日本では、1月~4月1日に生まれた子は「早生まれ」と呼ばれます。赤ちゃんの頃は、生後5ヶ月、生後12ヶ月などと、「月齢」を単位として考えますが、幼稚園や保育園に入ると「年齢」を基準にするようになります。早生まれの子をもつ親は少なからず、このことに不安を感じ、「早生まれは不利」のイメージをもつ人もいるようですね。はたして早生まれは本当に不利なのでしょうか?
やっぱり心配 早生まれの子をもつ親の本音
まずは、3歳までの早生まれの子どもをもつパパ、ママに話を聞いてみました。
「保育園に通いはじめたのですが、単純に『こんな大きい子と一緒で大丈夫か?』と不安に思っています。同じクラスでも4月生まれの子と3月生まれの子では、ほとんど1歳違う感じなので」(1歳女児のパパ・40代前半)
「同じ学年でも遅生まれの子はもうおしゃべりしていたりして、すごいなぁと感心してしまいます。仕方のないことだとは思っているのですが、自分の子が劣っているように感じてしまって…」(2歳男児のママ・30代前半)
「早生まれにならないように産んであげたほうが、この子のためだったかなとときどき思います。小学校に入っても、なかなか遅生まれの子との体格、体力面での差は埋まりませんよね?」(2歳男児のママ・30代後半)
早生まれであることも個性だと思って…
実は、日本での早生まれ研究は50年ほど前のものを最後に、真正面から取り上げたものはないそう。その理由を、早生まれであることが子どもの成長に大きく不利になることがないからとする専門家もいます。
子育て中のお母さんからの悩み相談など、子育てサポートを行っているNPO法人「リアルトレジャー」(横浜市)の代表・高岡夏美さんは、「私どもの団体にも早生まれのお子さんをもつお母さんから、悩みが寄せられます」といいます。子育ての相談では、まず「それは誰の問題で、誰が困っているのか」ということを聞くそうです。そして、「お子さんが困っていないのなら、のびのび育ててあげましょうとお話しします」とのこと。「子どもは、ほめられればそれをエネルギーにどんどん成長していきます。そんな子育てをしてほしい」とアドバイスしてくれました。
心理学者で発達心理学について教鞭をとる、大月短期大学兼任講師・川島洋氏は早生まれの子をもつ親の悩みに理解を示しつつもこういいます。「早生まれだからといって、まわりと比べて心配しすぎるのはその子のよさを見誤ってしまう恐れがあります。また、親が気にすることで、子どももそのことを気にしてコンプレックスになるほうが問題です。大切なのは、早生まれであることが発達の妨げになったり、ハンデになったりすることはないことを親が理解しておくことです」。
米紙「The New Yorker」では、昨年「Youngest Kid, Smartest Kid?(いちばん年齢の低い子がいちばん賢い子?)」(*1)という記事が掲載されました。
アメリカには「早生まれ」という概念はないのですが、そもそも、学年の区切りとなる基準日(子どもの誕生日)も、義務教育の就学年齢も州ごとにバラバラ。さらに、その年に就学するかどうかは、親の希望を優先することもできます。そのため、子どもの幼稚園入園を先延ばしにし、クラスメートとの競争に有利なように1年後の入園を選択する親が増えているそうです。
これに対し、2008年に発表されたハーバード大学の研究(*2)では、これが決してよい結果だけをもたらすものではないことを指摘しています。就園を遅らせることで逆に、学業不振、高校、大学の中退率の増加などを招くことがあるというもの。
さらに記事の中では、常に体格的に優っていて、学力面でも優位に立っていたら、退屈するようになり、さらに努力をしなくなってしまう。そして、その後の成長に大きな影を落とすことになると指摘しています。
就学年齢を遅らせることの影響について論じたものなので、日本での実態にはあてはまるものではありませんが、これに似たような事例を4月2日生まれの30代男性の口から聞きくことができました。
「小さいころから何でも人より早く、うまくできて、“神童”と呼ばれていました(笑)。自分でもすごく自信があって、ずっとその状態できて、高校3年のときに大学受験を経験しました。そこで志望校に不合格。そこで初めて、『俺は凡人だったのか』ということに気づきました。学年でいちばん上ということにあぐらをかいて、自分の実力を勘違いしていたのです」