妊娠ができなくなるわけではありません 
「子宮筋腫」の原因と対策 
~子宮のトラブル~(前編)

妊娠・出産をつかさどる大切な器官、「子宮」。女性ホルモンの影響により、様々なトラブルがおきることもあります。代表的なものは、子宮筋腫と子宮内膜症。月経痛や腹痛などを症状とするこれらの疾患は、20代から40代の女性が発症することが多く、最近では不妊の原因としても注目されています。

そこで今回は「子宮周りのトラブル」として、子宮筋腫と子宮内膜症を取り上げます。前編では、子宮筋腫の症状や治療法について、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典医師にお話を伺っていきましょう。

 

まずは子宮の働きと妊娠、月経の仕組みを理解しましょう

子宮筋腫について教えていただく前に、子宮とその周りの生殖器と月経について理解しておきましょう。

子宮と卵巣

子宮とは膣の奥の骨盤内に位置する袋状の器官で、子宮壁とよばれる厚い筋肉でできています。妊娠していない時の成人女性の子宮は、長さ約8㎝、幅約4㎝で、重さはだいたい40gほど。子宮の左右の端は卵管とつながっていて、卵管は卵巣から一定のサイクルで排出(排卵)される卵子を取り込み、精子がくるのを待ちます。受精に成功すると、受精卵は卵管を通って子宮に移動して着床します。こうして妊娠して子宮の中で胎児が育ち始めるのです。

また卵巣は、女性が生まれながらにもっている卵胞を成熟させ卵子にして放出する働きのほか、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンを分泌する重要な役割を持っています。

子宮壁は子宮内膜と子宮筋層、漿膜(しょうまく)の3つの層から成り立っています。内側にある子宮内膜は水分を多く含む粘膜層です。真ん中の子宮筋層は筋肉と結合組織でできている平滑筋(内臓や血管の壁になる筋肉)で、子宮壁で一番大きな部分になっています。外側の漿膜とは、体の内臓器官を包んでいる薄い半透明の膜のことです。子宮壁の厚さは健康な女性の場合、1~2㎝程度と言われています。

「子宮内膜は排卵の後、妊娠した場合に子宮で赤ちゃんを育てるための準備として少しずつ厚くなっていきます。妊娠が成立しないと、新しいものに生まれ変わるためにはがれ落ち、はがれ落ちた内膜は血液と一緒に排出されます。これが月経です」(吉村先生)

一定の周期で繰り返す月経は、妊娠・出産のための準備が整っていることをからだが教えてくれているのですね。

次のページ 子宮筋腫は30代の約3割に見られる、“誰にでも起こりうる疾患”です

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