新しい命が誕生するまでの道のりは、不思議なことばかり。特にはじめて出産をされる方にとっては、どのようにお産がすすんでいくのか、何が起きるのか、わからないことや不安なことが多いことでしょう。
そこで今回は、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典先生に、分娩までに経験するであろう3つのことをお聞きしました。前編は、おしるしと破水についてお話いただきます。
「おしるし」を経験するのは7~8割
まず、「おしるし」から説明しましょう。簡単に言うと、血の混じった粘液性のおりもののこと。人によって、出血と感じたり、ドロッとしたものの中に血が混じっていると感じたり、感じ方はさまざまです。
これがなぜ出てくるかというと、赤ちゃんの頭が下がってきたときに、子宮の収縮が起こるから。そして、赤ちゃんを包んでいた卵膜とのずれができて、卵膜がはがれる。このときに出血し、産前で増えている粘液と一緒に出てくるのです。
でも、これはお産の絶対的な兆候ではありません。7~8割の方はおしるしを経験しますが、なくても問題ないのです。
おしるしだと思っていたものが、そうでなかった場合のほうが問題です。前置胎盤や常位胎盤早期剥離といった妊娠合併症で起こる出血と区別しましょう。判断の目安は、「出血が多いか」「強い痛みを伴うか」。おしるしの場合は、出血もそれほど多くなく、痛みもなく出てきます。

はじめてのお産だと、おしるしがあるとあわててしまう人もいるかもしれません。けれど、すぐに分娩ということにはなりません。不安な場合は病院に連絡するのがよいでしょう。