妊娠中のママが知っておきたい食べ物のこと(後編) 妊婦が本当に注意すべき食材について

妊娠中のママが知っておきたい食べ物のこと(後編)
妊婦が本当に注意すべき食材について

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おなかの赤ちゃんは、ママが妊娠中に食べたもので成長します。元気な赤ちゃんの誕生を心待ちにしているママ・パパにとって、食べるものや飲むものをどう選ぶかは大切な問題です。

それでは、ママが口にするものについて、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。ミキハウス「出産準備サイト」では、妊娠中の食べ物について、東京女子医科大学の産婦人科医・堀部悠先生にお話を伺いました。

「妊娠中のママが知っておきたい食べ物のこと」は、前編・後編の2部構成。前編「妊婦が摂るべき栄養素と食事のお話」では、ママと赤ちゃんを結び付けている胎盤の仕組みや妊娠中に必要な栄養素など、妊娠中の栄養についての基礎知識を紹介しました。

後編の今回は、妊婦が口にすることで胎児に影響を与える可能性のある食べ物や飲み物、さらに食物が関係する妊娠中の疾患について取り上げていきます。

 

過剰摂取に気をつけるべき食品ってなに

妊娠中のママは、おなかの赤ちゃんの健康と成長のためにいつもより多くの栄養とエネルギーが必要です。妊娠適齢期の女性は、通常1日2000キロカロリーが基準ですが、妊娠中期には250キロカロリー、妊娠後期になると500キロカロリーを追加するべきとされています。とは言え、なんでも好きなものを好きなだけ食べればいいというわけではありません。食品の中には、量を制限するべきものもあるのです。それは、胎児に有害なものを含んでいる食べ物や飲み物です。

例えば、厚生労働省が平成18年2月に策定した「妊産婦のための食生活指針」(※)の中の「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項」では、マグロやキンメダイなどを食べると水銀を摂取してしまうことになるため注意を呼びかけています。

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「自然界にある水銀を含むプランクトンを小さい魚が食べ、その魚はもっと大きい魚に食べられる。そんな食物連鎖の中で、その頂点にいるマグロ、イルカなど大型の魚は水銀の含有量が他の魚より多く、キンメダイなど水銀を蓄積しやすい魚種もあります」(堀部先生)

水銀は胎盤のフィルターを通り抜けて、胎児に届けられてしまう有害物質の一つ。一般の方々は、水銀摂取を問題視する必要はありませんが、妊婦さんについては少々注意が必要です。

「胎児は水銀を代謝することができないので、ママの血液から送り込まれた水銀は胎児に蓄積してしまうからです。ただ週に一切れ程度食べるぐらいなら、医学的に危険なレベルではありません。また厚生労働省が発表している基準はひとつの目安ですが、かなり安全寄りに出しています。マグロやキンメダイは水銀を摂取することになるから妊婦は絶対に食べてはいけないというわけではなく、(厚労省の基準を目安に)妊娠前よりは量を減らす、くらいのスタンスで構えるのがよいかと思われます」(堀部先生)

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水銀の他にも、昆布やワカメに含まれるヨウ素やウナギやレバーなどに含まれるビタミンAなど、妊娠中は摂取量を控えるべきものがあります。ただ、こうしたものもあまり潔癖に摂取を拒む必要はないと堀部先生はいいます。

「そもそも、妊婦さんが摂取量を控えるべきヨウ素やビタミンAは、どちらも健康のために必要不可欠な栄養素でもあります。問題は量。妊娠中に大量に食べると胎児に影響が出る可能性もあるが、こうした食品を極端に避ける必要はない。栄養のバランスを考えていろいろな食品を取り入れた食事を心がける。これが正しいスタンスではないでしょうか

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飲み物に含まれるカフェインも過剰摂取は控えましょう。どうしてもコーヒーや紅茶、緑茶などが飲みたい人は、カフェインフリーのもので代用することで解決できます。また(カフェイン入りの)普通のコーヒーが飲みたい場合も、1日1~2杯までの量を守れば問題はありません。何度も言いますが、問題は量であって、ゼロにする必要はないのです。

ただ、アルコールについては神経を使う必要があるようです。

「妊娠したばかりの2週目までにアルコールを摂りすぎると流産の可能性があると言われています。ですから妊娠が分かった時点で、アルコール飲料は控えるようにしてください。ただ妊娠2週目では妊娠自体に気が付かないことも多いでしょうから、妊活中になったら、お酒を飲みすぎないようにしてください。また、アルコールは胎盤通過性があるので、妊娠中に飲んだアルコールは赤ちゃんに届いてしまいます。赤ちゃんはアルコールに対する免疫がないので、発達遅延や中枢神経障害を引き起こす恐れがあります。ただ、これだけ言っても(妊娠がわかってからも)飲まれる人はいます。たとえば上の子の妊娠中に飲酒して何事もなかったから、下の子の時も大丈夫だと安心される方もいる。自分が証明していると。ただ妊娠は一度ずつ違うもの。過信は禁物ですし、本当に妊娠中のお酒だけは控えていただきたいと思います」(堀部先生)

 

食品が関係する妊娠期特有の病気

妊娠とは、ママとおなかの赤ちゃんが二人三脚で出産と言うゴールに向かって走り続けるマラソンのようなもの。トラブルなく完走できればいいけれど、時には思いもよらない体の不調を感じることがあるかも知れません。

