子宮筋腫とは、子宮の壁の筋肉が異常増殖してできたこぶのこと。できる部位によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫という3つのタイプに分かれます。良性の腫瘍ですから、転移したり、体を衰弱させてしまうことはありませんが、からだの正常な新陳代謝とは関係なく増殖を続けて大きくなっていくので、さまざまな症状につながることがあります。
「特に強い症状が表れるのが子宮内膜の近くにできる粘膜下筋腫です。子宮の内側にせり出すように大きくなるので、月経量が異常に多くなったり、貧血や不正出血などが見られることもあります。また子宮内の障害物となり受精卵の着床を妨げるので不妊症の原因にもなると言われています」(吉村先生)
次に子宮壁の筋層内にできるものを筋層内筋腫と言い、子宮筋腫の多くがこのタイプです。小さいものならほとんど症状を感じない女性も多いようですが、大きくなると貧血や月経痛、不妊にもつながります。
(慶應義塾大学病院KOMPAS※から許可を得て転載)
「子宮筋腫と言っても、できた場所などで症状のあらわれ方は全く違います。粘膜下筋腫や筋層内筋腫の場合、月経量が多くなったり、月経の期間が長くなるのは、腫瘍によって子宮の内腔が広がって、内膜の表面積が大きくなってしまうために、はがれ落ちる量も増えるためです」(吉村先生)
子宮筋腫は性成熟期の20代から40代の女性が発症することが多い疾患で、女性ホルモンのエストロゲンが、腫瘍の増大に関係していると見られています。
「そのため、初潮前の子どもには腫瘍が見られることが少なく、また50代女性の腫瘍は閉経すると小さくなります」(吉村先生)
子宮筋腫の発症数は子宮疾患の中では最も多く、30代の女性の3割、40歳になると4割ぐらいの女性に見られますが、「発症する人の数は以前とほとんど変わらない」と吉村先生。それなのに最近になって注目されるようになってきたのはどうしてなのでしょう。
その理由として吉村先生があげたのは、「晩婚化、高年齢出産の増加によって妊娠・出産の時期と子宮筋腫の発生年齢が重なってきた」こと。
「以前は子宮筋腫が問題になる頃には出産を終えていた女性が多かったために、子宮を全て取り除く手術が行われてきました。ところが、最近はこれから妊娠したいという女性に子宮筋腫が見られた場合、子宮を残す手術を行わなくてはなりません。子宮筋腫の発症数はほとんど変わらないにもかかわらず、出産適齢期の女性が患うケースが増えてきた結果、難しい問題になっているというわけです」(吉村先生)