梅雨が開けて、いよいよ夏! いつもなら開放的な気分になって、海や山に出かけたくなる季節ですが、新型コロナ感染症が拡大傾向にある今夏は里帰りさえためらっているプレママ、プレパパもいることでしょう。また、おなかの赤ちゃんのためにも薬の服用を避けたいプレママにとっては軽い夏風邪さえ、心配の種になってしまいそうです。
今回は夏のプレママが気をつけたい新型コロナ以外の夏特有の感染症を取りあげます。症状や予防策について慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に詳しく教えていただきましょう。
妊婦が気をつけるべき「夏の3大感染症」とは
――新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向にあり、引き続きそれぞれが対策を取り続ける必要があります。さて本日のテーマはコロナではなく、それ以外の、この時期特有の感染症についてです。まずお伺いしたいのですが、プレママが気をつけるべき夏の感染症には、どのようなものがあるのでしょうか?
吉村先生:大きく3つあります。ひとつは「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」ですね。ヒトパルボウイルスの感染症で“りんご病”とも呼ばれています。後で詳しく説明しますが、胎児に影響を及ぼすことがあるので、妊婦さんは最も注意すべき夏の感染症と言えるでしょう。次に、“プール熱”と呼ばれる「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」。これはアデノウイルスを原因とするものです。3つ目は「手足口病」。これはエンテロウイルスの感染症です。いずれの感染症も子どもの間で広がることが多いので、特に上の子が保育園や幼稚園に通っている妊婦さんは十分用心していただきたいです。
――「伝染性紅斑(りんご病)」、「咽頭結膜熱(プール熱)」、「手足口病」ですか。確かに、夏になると子どもたちの感染症としてよく話題になる病気です。
吉村先生:りんご病は、頬に紅い発疹ができて感染に気づくことが多いのですが、大人がかかると関節痛、頭痛を訴えることがあります。プール熱は、喉が腫れて目の結膜にも炎症が起こる病気で、発熱を伴うことが多いものです。一般的に“はやり目”と呼ばれる流行性角結膜炎もこのアデノウイルスによって起こるもので、妊婦さんにも比較的多く見られる疾患です。手足口病はその名の通り、口の中や手足などに小さな水ぶくれのような発疹が出ます。ほとんどの場合数日で治る軽い病気なのですが、ごくまれに髄膜炎などの合併症を起こすことがありますから、高熱が続く場合は注意が必要です。手足口病の原因となるエンテロウイルスは、喉の痛みや腹痛を伴う夏風邪の原因にもなるものです。
――さきほど「りんご病はプレママが最も注意すべき感染症」とおっしゃっていましたが、これについて詳しくお聞かせください。
吉村先生:妊婦さんがりんご病に感染すると、胎児に貧血の症状があらわれることがあります。胎児貧血は胸部や腹部に水がたまる胎児水腫のような重大な病気を引き起こし、流産の危険にも繋がることがあるので、妊婦さんのヒトパルボウイルス感染症は要注意です。ところがりんご病が子どもたちの間ではやると、看病するうちにかかってしまうお母さんも少なくなくて、これまでウイルスに感染したことのない妊婦さんの約1%が感染するというデータもあります(※1)。特に妊娠初期の感染は胎児への影響が大きいと言われていますから、気をつけていただきたいですね。