【専門医監修】妊娠~「陽性」が出てからすべきこと
- 産婦人科医 / 吉村泰典先生
妊娠のきざし
卵子と精子が受精卵となり、子宮内膜に着床すると妊娠の成立です。女性の体内では、胎児を育て出産に備えるための女性ホルモン(hCGホルモン、エストロゲン、プロゲステロン)が大量に分泌されるようになります。
代表的な妊娠初期症状を以下の通りです。
【1.おりものが増える】
おりものはもともと個人差が大きいのですが、妊娠すると量が増えたり、粘り気がなくなったりと変化することがあります。
【2.基礎体温が下がらない】
月経がはじまっておよそ2週間したら排卵日で、その後体温が高い黄体期(おうたいき)が11~16日間ほど続きます。黄体期をすぎても基礎体温が下がらないなら、妊娠の可能性があります。
【3.眠気を感じる】
妊娠初期の眠気はプロゲステロンの影響です。
【4.少量の出血がある】
受精卵が子宮内膜に着床する際に少量の出血が見られることがあります。下着が少し汚れる程度なら、着床出血と考えることができます。
【5.乳房の張り、痛み】
母乳を出す準備がはじまり、乳腺や乳管が発達して乳房に張りや痛みを感じることがあります。
【6.おなかが張る、痛みがある】
ホルモンバランスの乱れなどが原因で、腸の働きが弱くなり、下腹に張りや鈍痛、違和感などを感じることがあります。
他にも腰痛、頭痛、肌トラブル、嗅覚の変化、吐き気など、妊娠の初期症状はさまざま。体調の変化を感じたら、市販の妊娠検査薬で調べてみましょう。一般に妊娠検査薬は月経開始予定日の1週間後ぐらいから使えるとされています。
妊娠が成立した時点で、妊娠3週目です
予定日になっても月経がはじまらず、体調の変化を感じると、本当に妊娠したのか、気になりますね。妊娠週数の数え方と進行を下図で表しました。
妊娠週数は最後の月経がはじまった日を0週0日として数えます。月経周期が28日の人の場合は、妊娠が成立した時点ですでに妊娠3週となります。市販の妊娠検査薬で陽性反応が出るようになるのは一般的には妊娠5週に入った頃。産科で胎児の心拍を確認できるのはもう少し遅く、5週の後半から6週ぐらいになります。
妊娠の数え方には、週数と月数があります。これまで日本では妊娠初期は16週未満、中期は16週〜28週未満、末期(後期)は28週以降に分類されてきましたが、現在は以下の三分期に分けて考えられています。
- 妊娠初期(前期)=13週6日まで
- 妊娠中期=14週0日〜27週6日
- 妊娠末期(後期)=28週0日〜出産予定日まで
一般的に使われる妊娠月数で数えると、妊娠0日~3週6日→1か月、4週0日~7週6日→2か月、8週0日~11週6日→3か月、12週0日~15週6日→4か月、妊娠16週0日~19週6日→5か月、20週0日~23週6日→6か月、24週0日~27週6日→7か月、妊娠28週0日〜31週6日→8か月、32週0日~35週6日→9か月、36週0日~39週6日→10か月となり、出産予定日は40週の0日(280日目)となります。
なお情報サイトなどでは妊娠0~3週あたりを「妊娠超初期」としていることもありますが、医学的には、「妊娠超初期」という表現は用いられません。
出産に向けた準備をはじましょう
妊娠検査薬で陽性になったら、出産に向けた準備を本格的にはじめましょう。
【1.病院で妊娠検査を受けましょう】
病院では尿検査、医師の触診や内診、超音波(エコー)検査などを行い、妊娠を確認。分娩予定日や赤ちゃんの様子などを教えてくれます。
【2.生活習慣を見直しましょう】
食事の栄養バランスに気をつけて、睡眠不足や過度のストレスを避けましょう。薬の服用はかかりつけ医に相談してください。飲酒喫煙はすぐにやめましょう。
【3.妊娠届出書をもらいましょう】
妊娠届出書は医療機関か役所で発行しています。どちらでもらえるかは自治体によって違いますから、あらかじめ病院や役所のHPなどで調べておきましょう。
【4. 母子健康手帳をもらいましょう】
自治体に妊娠届出書を提出すると、母子健康手帳(妊娠と出産の経過や満6歳までの子どもの健康状態や発育・発達の様子、予防接種歴などを記録するもの)や妊婦健康診査受診票(検診費用の助成がうけられるもの)をもらうことができます。
【5.産休・育休の申請は早めにすませましょう】
企業で働いているプレママは、出産予定日の6週間前から出産後8週間までの「産前産後休暇(産休)」と子どもの1歳の誕生日までの「育児休暇(育休)」を取ることができます(※1)。妊娠がわかったら早めに職場の上司へ申請しましょう。プレパパも配偶者出産休暇(産休)や育休を積極的に取得してくださいね。
【6.妊娠・出産にかかる費用について確認しましょう】
妊婦健診は妊娠中に合計14回受けることになっています。健康な妊婦さんであれば、妊婦健康診査受診票を使えば無料で受診できることが多いようです。出産費用は正常分娩の場合、平均で50万5千759円(※2)です。このうち国から「出産育児一時金」として42万円が支給されるため、自己負担額はおよそ8万6千円。無痛分娩や帝王切開の場合は追加の費用が必要です。健康保険に加入していれば、出産前42日間、出産後の56日間の期間中に会社を休んだ日数に応じて給料の約3分の2が支給される出産手当金(※3)もあります。
この他にも出産準備品と呼ばれる、赤ちゃんの肌着やおむつ、ベビーウエアやベビー布団、ベビーバス、哺乳瓶など生まれてくる赤ちゃんのために必要なものを揃え、部屋の環境を整えるなど、出産までに済ませたいことを、体調を見ながら少しずつ進めていきましょう。
プレママの夏のすごし方についてまとめた「妊婦さんが注意すべき夏の感染症は『新しい生活様式』で予防できます」や「専門医が語る『おなかの張り』のトリセツPart1【妊娠初期・中期編】」、「専門医が語る『おなかの張り』のトリセツPart2【妊娠後期編】」も参考に、健やかで楽しい妊娠期をおすごしください!
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。