4月からわが子を保育園に預けて仕事を再開するママは、出産からずっと一緒にすごしてきた赤ちゃんと離れ離れになるこれからの生活を想像して、ちょっぴり切ない気持ちになっているのではないでしょうか。子育てと仕事をうまく両立して、慌ただしい日々を乗り越えていけるだろうかいう不安も感じているのかも知れませんね。
そんなママ・パパのために、今回は保育園について考えてみたいと思います。保育園とはどんなところで、わが子を送り出すママ・パパはどんな心構えが必要なのでしょう。30年以上、保育の現場で働き、現在は東京都の江東区こども未来部保育計画課で区内の保育施設の運営指導に携わる田所真由美さんにお話を伺い、入園前にママ・パパが知っておきたいことについてまとめました。
保育園は赤ちゃんがはじめて体験する“社会”です
――東京・湾岸エリアの江東区は、若い世代に人気の住宅街です。田所さんは現在、区役所で区立の保育施設の運営指導に携わっておられるということですが、それまでも保育の現場でたくさんの子どもたちと接してこられたと伺いました。そこでまずは、入園する前の準備としてママ・パパが心がけておきたいことがあれば教えていただきたいと思います。
田所さん:入園前のお子さんへの対応で大切なのは、今まで通りたっぷりと保護者の方の愛情を注いであげることでしょうね。まだ幼いお子さんを保育園に預ける保護者の方には不安もあると思いますが、お世話をする保育士は教育・保育のプロですし、園の方でも1日も早く慣れて、生活を楽しめるような配慮はしていますから、安心して任せていただきたきたいです。入園直後はママ・パパと離れてすごす新しい環境に慣れなくて、朝別れる時に泣いてしまうお子さんもいるのですが、それだけママ・パパに愛着を持ってしっかりとした親子関係ができているということですから、それは決して悪いことではありません。
――朝、別れ際に泣かれるのはママ・パパにとってはつらいんですよね。
田所さん:そうですよね。子どもからすればお母さん、お父さんにたっぷり愛情を注いでもらって幸せに成長してきたからこそ、離れたくない気持ちが強いのでしょう。でも自分が愛されていることを実感して育ったお子さんは、人と関わる心地よさや喜びを知っています。人間関係の基礎ができているわけですから、園の環境に慣れてくれば、保育士との信頼関係をスムーズに築けるようです。信頼関係ができて居場所が見つかれば、安心して園での生活を楽しめるようになります。
――そういうことなんですね。ちょっぴり安心しました。他に入園前の注意点はありませんか?
田所さん:基本的なことですが、規則正しい生活習慣が身についていることは大事です。家にいるときには不規則な生活でもなんとかやっていけても、集団生活ではそうはいきません。朝ギリギリに起きて朝食抜きで保育園に来たお子さんは、お腹が空いて午前中の活動ができないということもありますし、ぼーっとしてしまってお友だちとの遊びやお散歩を楽しめないということもあるようです。そうなると一番つらいのはお子さんですから、保護者の方は早寝、早起き、朝ごはんなど生活習慣を整えてあげていただきたいです。
――家では好きなものしか食べたがらないので、保育園でみんなと一緒に食事ができるだろうかと心配するママ・パパもいるようですが…。
田所さん:そうですね。「うちの子は家ではちゃんと座って食べることができないけれど、大丈夫でしょうか」と心配する保護者の方がいらっしゃいますが、ほとんどのお子さんは園ではちゃんと座ってお友達と一緒に最後まで食べるんです。「家にいる時と全然違う」とその姿を見て驚かれる保護者も多いです。子どもたちだって、小さいなりに場の雰囲気を理解して、どう振る舞うべきかを考える事ができるんですよ。
――保育園という集団の中で自分はどう行動すべきかを少しずつ学んでいくということですか?
田所さん:そうですね。例えば外に出る時に帽子をかぶりたがらないお子さんに対して、無理強いはしませんが、何度も何度も粘り強く繰り返してかぶる意味を教えています。そうするとお友だちを見て自分で考えて、主体的に帽子をかぶるようになります。入園前に「あれができない」、「これもしない」と悩まないで、今まで通り大切に育てていただければ十分です。あとは保育園に任せていただいていいんです。