ここでは、ママが食べたり、飲んだりする食品によって起きがちな病気や、食べ方を工夫することで症状を改善できる病気を紹介します。それぞれ原因や対処法を知っておくと、妊娠期を不安なく、より健康にすごすために役立つと思いますよ。

注意すべきこと:食あたり
対処法:基本、生食は避けて加熱すること

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妊娠中は免疫力が低下しているので、食あたりには気をつけたいもの。普段何気なく食べているものでも、おなかをこわしてしまうこともあります。食あたりの原因となる細菌やウィルスの代表的なものに、生魚から感染する腸炎ビブリオ菌、鶏肉や卵などが感染源のサルモネラ菌、二枚貝などを生で食べた時に発症するノロウィルスなどがあります。
「どれもきちんと加熱することで死滅する菌なので、生のまま食べない注意が必要ですね。もう一つ気をつけたいのは、チーズや生ハムに含まれるリステリア菌です。これは感染力が強いものではありませんが、胎盤を通じて胎児に感染することがあります。胎児が感染すると早産などのリスクが生じますから、充分に加熱するよう気をつけていただきたいです」(堀部先生)

普段なら「おなかの調子が悪い」くらいで済むことでも、妊娠中に下痢や嘔吐で脱水症状になると、おなかが張って子宮収縮を引き起こしてしまう危険性があります。たかが食あたりと軽く考えずに、おなかの赤ちゃんのためにも食べ物はしっかりと加熱調理して食べるようにしましょう。

注意すべきこと:妊娠糖尿病
対処法:食事を少しずつ数回に分けて食べる

血液中のブドウ糖を「血糖」と言います。人間の体は、甘いものや炭水化物を食べて血糖値が上がると、すい臓からインスリンというホルモンを分泌します。インスリンの働きがあるから、臓器はブドウ糖を取り込んでエネルギーとして利用したり、蓄えたりできるのです。インスリンは血糖を処理してコントロールするために必要なもの。でも妊娠中は赤ちゃんにもブドウ糖を供給するため、インスリンの働きがおちて、糖のコントロールがうまくいかなくなることがあります。これが「妊娠糖尿病」です。

「妊娠糖尿病は、早産や胎児の発育不全を招きます。出産が終わると自然に回復するケースが多いのですが、糖尿病に移行することもあるので、母子ともに厳重な健康管理が必要です。まずは食事療法ですが、インスリン治療が必要になることもあります」(堀部先生)

ママたちの食の欧米化も妊娠糖尿病の一因と堀部先生は指摘します。食後に血糖値が上がりすぎないように、数回に分けて少しずつ食事を摂る「分食」は、妊娠糖尿病に効果的な食事法です。

 

注意すべきこと: 妊娠高血圧症候群
対処法:塩分を控える

「妊娠高血圧症候群」は、妊娠20週から出産後12週までに高血圧もしくはたんぱく尿を発症する病気です。ママにとっては血管障害などの原因となり、おなかの赤ちゃんにも血液が流れにくくなるので発育不全などにつながります。「妊娠高血圧症候群の原因は不明で、妊娠中の食生活で防げるものではありません」と堀部先生は言います。

「妊娠すると血液量が増えます。一方、血管の壁は弱くなりがちで、弾力がなくなってしまうと、増えた血液が血管を圧迫して高血圧症になります。血液は腎臓で再生されるのですが、高血圧症になると腎臓にも負担がかかります。妊娠高血圧症候群は、妊娠糖尿病と同じく出産すれば回復することが多いのですが、症状の改善には塩分を控えた食生活が効果的です」(堀部先生)

先生は、塩の代わりに唐辛子や減塩しょうゆを使った味付けをすすめてくださいました。だしや素材のうま味を生かした調理法も取り入れたいものですね。

 

妊娠中は食事も水分も十分に

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前編後編にわたり、堀部先生に妊婦さんと食事についてのお話を伺ってきましたが、いかがでしたでしょうか。最後に先生は「個人的な意見」と前置きして次のように話してくださいました。

「僕は、妊婦さんにはカロリーが大切だと思っているので、あれは食べてはいけないとか、あの栄養素を取らなければなどと頭でっかちに考えるより、好きなものを食べて、とにかく赤ちゃんにしっかり栄養を与えて欲しいです。もちろんジャンクフードよりはバランスの取れた食事が望ましいのですが、たくさんの情報を見聞きして考えすぎてストレスをため込んでしまったり、栄養を気にしすぎて過度な“食材制限”をする方が問題ではないかと考えているんです。そして、水分をしっかりとることですね。妊娠中は血液が増えるので、水分が必要です。水分不足で血液が濃くなると血栓のリスクも生じてしまうので、意識して水分を摂るようにしてほしいです」(堀部先生)

先生によると、「女性は精神状態が女性ホルモンで左右されることが多いので、せめて食事ぐらいはストレスなく食べた方がいいのでは」とのこと。ただでさえストレスを抱え込みやすい妊婦さん。先生の仰るように、「私は妊婦だから」とあまり考えすぎずに、自然体のままで普通の食生活を心がけることが一番なのかもしれませんね。

おなかの赤ちゃんのために、ママができることはたくさんあります。ただ、あれもこれもやらなければいけないと頭を悩ませるのではなく、参考程度に考えてくださいね。

それでは、ママと赤ちゃんが健やかな10か月間をすごせますように。

 

《参考資料》
※妊産婦のための食生活指針(平成18年2月/厚生労働省「健やか親子21」推進検討会)
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html

 

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