新しい命を育み、赤ちゃんの成長を見守るのは、ママにとって大きな喜びです。でも、ハッピーなはずの妊娠、出産から子育てと続く日々は、楽しいことばかりとは限りません。時には努力しても思いどおりにならなかったり、他人の何気ない言葉に傷ついたりして、悩んでしまうママだっているでしょう。
そんなママたちが「自分に自信を持って育児を楽しめる環境を作りたい」と漫画家のNAOKOさんと編集者のKUNIEさんが昨年春“マザーズペンクラブ”というユニットを立ち上げました。二人とも9歳の女の子と5歳の男の子がいるママです。
マザーズペンクラブの活動の中心は「バースレビュー・カフェ」。ママたちが抱えている妊娠、出産、子育てに関する誰にも言えないモヤモヤした気持ちや、心の底にある不満や不安を言葉にしてペンで書き出し、語り合い、客観的に見つめなおすことで乗り越えていこうというワークショップです。
ひとりでも多くのママが笑顔で子どもと幸せな時間を過ごしてほしいと願うNAOKOさんとKUNIEさんは、ボランティアで「バースレビュー・カフェ」に取り組んでいます。
今回は、そんなマザーズペンクラブの「バースレビュー・カフェ」の取り組みを前編と後編に分けてご紹介します。
2人のママの体験から生まれた“いやしのワークショップ”
梅雨空が広がる6月の昼下がり、東京都内のとあるカフェに5人の女性たちが集まりました。NAOKOさんとKUNIEさん、それにネットや口コミで活動を知って「バースレビュー・カフェ」に参加を申し込んだ初対面の3人のママたちです。
「バースレビュー・カフェ」は、明るい笑顔が素敵なKUNIEさんの自己紹介からはじまりました。

「NAOKOさんは9年前に病院の両親学級で知り合い、同じ日に最初の子どもを出産したママ友です。4年後に下の子も同じ月に同じ病院で産んだという偶然も重なり、育児について共感し合ったり、悩みを相談し合う間柄になりました。また、編集者と漫画家として仕事上のつながりも生まれて、一緒に育児情報の冊子を作ったりと、公私ともに仲良くしてきました」
そんなある日、ふとした会話から、互いに自分の妊娠、出産について、釈然としない思いを抱えていたことを知りました。
「親しくても言わないことや、言えないことってあるんですよね。親しいからこそ言いたくないのかも…」
実はKUNIEさん、出産に際して“絶対、助産院で自然分娩したい”と思っていました。体力には自信があり、自分なら大丈夫と信じていたからです。しかし、いざ破水し、陣痛がはじまってもなかなかお産が進まず、赤ちゃんの心音が低下し危険な状態になり、病院に緊急搬送され、帝王切開による出産になってしまいました。思っていたものとは全く違った現実に、その後、彼女はどうして自然分娩ができなかったのか、何が悪かったのかと自分を責め、原因を知りたいと文献を読んだり、ネットで検索したり。でも納得できる答えは見つかりませんでした。
「私のモヤモヤが解消されたのは、4年後に2人目を自然分娩で出産したときです。一度帝王切開をすると、次も帝王切開になってしまうことが多いのですが、2度目以降の出産で自然分娩をすることができるケースもあります。“VBAC(ブイバック)”と呼ばれるのですが、ラッキーなことに私はそれができたんです。この一連の経験の中で学んだのは妊娠、出産、子育てでは、思いどおりにならないこともあるということ。だから、理想の妊娠や出産ができなかったときに、どうやって乗り越えるかがとても大切なんです」
長い間ひとりで思い悩んだKUNIEさんは、その経験から、出産におけるネガティブな気持ちを率直に話せる場所があれば、そのつらさをいやす助けになるのではないかと考えるようになりました。