専門医が語る「おなかの張り」のトリセツPart2【妊娠後期編】

産婦人科医 / 吉村泰典先生

妊娠後期を迎える頃には、エコー画像でおなかの赤ちゃんの顔立ちや表情まで分かるようになって、ママ・パパになる日がますます楽しみになりますね。でも大きくなったおなかは張りやすくて「大丈夫かな」と心配な日もあるかも知れません。

「専門医が語る『おなかの張り』のトリセツPart1【妊娠初期・中期編】」に引き続き今回は、妊娠後期のおなかの張りの原因と気をつけたい症状、受診すべき場合などについて慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に伺います。

 

安静にして治まるおなかの張りであれば、心配する必要はありません

くつろぐ妊婦さん

――おなかがぐっとせり出してくる妊娠後期は、おなかの張りを自覚しやすくなります。後期のおなかの張りの原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

吉村先生:前回の記事でも妊婦さんのおなかの張りには「生理的要因の張り」と「合併症など病気の時の張り」のふたつがある、というお話をしましたね。また妊娠初期・中期の多くは「生理的要因の張り」であると。同じく後期でも、おなかの張りというのは疲れ、ストレス、緊張、便秘など生理的要因のものがほとんどです。おっしゃるように大きくなったおなかは張りを感じやすいもの。妊婦さんは気になるとは思いますが、30分ぐらい横になるなど休んで治まる張りならあまり心配することはないですね。

――おなかが張って胎動を感じにくくなると、出産の前兆ではないか、異常の兆候ではないかと考えてしまうプレママは多いようです。

吉村先生:そうですね。36~37週ぐらいで「赤ちゃんの動きが少なくなった」と心配する妊婦さんもいらっしゃいますが、その頃になると赤ちゃんの頭は出産に備えてだんだん下がって固定されたような体勢になってきますから、赤ちゃんは動きにくくなって胎動が減ることがあります。そのタイミングで張りを感じたら、「なにかあったんじゃないか」と不安になるかと思いますが、生理的な要因で張るなら心配はいりません。

――生理的要因と病的要因。このふたつの張りは、どのようにして見分けるのでしょうか?

吉村先生:痛みや出血を伴うか、規則的に張るかどうかが病気による張りと判断する基準になります。例えば1日に5~6回ぐらいしか起こらないなら、これは不規則なものです。出血がなければ不規則な張りは生理的なものが圧倒的に多いんです。

――それでもおなかが張るのは気になります。生理的な張りを少しでも軽減する方法はありますか?

吉村先生:ゆったりと安静にすごすことでしょうね。生理的な張りならお薬を使うことはありませんから、妊婦さんは生活の中で疲れや冷え、ストレスなどを避けるように気をつけたいですね。また前回の記事でもお話をしましたが、高齢妊娠の場合は、子宮筋腫などの合併症があったりする確率が高く、子宮の収縮も起こりやすいため、おなかが張ってしまいがちです。おなかの張りが強いと子宮の出口にある子宮頸管が短くなってしまうこともあり、妊娠後期の妊婦さんにとっては気をつけたいことではあります。

――子宮頸管(けいかん)が短くなるということは、早産になりやすいということですか?

吉村先生:そうです。経腟のエコー検査で頸管の長さが2センチ以下だったり、子宮収縮が規則的に起きていたりすると、早産の恐れがある「切迫早産」と診断されます。最近は28週以降で切迫早産になって安静のために入院するプレママが7~8%位いると言われています。ほとんどの場合は、一定期間点滴を続ければ症状は改善します。一度入院するとすごく神経質になる妊婦さんもいますが、退院するということは家で生活できると医師が判断したということですから、そう心配することはありませんよ。なお切迫早産については、こちらの記事をお読みください

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