近年になり増加傾向にある子宮内膜症。その原因が月経の回数と関係あるというのは、どういうことなのでしょうか?
「昔の女性は初経が15歳ぐらいで始まり、若いうちから子どもをたくさん産んだために、閉経直前まで、ずっと妊娠と出産を繰り返していると。つまり妊娠と授乳によって月経がない期間が長いのが普通だったわけです。結果として、生涯月経回数が今よりずっと少なかったのです。
一方、近年は初経の低年齢化が進んでいる上に、妊娠・出産の回数が少なくなっているので、閉経までの月経の回数が格段に増えている。言い換えれば、現代の女性は昔の女性に比べて圧倒的に月経にさらされていることになるわけです」(吉村先生)
たとえば戦前の女性は生涯に4〜5人くらい子どもを産むことも珍しくありませんでした。そうした女性の場合、生涯の月経回数は少ない人で約50回、多くても約200回。それに比べて現代の女性は、子どもを産まない場合で約450回の月経があります。約50回の人から比較すると、9倍もの月経回数があるということになります。なお、子宮内膜症は、月経のたびに症状が進行するとも考えられています。
「仮に35歳ではじめて子どもを産んだとしても、それまでに約200回の月経があるわけですからね。妊娠前に子宮内膜症に疾患する方が増えているのは、そういう理由が考えられています」(吉村先生)
激しい月経痛は発病のサインかも
ここからは子宮内膜症を予防する方法について説明します。
日本子宮内膜症啓発会議がまとめた「子宮内膜症Fact Note」(※1)によると、子宮内膜症の前兆となる月経困難症を「器質性月経困難症」と呼ぶそうです。
この月経困難症が進行して子宮内膜症になり、卵巣の子宮内膜症は将来的に卵巣がんになる恐れもあるとのこと。
つまり“単なる月経痛”だと思っていたものが、子宮内膜症の前兆であったり、また卵巣がんにつながる初期段階かもしれないのです。
「女性には月経の痛みぐらい我慢するものという意識があるために、受診せずに市販の鎮痛剤でやりすごす人も多いのですが、治療しないと病気は進行してしまうかも知れません。器質性月経困難症や子宮内膜症であれば治療が必要です」(吉村先生)
子宮内膜症には“痛み”という自覚症状があるわけですから、病気のサインを見逃さず早期発見と早期治療を心がけてくださいね。