)

冷えが原因で起こりうることには、どのような症状があるのでしょうか?

「妊娠初期においては、つわりを悪化させたり、中期であれば、お腹の張りを誘因したりということもあります。腰痛がひどくなることもあるでしょうね。妊娠中は便秘しやすいものですが、相対的な水分摂取の低下のほかに冷えが原因の場合もあります。腸のぜん動運動が悪くなるというのは、血流量が減っているからという要因もありますから」(吉村先生)

吉村先生は、「冷えは“体を温めなさい”というシグナル」といいます。冷えを感じたら、温めて危険を予防しましょう。

なお具体的な対策としては、

「靴下やレッグウォーマーで足元を温めたり、外出の時には手袋をしたり、末梢を温めることが大事。また、腹巻も躯幹(くかん=頭と手足を除いた胴体部分)を温めることになるから、とてもいいですね。日中は寒いからといって家に閉じこもっているのではなく、妊娠中期以降なら軽い運動をしたり、ウォーキングをしたりすることもいい。夜はお風呂で38度、せいぜい39度くらいのお湯にゆっくり浸かるのも冷え対策になりますね。バランスのとれた食事や規則正しい生活も大切です」(吉村先生)

とのこと。やはり妊婦さんにとって冬の冷え対策は必須なのですね。

細川さんが主宰する「まるのうち保健室」は20代〜30代の働く女性の健康支援を目的とした大人の保健室。こちらでもやはり冷え性の相談は多いといいます。細川さんは冷え性で悩む女性にはこのようなアドバイスを送っているとか。

「冷え性の方は使い捨てカイロやしょうがドリンクなど、外部から熱を取りこもうとしがち。その前になぜ冷えてしまうのかメカニズムをちゃんと考えたほうがいいですね。熱は外から与えるものではなくて、体から生み出すもの。だから熱を生む出す体になることが大事です。その原理は筋肉が“着火”して、体脂肪が保温するというものですから、やっぱり筋肉と体脂肪が少ない人、BMIが低い人は、冷えの傾向が強い。やせすぎの体型が影響するのです」(細川さん)

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冷えにくい体づくりが大切だという細川さん。また、基本的なこととして毎朝しっかり朝食を取ることが大事だとも。

「朝食欠食は低体温の原因になりやすいんです。また、私たちの調査では、冷え性に悩んでいる人が足りなかった栄養素は、タンパク質、鉄、ビタミンB1、B2で、血液に関係している栄養素と食事をエネルギーに変える栄養素が足りていませんでした。冷え性の背景には貧血がある。冷え対策のために貧血改善をすべきです」(細川さん)

貧血症状をなくすために体に取り入れたい食材は、赤身の牛肉、豚肉、赤身の魚、貝類、卵といったタンパク質。妊娠初期で毎食「片手ひと盛り」の量が目安。+α血流改善効果のあるビタミンEを含むナッツやごまなどもおすすめ。中期、後期にはさらにプラスしましょう、とのことです。

さらに、分娩時には正常な出産でも多くの血液が失われます。そのためにも、妊婦さんのときに貧血を改善しておくことは大事だと細川さんはいいます。

続けて、「冬の妊婦さんに限ったことではありませんが」と前置きしたうえで、「出産後、貧血だとそれでなくても体力を消耗しているので相当つらいと思います。疲れやすいとメンタルも安定せずに、場合によっては産後うつになる人もいます。産後のいろいろなトラブル対策にもつながるので、冷えの原因を考え、食生活を見直すことが大切です」とアドバイスしてくれました。

 

冬は「温度差」がもたらす血圧上昇にも注意

寒いという冬の特徴は屋内や屋外での「温度差」という問題も招きます。「冷えきったお風呂場やトイレなどではとくに注意が必要。お風呂はぬるめのお湯に長く入り、体を温めることが大切です」と吉村先生は言います。

「暖かいところにいるときは、末梢血管は開いているのですが、それが急に寒いところに行くと、熱量を放出させないために血管がギュッと収縮する。そして、血圧の上昇が起こる。妊婦さんは血流量が普段より多くなっていて、心臓が拍動しやすい状況になっていますから血圧が上昇しやすい。また妊娠中はストレス状態にあると言えますから、そもそも血圧が高くなりやすい。そのうえで、体が温度変化にさらされるので、血圧が急激に上昇することがあり、動悸や息切れ、めまいなどの症状が現れる可能性があります」(吉村先生)

