連載「高橋たかお先生のなんでも相談室」 
特別編(前編) 
「子育てはなるようにしかならない… 
だったら楽しみましょう」

ミキハウス出産準備サイト「高橋たかお先生の何でも相談室」でおなじみの、慶應義塾大学医学部の高橋孝雄先生のはじめての著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(マガジンハウス刊)が話題を呼んでいます。

そこで今回は、本を書かれたきっかけや思いなどについて先生に伺いました。前編では、子どもやママ・パパの代弁者である小児科医としての本づくりや読者の方々から寄せられた声などを紹介していきます。

 

子どもたち、ママ・パパ、そして小児科医の代弁者として

担当編集I(以下、I):まずは本書を出されるに至った経緯からお伺いできますでしょうか。

高橋先生:実はこちらで掲載された連載記事「子ども時代の『環境要因‐教育』について」がきっかけなんですよ。あの記事をきっかけに、数社の出版社からお声掛けいただいて、その中からご縁があった一社と本を作ることになったと。やはりあの記事の影響はすごく大きかった。こうして本にもなりましたし、それ以外にも様々なメディアの取材を受けることになりました。雑誌やラジオで著名人の方と対談するなんて、以前では考えられませんでした(笑)。

I:当サイトがきっかけになったのは、我々としてもすごくうれしいです。ちなみにあの記事はいまだによく読まれています。

高橋先生:それはよかった。実は、自分の考えていることを“一般の方々”に広くお話する機会は、出産準備サイトで連載を始めるまでは、まったくと言っていいほどなかったんです。もちろん医学者向けの本や論文はいくつも書いていますし、医学的なことについて講演会などでお話ししたりはしていました。それこそ、この世界に身を置いて36年間、ひとりの教育者として、後輩医師たちに経験を伝えていくことは自分の職務だと思っていました。一方、医学界以外の人、つまり一般のみなさまに「何か」を伝えられるなんて考えたこともなかったんです。

I:そうだったんですか。でも、先生の経験を「お医者さんだけのもの」にしているのはもったいないですよ(笑)。

高橋先生:ただ、自分の子育ては「父親として最低ランク」ですよ(苦笑)。そんなぼくが、医師の立場から、病気のことではなく、子育ての話を書かせていただいたわけですからね。そんなものが受け入れられるのだろうかという不安もありましたが、結果的に非常に多くの読者の方があの記事を好意的に受け取ってくださった。これはものすごい自信になりました。記事がネット上で広がり、それを見た出版社の方から本の話があった時、「ぼくも世の中に何か発信できるんじゃないか」と考えるようになったんですね。

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I:そして今ではいろいろなメディアで発信をされていると…素晴らしいですね。さて、ご著書を読ませていただいて、私も含めて子育て中のママ・パパには非常に学びの多い一冊だと思いました。先生としてはどんな目的で本をまとめられたのでしょうか?

高橋:物言えぬものの“代弁者”であろうと思い、まとめました。医学界では「小児科医は子どもの代弁者たれ」と、よく言われます。日本の医学界ばかりでなく、アメリカでも言われている言葉です。結局、医師はみんな患者さんから学んでいます。ぼく自身、36年間小児科医をやってきて、一番多くのものを教えてくれたのは、病気の子どもたちや、その子どもたちを不安そうに見守るママの存在でした。だから、医師は物言わぬ子どもたちとママ、パパのための代弁者でなくてはならない。彼らから学ばせてもらったことを発信したいというのがまずありました。

I:なるほど。

高橋:悩みや思いがあっても、大人ですら、それをみんなに伝わる言葉で表現できる人って少ないですよね。その気持ちを引き出すのが、汲み取るのが代弁者だと思うんですよ。子どもにとっては、どこがどう痛いのかを伝えることだって難しい。虐待を受けていても、何か辛くて何が怖いのか、実感がないので言葉にできないものなんですよ。

I:「言葉は心を越えない」って、有名なアーティストの歌の歌詞にありますけど、自分の気持を思っている通りに伝えることは本当に難しいですよね。子どもなら、なおさらです。

高橋:小児科医はそういう子どもに寄り添って、「痛くて泣いているんじゃないよね、ママに近くにいてもらいたいんだよね」とか「手術が怖いんじゃなくて、大人たちが自分そっちのけで相談しているのが悔しいよね」とか、気持ちを汲み取り分かり易いことばに翻訳して、まずは本人に返してみるんです。それで子ども自身が「そうなんだ!」と思ってくれたら、次は本人の代わりにママに伝えてあげることだってできる。そうやって本人すら言葉にできない、もしかしたらしっかり捉えきれていない本当の気持ちをつかんで、それを他者に伝えること…それが本当の代弁者だと思うんです。

I:よくわかります。

高橋:また僕は、小児科医の代弁者にもなろうとも思いました。とかく小児科医は誤解されがちです。「小児科医は忙しいのに実入りが少なくて大変ですね」「少子高齢化でなり手も少ないですよね」という人もいるけれど、実際に小児科を生業にしているぼくらからすると、まったくそんな風には感じていません。小児科医は、世の中の役に立っていると実感できる素晴らしい職業です。そんな小児科医たちの思いを代弁者として伝えたいと考えたんです。

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