本特集の前編「専門医が教える『流産』と『切迫流産』のこと」でも取り上げたように、日本ではプレママのうち約3割が「切迫流産」「切迫早産」と診断されるというデータがあります(※1、※2)。
ところが2010年の調査では、実際に「早産」となったケースは、全体の6%弱(※3)ですから、「切迫流産」「切迫早産」と診断されても、正産期の妊娠37~41週に出産するママがほとんどということになります。
この要因の一つは、日本の周産期医療が世界最高水準のレベルにあることでしょう。医療機器の進歩もそれを支えているようです。「切迫早産」の原因や治療について、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典医師に教えていただきましょう。
「切迫早産」は子宮頸管の長さが判断基準になります
「早産」とは、妊娠22週から37週未満の間に子宮の中に赤ちゃんがいるのに、子宮が収縮して、赤ちゃんを押し出してしまうこと。充分に体が発達していないまま生まれてしまう赤ちゃんには手厚いケアが必要になってしまいます。
「早産」と「流産」との違いは、「流産」は妊娠22週未満で起こり、原因となる染色体異常を防ぐ方法がないため、「切迫流産」になると“安静”で乗り切るしかないけれど、「早産」のおそれがある「切迫早産」は、投薬などの治療で症状を改善することができるという点が大きいでしょう。
「切迫早産」の診断の基準としてよく用いられるのは、子宮と腟の間にある「子宮頸管」の長さ。妊娠していない女性の子宮頸管は約4㎝ですが、妊娠20週~24週ぐらいになってもその長さは変わりません。子宮頸管が本来の長さを保って、きちんと締まっていれば、おなかの赤ちゃんが外に出てしまうことはありませんし、腟から雑菌が侵入するのを防ぐこともできるのです。
「妊娠20週の頸管長を調べた結果、2.5㎝未満だと40%、2㎝未満では75%のプレママが早産になると言われています。頸管長が2㎝未満になっていて、定期的に子宮の収縮が起きるようであれば、『切迫早産』と判断して、入院してもらうことになります」(吉村先生)
「以前早産だったことがある」「ガンなどの治療のために子宮頸部(子宮の下の部分)を切り取った」「多胎妊娠でおなかが大きい」「腟が炎症(細菌性膣炎)をおこしている」「子宮口が開いている」なども場合も「切迫早産」になりやすいので、注意が必要になります。