しかし、全体のおよそ15%のカップルが不妊症に悩み、そのうち、約半分が男性側の問題だと言われている今、辻村先生は「子どもが欲しいと思うカップルは男性側も自分の精子がどういう状態にあるのか知っておくのが望ましい」と指摘します。
「以前は“不妊症の原因は女性にある”という考えが強くありました。しかし、WHO(世界保健機関)によると、不妊症の原因の約半分に男性が関与していることがわかっています。このことから、男性の10~20人に1人に不妊症の原因があると考えられています」
現代は結婚のタイミングが遅く、女性の妊娠・出産年齢が高齢化していることを、男性も女性もきちんと頭の中に入れておかなくてはなりません。政府の女性への不妊補助は42歳までという事実や、35歳を過ぎると女性の妊娠確率は極端に下がるという統計からもわかるとおり、子どもが欲しい場合はなるべく早く的確な妊活を行う必要があるからです。
男性と違い女性は、妊娠・出産に年齢が大きく影響するので、ただ自然妊娠を待っているうちにタイムアウトになってしまうケースも少なくありません。また、いくら妊娠を試みても、男性側の精子に問題があるとしたら、それは時間の無駄になってしまいます。しかし、医師の立場から見れば、男性の精子の状態を把握していれば、そのカップルに応じた的確なアドバイスが可能です。
「精子の数が少ないとわかれば、女性の方がある程度の年齢である場合、子どもを望むなら体外授精を勧めます」と辻村先生。
「極端な話、理論上、精子はたった一つでもあれば妊娠できます。自然妊娠は難しいけれど、体外受精などの生殖技術を用いればという前提ですが。今、27人に一人が体外授精で生まれてきた子どもだといわれる日本では、体外授精はもはや特別なことではありません。子どもを持つことを目的とするのであれば、女性だけでなく、男性もまた自分の生殖能力を正しく把握し、必要に応じて生殖技術を用いることが妊娠のための一番確実な方法です。そして、それは早ければ早いほどいい」
日本人男性の“10~20人に1人”が精子に問題を抱え、“100人に1人”が無精子症だと言われる今、男性の生殖能力について正しく理解することが、子どもを望むカップルにとってどれだけ重要なファクターとなるかがわかります。