現代女性を悩ませている「子宮内膜症」。発症頻度は月経のある25~44歳の女性の約10~15%にみられるともいわれています。症状としては月経痛や月経困難症などさまざまで、不妊の原因になることも。そこで本記事では「子宮内膜症」の原因や予防法について、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生にお話を伺います。
急増の要因は晩産化と少子化にあります
子宮内膜とは子宮の内側を覆っている膜のこと。排卵がおこると子宮内膜は妊娠に備えて厚くなってきますが、妊娠が成立しないとはがれ落ちて血液とともに排出され「月経」が始まります。
その後、新しい子宮内膜ができ、妊娠しないとまたはがれ落ちるということが一定の周期で繰り返されるのです。
子宮内膜症とは
子宮内膜症は、本来なら子宮の中にあるべき子宮内膜のような組織が、からだのほかの場所にできて、増殖、進行する病気のことを指します。20~30代の女性で発症することが多く、そのピークは30~34歳にあるといわれています。
「子宮内膜症ができやすい場所は、骨盤内の卵巣、腹膜、子宮と直腸の間にあるくぼみのダグラス窩(か)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)など。卵巣にできたものは卵巣チョコレート嚢腫(のうほう)と呼ばれ、卵巣がんにもつながることもあります」(吉村先生)
子宮内膜症の主な症状は月経痛と不妊
子宮内膜症は、痛みや月経困難症などいろいろな症状を引き起こします。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約90%にみられます。
「痛みの強さは内膜症ができた位置に関係しています。また排卵障害、受精障害、着床障害など不妊にもつながります。子宮内膜症患者の30~50%が不妊症であり、不妊症患者の25~50%に子宮内膜症が見られます」(吉村先生)
子宮内膜症の増加は、現代女性の月経回数に関連あり?
子宮内膜症の原因は完全に解明されているわけではありませんが、発症までの月経の回数と発症のリスクは連動しており、月経とエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響していることがわかっています。
こうしたことから、子宮内膜症の増加は女性の月経回数に関連があるといわれています。
吉村先生によると「1998年に子宮内膜症で治療を受けた人は12万6千人だったのが、2014年になると21万9千人になっていて、これは性成熟期の女性のうち10人に1人」とのこと。
もちろん治療を受けていない人を含めると、発症頻度はそれ以上。気づかぬうちに発症している人も多いので、少しでも違和感を覚えたら受診したほうがよいかもしれません。