心のモヤモヤを解消する「バースレビュー」で
ママを笑顔に! (前編)

ミキハウス編集部

言葉にしながら、気持ちを整理していく

次にNAOKOさんが取り出したボードには「バースレビュー」の4つのステップが書かれています。

  1. 1自分の中のモヤモヤを見つめ、吐き出す
  2. 2モヤモヤをポジティブにとらえ直す
  3. 3ポジティブにとらえ直したバースレビューを書く
  4. 4書いたバースレビューを繰り返し読む

「バースレビューの本来の目的は自分の妊娠、出産に自信を持ってもらうこと。妊娠、出産ってすべてが思いどおりにいくわけではないけれど、自分なりにすごくがんばったと自分を認めることが、前向きな気持ちで子育てに取り組むためにすごく大事なんです。私たちのワークショップは、産後すぐのママだけではなくて、子育てに悩むママの参加も歓迎しています。妊娠、出産の大変な時期のがんばりを振り返ると、ポジティブな気持ちになれますから」とNAOKOさん。

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「今日のワークショップでは、ステップ1と2までしかできませんが、家に帰ってからぜひ3と4もやってみてくださいね」

KUNIEさんが記入用のオリジナルシートを配り、ママたちは妊娠、出産、子育てにまつわる「つらかった、嫌だった出来事」を書き出します。

「誰も見ませんから、何を書いても大丈夫。時間は5分間です。思いつく限り書いてくださいね」

真剣な表情でワークシートに向かうママたち。5分間はあっという間に過ぎて、発表の時間です。

まず話しはじめたのは1歳半の男の子のママ、Iさん。

「妊娠中より子どもが生まれてからのほうがモヤモヤ感があります。完全母乳で育てたかったので、うまく授乳できないことがもどかしくて、とても悩みました。母乳の出をよくしようと搾乳を繰り返したり、飲ませ方をネットで調べたりして、できることは全部試したつもりです。でも結局4か月ぐらいであきらめて、粉ミルクも飲ませることにしました。最近は成長し、言うことをきかなくなって困っています。2人目のときには、妊娠中から母乳外来などに通って準備をして、次こそ母乳育児をしたいです」

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KUNIEさんとNAOKOさんは「そうだったんですね、すごくがんばられたんですね」「ほんとにえらいと思います」と相づちを打ちながら聞いています。

「できれば母乳をあげたいですもんね。次はうまくいくといいですね」

次は5歳10か月の男の子のママ、Nさんの番です。

「私はつわりがひどくて、吐き気に苦しみました。食べ物を見たくないから、スーパーにも入れなかったんです。みんなに『そのうちおさまるよ』と言われたのに、妊娠中期に入っても続いて本当につらかった。“すてきなマタニティライフ”なんて言葉も聞くけれど、私の場合はひたすらベッドの中で吐き気と戦っていたという思い出しかありません。仕事にも行けなくて、そのまま退職せざるをえませんでした」

つわりに苦しんだNさんの話にNAOKOさんが「わかる、わかる」と声をあげます。

「つわりがひどいのってつらいですよね」

「そうなんです。出産って終わりが見えているから、がんばりがいがあるでしょう。でもつわりはいつまで続くかわからなくて毎日が本当につらかった。出産はもう一回してもいいけど、つわりがこわいから妊娠はイヤ。あの数か月間は思い出すのもイヤです。私がそんな状態なのに、夫は焼肉を食べにいこうと言うんです。我慢してついていっても、帰り道で吐いてしまう。それに私がつわりで苦しんでいても、ゲームばかりしていて心配してくれるわけでもなくて、とても孤独でした。私の友だちはほとんど子どもがいたので、みんな乗り越えたことなのに自分はどうしてできないんだろうって情けなかったし」

「それで、体は大丈夫でしたか? 入院は?」と心配顔のNAOKOさん。

「食べて吐いてという感じでしたが、入院まではしませんでした。妊娠7か月のとき、我慢できずに実家に帰ったら具合がよくなって、無事に出産しました。でも夫はすぐに子どもの顔を見にくるでもなく…。悩んだ末、離婚しました」

「それは大変だったですね。つらい時期をよくがんばられましたよね」

「すごい。そんな経験を乗り越えられて」

KUNIEさんとNAOKOさんにそう言われて、Nさんはほっとした表情になりました。

最後に発表したAさんも、妊娠中に夫との関係について悩んだとのこと。

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「今2歳4か月になる娘の妊娠がわかったとき、夫はまだ若くて、心の準備ができていなかったんだと思います。いつも喧嘩ばかりしていたのですが、そのうち夫は実家に帰ってしまったんです。私は、出産までの数か月を、ひとりぼっちでネットばかり眺めて過ごしました。いつも夫のことを考えてはイライラしていたから、お腹の赤ちゃんもかわいそうでした」

「それで、近くに弱音を吐ける人はいたんですか?」

「私の実家が近かったので、ときどき母に話を聞いてもらいました。それで何とか持ちこたえたというか。でも夫婦のことって親にも友だちにもなかなか言えないんですよね。夫は予定日の1週間前に帰ってきて、出産にも立ち会ったのですが、陣痛室で苦しむ私の横でカップラーメンを食べはじめたんです。一生忘れない最悪の思い出です」

「でも、離婚はされなかったのですね?」

「はい。それに最近は、だいぶ大人になって娘をかわいがっています。昨日も読み聞かせをしながら『胎教にも悪かったろうな。かわいそうなことをしたな』って言っていました」

「Aさん、えらいですねぇ」

「がんばったからですよ。すごいと思います」

ママたちの経験談に一心に耳を傾けて、うなずいたり、言葉を返すKUNIEさんとNAOKOさん。自身もママとして日々奮闘する彼女たちならではのワークショップは、まだまだ続きます。

(後編に続く)

 

【プロフィール】

kunie_san

KUNIE(邦恵)
9歳と5歳の子どもを育てるライター兼編集者。生協職員やテレビ番組制作者、新聞記者、保育士などを経て、育児系出版社で10年間雑誌・書籍製作に携わる。妊娠・出産・子育てについては公私ともにずっと関心大。現在はママ向け、保育者向けの取材や教育関連の仕事をしながら、マザーズペンクラブの活動にも積極的に取り組んでいる。

naoko_san

NAOKO(尚桜子)
9歳と5歳の子どもを育てる漫画家。大学卒業後、独学で漫画家に。「別冊マーガレット」でデビューした後、「モーニング」等の雑誌で読み切りや連載を発表。出産後は「たまごクラブ」「ひよこクラブ」等でエッセイ漫画も描く。昨年、初めての妊娠、出産を描いたブログ漫画『助産師さん呼びましょうか?』の1~5巻が電子書籍化され1年間で6万5千ダウンロードを記録。アマゾンKindleのカテゴリー別ランキングで1位に。2015年にはお産トラウマやバースレビューの効果について、自身の経験や取材をもとに漫画で解説した『お産トラウマは怖くない!』を電子書籍でリリース。反響を呼んでいる。

※「バースレビュー・カフェ」についてのお問い合わせは、マザーズペンクラブまで
http://motherspenclub.blog.jp/

 

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