子宮内膜症の治療は、薬物によるホルモン療法と、外科手術で行われます。症状が軽い場合は、ピルなどのホルモン剤で排卵を止めて子宮内膜の増殖をおさえ、進行を止める治療が行われます。
ホルモン療法って、心配はいらない?
「もちろん心配はいりません。日本ではホルモン療法に対する偏見が強いですが、欧米では2000年ぐらいから月経がからだに与える影響を考慮してピルの連続投与が始まっています。
妊娠を希望していない場合は、女性ホルモンをコントロールして年に1〜2回ぐらいしか月経を起こさないようにします。月経を減らすことで、子宮内膜症の予防・改善に寄与するだけでなく、月経がもたらす生活への影響を最小限にすることが可能です」(吉村先生)
女性が自身の月経をコントロールすることができれば、子宮の疾患だけでなく、生活をより質の高いものにすることができると吉村先生。
「私が医師として日本のみなさまに訴えたいのは、ピルへの誤解を解いて、女性が積極的にピルを利用してほしいということです」(吉村先生)
一般的には「避妊薬」のイメージが強いピルですが、子宮内膜症を予防・改善するばかりでない、女性のQOLを上げるという副効用もあると吉村先生は強く訴えます。
子どもを持ちたい人も、そうでない人も。毎日、健やかな生活を送れるよう、年1回の定期検診はもちろん「最近月経時の痛みが強くなった」「月経血の中のレバーのようなかたまりがある」「なかなか妊娠できない」など思い当たることがあれば、できるだけ早目に婦人科を受診してください。そして医師と相談の上で、ホルモン療法という方法も選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
(※1)「子宮内膜症 Fact Note」(日本子宮内膜症啓発会議 2013年)
http://www.jecie.jp/jecie/wp-content/uploads/2014/01/bf32e43950a8bd66920b77f82acc3477.pdf
<画像提供>
(※)慶應義塾大学病院KOMPAS:
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000096.html
1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。