大正時代から習慣化されたという「暑中見舞い」。梅雨明けの7月初旬から8月7日頃の立秋までの時期にやりとりするものですが、1月から7月くらいまでに生まれた赤ちゃんがいるママ、パパなら出産報告と暑中見舞いを兼ねるのもおすすめです。
そこで、赤ちゃんの写真を使った、かわいくてすてきな暑中見舞いはがきの作り方&コツをご紹介します。「プロに聞いた“思い出いっぱい”の撮影術」にも登場いただいた、3児のママで写真家の繁延あづささんに、写真の選び方からはがきにこめる思い、メッセージの入れ方など教えてもらいました。
受け取った人も楽しい「家族の雰囲気が伝わる」写真を使おう!
赤ちゃんが無事に生まれたということだけでなく、はがき全体から「赤ちゃんが生まれて、今我が家はこんな感じになっています」という報告ができるといいですね。
単にお子さんの顔がかわいく写っているだけでなく、「ママ(パパ)になったんだなあ」「子育てがんばっているんだな」「お子さん大事にされているんだな」など、今の家庭の様子や、家族になったという送り手の変化が伝わる写真のほうがよいでしょう。家族の雰囲気が伝われば、受け取った方にもより楽しんでもらえると思います。
私がおすすめしたいのは、パパ、ママの手でしか撮れない、生活の中のワンシーンを切り取ったもの。
たとえば、
- ・タイマーを使って、家族みんなで撮った写真
- ・赤ちゃんしか写っていなくても、親の目線が感じられるような写真
- ・赤ちゃんと撮った初夏の思い出の写真
タイマーを使えば、赤ちゃんが加わった新しい家族の写真が撮れます。
家の中であれば気楽に撮れますし、はがき用にあらためて撮るのも簡単でしょう。
文字を入れる位置を考え、三脚を使うなどして、自分たちの位置とカメラの画角をある程度決めて撮ることも可能です。
いすに座って、パパかママが赤ちゃんを抱っこして撮れば、“家族の肖像”っぽくなりますし、広めの画角でタイマーセットし、自由な雰囲気で撮れば、ドキュメンタリー風になります。
親が納得のいくまで撮影しようと時間をかけてしまい、赤ちゃんの機嫌が悪くなってしまっては本末転倒なので、上手に撮ることよりも楽しいことを意識して。私も、プライベートや仕事での子ども撮影で、いちばん意識することは“楽しい”ことです。上手に撮ることより、楽しい現場がよい写真を生みますよ。
「親の目線が感じられる」写真というのは、こんなカットです。
パパやママの顔は写っていませんが、抱っこしている腕や頭をなでている手が入っていることで、親のやさしさや愛情が伝わります。また、大人の手が写っていることで、赤ちゃんの小ささやかわいらしさも感じられます。
赤ちゃんのかわいい写真というと、子どもの顔がドーンと写ったアップの写真を思い浮かべるかもしれませんが、こんな写真なら、愛おしさとかわいさを同時に感じてもらえるのではないでしょうか。
初夏の思い出の写真は、ぜひ、エピソードを添えてはがきにしてほしいと思います。はじめての夏を迎える赤ちゃんですから、沐浴して気持ちよさそうにしているところや、お昼寝をしているところもいいかもしれません。外で撮るなら、青空をバックにパパやママが“高い高い”している写真もいいでしょう。
そして、写真に子どもとのエピソードを添えてあげると、受け取った側も想像しやすく、また返事を書きやすくなります。
ママが赤ちゃんに添い寝をしている写真なら、「小さな娘を眺めながら、上の子とふたり、『いつまで見ていても飽きないねえ』と話しています」。「小さな娘のまわりに自然と家族が集まります。ますます暑い夏です」など、その様子を伝えるだけでもいいと思います。
私も最初の出産は6月だったので、暑中見舞いを送る時期に出産報告のはがきを出しました。とても暑くて、その頃は一日中寝間着の浴衣姿で過ごしていたので、そのままの格好で縁側に座って撮りました。残念ながら、はがきも画像も残っていないのですが、浴衣や縁側、子どもの着ていた肌着で、夏らしさが出ていたのではと思います。
デザインは凝らなくても大丈夫 自分らしさを出すなら“手描き文字”も一つのアイデア
プロのフォトグラファーやデザイナーであれば、写真と文字を自由に組み合わせることができるかもしれませんが、そういう作業に慣れていない方がほとんどだと思います。そんなときは、既存のテンプレートを使うことになるかもしれませんが、自分のイメージに合うものをよく探すことが大切です。
最近は、インターネットで注文できる印刷屋さんもあり、さまざまなテンプレートが用意されています。また一からデザインしなくても、ネット上の操作で文字のフォントや大きさ、写真の位置などをカスタマイズできるものも多くありますので、それらを賢く利用するのもいいでしょう。
もし、「そういうことが全部苦手」という場合は、思い切って、ただプリントするだけでも“あり”です。はがきサイズの台紙に、写真を置く場所やサイズを考えます。ただそれだけの工夫で、1枚の写真がずいぶん違って見え、オリジナルのはがきになります。一例ですが、手書きでひとこと「うまれました」と書くだけでも、書いた人のぬくもりが加わったすてきな1枚になります。
今1歳の私の末っ子のときは、たくさん印刷して一斉に出すというような一大イベントはしませんでした。単純に写真を全面プリントしたはがきを、子育ての合間に気分にあわせて書いて、送って、書いて、送って、というふうに送りました。産後間もないときは、産後間もない写真で、産後2か月の頃には、産後2か月の写真で。表書きの文章を書いているときは、娘の寝顔を見ながらの時間で、今思うと、はがきを書くことで子育ての気分転換をしていたような気がします。楽しかったですね。そのあとに、ときどきお返事が届くのもうれしくて。
はがき一枚一枚は、限られたスペースしかありませんが、小さなお手紙。送る相手の方々を想像しながら作ることが大切ですし、そこにおもしろさがあります。ママやパパが楽しんで作ることができたら、きっとよりよい暑中見舞いになりますよ。
【プロフィール】
繁延あづさ(しげのぶ・あづさ)
1977年、兵庫県姫路市生まれ。県立明石高校美術科卒業後、桑沢デザイン研究所ID科に学ぶ。その後、写真家の道に進む。著書に『カメラ教室 子どもとの暮らし、撮ろう』(翔泳社)など。出産撮影の出張撮影も行う。2011年に東京から長崎に引っ越し、現在、夫、小学生の2人の息子、1歳の娘の5人暮らし。近く2冊の新刊が発売予定。
http://adusa-sh.sakura.ne.jp/