“残念な夫”が招く?
「産後クライシス」を回避するには

ミキハウス編集部

共働きの夫婦は“ワーク・ワーク・ライフバランス”が大事!

最後に、共働きの夫婦が、産後クライシスを回避するコツについて聞いてみました。

「よく、世間ではワーク・ライフ・バランスという言葉が使われますが、働くパパ、ママの場合、それではうまくバランスがとれません。なぜなら、ワーク・ライフ・バランスの概念には、家庭での“ワーク”、つまり家事や子どもの世話がどちらに入るか定義されていないからです。だから私は“ワーク・ワーク・ライフ・バランス”が大事だと考えています」

“ワーク・ライフ・バランス”という言葉は一般的ですが、“ワーク・ワーク・ライフ・バランス”とは一体どういう意味なのでしょうか?

「ワークは他者のケアのためにする諸活動を指し、ライフは自分のための諸活動を意味するわけですが、この定義から考えると、自分のための食事を作ったり、掃除をしたりするのはライフですが、家族を含む自分以外の誰かのために行う家事はワークになります。家事や子育てには市場的な賃金が支払われないので、ライフを勘違いしている人が多いのですが、家事もれっきとしたワーク。この考え方に基づくと、外で働く妻と夫の生活は、それぞれにワーク(外での賃金が発生する仕事)・ワーク(家庭内での仕事)・ライフ(自分の生活のケア)・バランスとなるわけです」

たしかに働くママは、会社でのワークと、家庭内でのワーク、ふたつのワークの後に自分のライフがある感覚で、パパには“家庭内のワーク”という意識が残念ながらないことが、“産後クライシス”の原因かもしれません。

みなさん、いかがでしたでしょうか。共働きの夫婦もあれば、専業主婦の家庭もあり、一概にいうことはできないかもしれません。しかし、本来子育てはカップルの絆を深められる、とてもポジティブな営みのはず。お互いに“残念な夫”、“残念な妻”にならずに、子どもにとって幸せなパパ、ママでいられるよう、それぞれの夫婦での満足できるバランスを見つけたいものです。

 

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【プロフィール】
菅原ますみ(すがわら ますみ)
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授
国立精神・神経センター精神保健研究所、家族・地域研究室長などを経て、子どもの発達心理学の立場から、夫婦関係が子どもに与える影響などについて、多数の家族を20年以上にわたって継続調査するなどの研究を続ける。著書に『個性はどう育つか』(大修館書店ドルフィンブックス)、『ママというオシゴト』(主婦の友社)など。

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