――最近、日本では法改正があって「パパ・ママ育休プラス」という制度ができました。それまでは原則「連続して」取得しなければならなかった育休が、パパが生後8週間以内に取得する場合には、再度、育休を取ることができるようになりました。取得率はまだ低いですが、今後は出産直後から夫も子育てに参加できるようになるなど、改善されている部分も確かにあります。ちなみに、皆さんの国において育休をはじめとして、子育て支援の状況はいかがですか?
ウルリカさん:スウェーデンでは共働きは当たり前。ですから、育児休暇は男性・女性問わず最低2か月、男女合わせて最大480日間まで取得できます。しかも、これは連続して取らなくてよくて、子どもが8歳までなら分割して取ることができます。その間、給料の8割は給付金として支給されます。この制度を総じて「両親保険」と言います。男性政治家も両親保険を利用しますし、育休を取らない男性がいると聞くと「えっ?」となるぐらい。喫茶店で、育休中のパパ同士がベビーカーを連れてお茶をする風景も珍しくありません。そこは日本と大きく違いますね。
ジェシカさん:ニュージーランドはスウェーデンと似ていますが、両親保険ほど制度は充実していません。子どもが0歳から6歳までは、保育園が週20時間まで無料などの支援はあります。年収や子どもの数によって一人に対し20時間が20〜50時間の間に変わります。
エレナさん:ロシアでは、ママは前半と後半に分けて、全体で3年の育休をとることができますが、多くの場合まず前半の1年半だけを取得する人が多いです。その間は、給料の40~50%が支給されます。また、2人目を産んだママには約100万円(インフレ率により毎年変動)ほどが支給されます。ただ、使い道はマンションや家の購入、子どもの学費などに限定されます。
蘭華さん:中国では、大きな企業であれば3か月くらいの育休取得を許され、その間に給料の6割が支給されることもあります。しかし、中国の全体的な傾向としては、経済的な側面や雇い主からの要請で、出産後はママもパパもすぐに仕事をしなくちゃいけないというムードが強い。それは、先ほどもお話したように、おじいちゃんやおばあちゃんなど家族の支えがあって成り立っている部分も大きいのですが。
――日本の「パパ・ママ育休プラス」では、ママとパパが両方との育休を取得した場合には、父母1人あたりが取得できる休業期間の上限は1年間だったのに加えて、最高1年2か月まで育休を取得できるようになりました。給付金については、休業を開始してから180日目までは給料の67%。181日から1歳までは給料の50%。スウェーデンの子育て支援はやはり手厚いですね。
(part 3に続く)
——————————–
グローバルスタンダードでは、子どもが産まれたら、男性も育休を取得するのが当たり前。「旦那さんが休んでくれるから、里帰りして出産する必要なんてない」というのは納得ですね。
最後のpart3では、「子どもに対するしつけ」について話を聞きます。
【座談会メンバー】
Jess Tajima(ジェシカ・タジマ)さん/35歳、ニュージーランド出身。日本に来て11年。インターナショナルプリスクールで3歳のクラスを担当するほか、芸能活動も。日本人の夫と、6歳の長女、3歳の長男、5か月の次女の5人家族。
柚井ウルリカ(ゆい・うるりか)さん/46歳、スウェーデン出身。日本に来て25年。空手師範の日本人の夫とともに道場を運営するほか、翻訳者・ビジネスコーディネーターとして、日本と母国をつなぐ仕事にも積極的に取り組む。16歳、13歳、6歳の3人の娘の母。
Elena Kazama(エレナ・カザマ)さん/33歳、ロシア出身。日本に来て10年。主婦業のかたわら、モデル活動も行う。日本人の夫と、6歳と4歳の娘2人の4人家族。
坂口蘭華(さかぐち・らんか)さん/42歳、中国出身。日本に来て10年。専業主婦。日本人の夫と、18歳の長女と9歳の次女の4人家族。今回は、長女の玲華(れいか)さんも座談会に飛び入り参加。子どもの立場から、中国と日本の教育環境の違いについてコメント。