本サイトの連載陣でもある小児科医の高橋孝雄医師のはじめての著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(マガジンハウス刊)が、子育て中のママ・パパばかりでなく、祖父母世代にも大きな反響を呼んでいます。そこでミキハウス出産準備サイトでは高橋先生に書籍インタビューを実施。前編では、出版のきっかけ、子どもやママたちの代弁者を目指しての本づくりや、読者の方々の声から浮かび上がる子育ての現実を紹介しました。後編となる今回は、本の内容を取り上げて、お話を伺います。
子育てに大切な「3つのこと」とは
I:ご著書は4つの章で構成されていますが、先生が読者の方に一番読んでもらいたいと考えたのは、どのあたりなのでしょうか。
高橋:第1章「子どもの個性、能力は親から受け継いでいる」は、遺伝子が子どもを守ってくれているという話です。医学的にも正しいし、事実が書いてあります。次の第2章「悩める子育て、いったいどうすればいい?」では、お母さんたちから寄せられる悩みに、「こうしたらいいんじゃないですか」と、ちょっと具体的に応えた形です。その中で、ぼくが一番時間をかけて大切に書いた部分は、第3章なんですよ。
I:第3章は「親が心がけたい、子育てに一番大切なこと」というタイトルがつけられていますね。
高橋:ここで、子どものために育んであげて欲しいものを3つ挙げました。「誰かの気持ちに寄り添える『共感力』、あらゆるシーンで自分のことを自分で決める『意思決定力』。さらに生まれてきてよかった、自分は自分でいい、と感じる『自己肯定感』。これらが、ひとのしあわせを守る3つの勾玉(まがたま)のようなもので、これさえあれば子どもたちはどんな苦境にも、さまざまな困難にも立ち向かっていけるだろうと思っています。

I:「共感力」と「意思決定力」に「自己肯定感」ですね。なぜこの章が“オススメ”なのでしょうか?
高橋:理由は単純です。“こうやるのが正しい”という答えがここには書いてないからです。いくつかのケースを挙げて、「ぼくはこう思う」と書いただけ。自己肯定感にしても、共感力にしても、意志決定力にしても、客観的に数値化できるものかと言えば、全然そうではないし、そんなものが本当にあるのかどうかすら証明はできません。ただ、そういうものがあると考えると、子育ての原則とか、良い/悪い、やっていい/やっていけない、ということがすごく理解しやすくなると思うんです。もっと言うと、この章を読んだお父さん、お母さんが自分たちの家庭の状況に合わせて、想像力を働かせて“応用”してくれたらいいなと。