専門医が語る「おなかの張り」のトリセツPart2【妊娠後期編】

産婦人科医 / 吉村泰典先生

妊娠後期、気をつけるべきおなかの張りとは?

妊婦さんのおなか

吉村先生:妊娠後期の張りで最も緊急性が高いのは、「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」という病気の場合です。胎盤が突然子宮からはがれてしまうために、赤ちゃんの命を維持することが難しくなり、妊婦さんも出血多量で危険な状況になってしまうことがあります。しかもある程度まで進行しないと分からない難しい病気です。

常位胎盤早期剥離

〈慶應義塾大学病院KOMPASから許可を得て転載〉

――早期発見はできないんですか?

吉村先生:難しいです。ちょっとおなかが張っている、ちょっと痛いかなと思っていたらすぐに激痛になってしまう。胎盤の裏に血腫ができているとか、それが増大しているとかいうことがあれば分かりますけれど、3日前の定期健診で全く問題がなかったのに、突然出血多量で救急車で運ばれてきて、緊急の帝王切開になってしまうというケースが多いのです。

――症状はおなかの張りと痛みですか?

吉村先生:急な激痛と非常に強いおなかの張りです。おなかが板のように硬くなるほど張りが強いのが特徴です。この病気の原因は分かっていませんが、一般には妊娠高血圧症候群があると常位胎盤早期剥離が起こりやすいということは言われています。

――なんとか早く気がつく方法はないのですか?

吉村先生:妊婦さんがおなかの張りや赤ちゃんの動きに注意するしかありません。医師は健診のときに「胎動を感じますか?」と必ず訊きます。妊娠38週でも赤ちゃんは1時間に1回ぐらいは必ず動きますからね。「なんとなく気持ちが悪い」と言って、胃腸の不調を訴えて受診する妊婦さんの中に常位胎盤早期剥離が見つかることがあります。常位胎盤早期剥離にはいろいろなパターンがあるので、出血のあるなしにかかわらず、おなかの硬さや痛みがいつもと違うと感じたらすぐに病院に行ってください。医者は「こんなことで病院に来ることはない」などとは決して思いません。

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