ママに寄り添う“家庭訪問型”の子育て支援
「ホームスタート」に学ぶ、助け合う子育て

2015.10.08

ミキハウス編集部

「ホームスタート」を実践する埼玉県和光市の場合

全国で展開されるホームスタートですが、今回は埼玉県和光市の「NPO法人わこう子育てネットワーク」のオーガナイザー・森田圭子さんと近江幸子さんに詳しいお話を伺いました。わこう子育てネットワークは、ホームスタート活動以前から、地域の子育てのためのボランティア活動を行っている団体で、和光市で子育てを経験された先輩ママによって運営されています。

子育てボランティアに長く携わってきた森田さんは、和光市の現状を次のように話します。

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「和光市は東京のベッドタウンで、転出入が多い土地です。旦那さんの転勤で移り住んで来た人や、家を購入する際に都内から引っ越して来る人もいます。今は結婚してもほとんどの女性が仕事を続けるので、家には寝に帰るだけで、地域の繋がりというものがまったくない方が多い。そうすると、子どもを産む段階になってはじめて、地域にひとりも知り合いがいないことに気づくんですね。親や親戚はもちろんのこと、友人がひとりもいない場所で子育てするのは、当たり前ですが不安がいっぱいです。和光市ではそういう方たちのためのコミュニケーションスペースとして、親と子が集える“おやこ広場 もくれんハウス”という場所があります(現在は、わこう子育てネットワークが和光市から委託される形で運営)。もちろん近所の公園を活用してもいいのですが、なかにはさまざまな理由で公共の場所には来られないお母さんもいらっしゃいます。そんなお母さんたちをサポートするためには、やはり訪問型が必要なのです」

お母さん自身が病気になったり、出かけるための足がなかったり、双子なのでお母さんだけでは手が足りないなど、出かけたい気持ちはあってもそれができない状況にあるお母さんは想像以上に多いとのこと。また、他の親子を目の当たりにすると、どうしても自分の家と比べてしまい「気持ちが落ち込むので公共の場には出かけなくない」というケースも。そんなお母さんたちに手を差し伸べるべく森田さんたちが立ち上げたのが、訪問型ボランティアのホームスタートでした。

ホームスタートでは、家庭を訪問する地域のボランティアを“ビジター”と呼び、全体の調整役を“オーガナイザー”と呼んでいます。利用者であるお母さんとビジターとオーガナイザー、必ずこの三者によってサポートが行われる仕組みです。

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ビジターになるのは、同じ地域に住む子育て経験のある先輩お母さんたちで、ホームスタートのボランティア活動を始めるにあたり、みなビジターとしての心構えやノウハウなどを研修で学びます。ビジターの訪問先はオーガナイザーにより決めらますが、まずはオーガナイザーが利用者を訪問し、いろいろと話を聞いた上で、ビジターとのマッチングを行います。また、支援中も、オーガナイザーにより利用者とビジター間に問題なく支援が行われているかの確認作業が入り、プログラムの最後には再度オーガナイザーが利用者を訪問。全般にわたり利用者にとって円滑な支援が行われるようにサポートするのがオーガナイザーの役割です。

「ホームスタートの特徴は、必ずビジターとお母さんが“一緒に何かを行うこと”です。何を行うかはお母さんの希望によって決められます。一緒に買い物へ行ったり、公園へ行ったり、家の中でお話をするだけという場合もありますが、ビジターがただ家事や育児を代行するということはありません」(森田さん)

訪問型と聞くと、家事を代行し、ベビーシッター的な役割を果たしてくれるサービスと思う方も多いかもしれませんが、それとはまったく異なります。先にも述べたよう“お母さんと対等な立場でお母さんの気持ちに寄り添う”のがホームスタートのサポート。子育てにはお母さんの心の安定が一番大切で、そのためには専門家でなくても地域でサポートできることがある、というのがさまざまな経験から得た森田さんたちの子育てサポートの結論です。

 

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