血圧上昇後のめまいで転倒することも考えられます。くれぐれも事故のないよう、室内でも気をつけたいものです。

 

乾燥対策には保湿と糖質過多にならない食事

空気の乾燥も気になる季節ですが、妊娠中ならではの肌のトラブルはあるのでしょうか? まずは、吉村先生にお聞きしましょう。

「妊娠中の皮膚は乾燥に弱くて、乾燥しやすくなっていて、かゆみを増すんですね。だから、基本は保湿。また室内の加湿も大事です。これは妊娠中でなくても大切な対策ですね。もう一つの特徴は、妊婦さんはシミが出やすいということ。これは黄体ホルモンやエストロゲンなどのホルモンが大量に出ていることに原因があります。これらのホルモンが、メラサイトという色素の細胞を刺激するからなのです。だから、冬でも妊婦さんはある程度のUVケアが必要ですね」

ホルモンの変化による肌内部の変化には注意が必要です。さきほど、適度な日光浴は必要といいましたが、シミを出したくない顔部分などはしっかりUVケアしたほうがよさそうです。何事も適度に、が基本だということは変わらないですね。

食生活の側面から考えられる、肌の乾燥対策はあるのでしょうか? 細川さんが答えてくれました。

「肌の水分が蒸発する理由としては、血糖値との関係が考えられます。血糖値が上昇する糖尿病患者の初期症状は水分障害。喉が異常に渇く、口の中がねばねばする、汗を異常にかくなど、血糖値と水分には相関関係があります。また、健康な男女でも、血糖値が上がると肌の水分が失われていくという研究結果が報告されています」(細川さん)

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そのため、肌がカサカサしているなと思ったら、血糖値の上がりすぎる食生活をしていないかを見直すべきだといいます。

「冬で食べやすいからと、うどんばかり食べていないか、お菓子ばかり食べていないかを考えてみましょう。年末年始はイベントが多いですから、ケーキなどの糖質の多いものを食べる機会も増えます。また、お正月は白米もちのとりすぎにも注意したいですね」(細川さん)

細川さんたちの調査結果では、肌トラブルに悩んでいた人に足りなかった食材も明らかになっています。それは、海藻と(上質な)油。

「肌の80%はセラミドで守られていて、セラミドの原材料は必須脂肪酸。これは、体内でつくりだせない油なので『よい油』をしっかりとるということは、肌を潤わせるには大切なこと。ちなみに『よい油』がとれる食品は魚とナッツです。またファイトケミカルという活性酸素を抑制する働きの物質が含まれる緑黄色野菜と果物も積極的に摂取してください」(細川さん)

冬の妊婦さんの中にも、買い物に出かけることや食事を作ることが面倒になり、食生活がおろそかになっている人もいるかもしれません。乾燥対策をする意味でも、食生活の見直しは必要なのですね。

 

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いかがでしたか。こうやって見てみると、冬の妊婦さんが気をつけたいことはさまざま。無理をせず、できることから始めて、寒い冬を乗り切り、かわいい赤ちゃんと出会う日まで準備をしていってくださいね。

※1
出典:Miyauchi, M., C. Hirai, and H. Nakajima, The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan, Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 59, 257-263, 2013.

 

【プロフィール】
吉村泰典(よしむら・やすのり)
1949年生まれ。産婦人科医、慶應義塾大学医学部教授。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。第2次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。

細川モモ(ほそかわ・もも)
予防医療コンサルタント。社団法人Luvtelli (ラブテリ)東京&NewYork代表理事。2009年の春にPublic Healthを活動目的とする「Luvtelli Tokyo&NewYork」を発足、女性と次世代の健康に関する数多くの活動・研究を展開する。14年に三菱地所株式会社 とともに働く女性の健康支援を目的とした「まるのうち保健室」をオープンし、日本初の働く女性の健康課題を明らかにした「働き女子1,000名白書」を発表するなど多方面で活躍中。

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