本特集の前編「専門医が教える『流産』と『切迫流産』のこと」でも取り上げたように、約15%のプレママが「切迫流産」や「切迫早産」を経験しています(※1)。
ところが2022年の人口動態調査では、実際に「早産」となったケースは、全体の5.6%(※2)ですから、「切迫流産」「切迫早産」と診断されても、正産期の妊娠37~41週に出産するママがほとんどということになります。
この要因の一つは、日本の周産期医療が世界最高水準のレベルにあることでしょう。医療機器の進歩もそれを支えているようです。後編では、「切迫早産」の原因や治療について、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典医師に教えていただきましょう。
「切迫早産」は子宮頸管の長さが判断基準になります

「早産」とは、妊娠22週~37週未満の間に子宮の中に赤ちゃんがいるのに、子宮が収縮して、赤ちゃんを押し出してしまうことをいいます。充分にからだが発達していないまま生まれてしまう赤ちゃんには手厚いケアが必要になってしまいます。
妊娠22週未満で起こる「流産」のうち、染色体異常が原因の「初期流産」は妊娠を維持するのが難しく、血腫による出血などの場合は、“安静”にして乗り切るしかありません。一方「早産」は、投薬などの治療で症状を改善できるという点が大きいでしょう。
「切迫早産」の診断の基準としてよく用いられるのは、子宮と腟の間にある「子宮頸管」の長さ。妊娠していない女性の子宮頸管は約4㎝ですが、妊娠20週~24週ぐらいになってもその長さは変わりません。子宮頸管が本来の長さを保って、きちんと締まっていれば、おなかの赤ちゃんが外に出てしまうことはありませんし、腟から雑菌が侵入するのを防ぐこともできるのです。
「妊娠20週の頸管長を調べた結果、2.5㎝未満だと40%、2㎝未満では75%のプレママが早産になると言われています。頸管長が2㎝未満になっていて、定期的に子宮の収縮が起きるようであれば、『切迫早産』と判断して、入院してもらうことになります」(吉村先生)
「以前早産だったことがある」「ガンなどの治療のために子宮頸部(子宮の下の部分)を切り取った」「多胎妊娠でおなかが大きい」「腟が炎症(細菌性膣炎)を起こしている」「子宮口が開いている」などの場合も「切迫早産」になりやすいので、注意が必要になります。