新米ママのための基礎知識「乳腺炎」
専門医が解説する原因と症状と対処法

厚生労働省が2015年に行った調査(※)によると、母乳を与えているママは、ミルクと母乳を合わせて与えている混合栄養も含めると、生後1か月で96.5%、3か月でも89.8%にのぼります。母乳にするかミルクにするか、もしくは併用して育てるか――授乳のスタイルはママの母乳の状況(出る方、出ない方それぞれいらっしゃいます)、勤務スタイル、考え方など様々な理由で決まっていくものですが、今の日本では多くのママが何らかの形で母乳育児を実践されているようです。

そこで今回のテーマは「乳腺炎」。授乳が始まると、思いもよらないトラブルが起きることがありますが、おっぱいが腫れて痛む乳腺炎は代表的なものと言えます。本記事では、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典先生に乳腺炎についてお聞きしました。

 

乳腺炎にはふたつのタイプがあります

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現在の日本では多くのママが(ミルクとの併用を含めて)母乳育児を実践されています。一方、母乳育児には大小問わず“トラブル”がつきもの。中でも乳腺の炎症によって腫れや痛みを感じる乳腺炎は産後3か月までに10人に1人、全授乳期間では3〜5人に1人と、多くのママが経験する疾患です。これから出産を迎えるママにとっては、気になる話ですね。

母乳は血液から作られます。乳房の中の毛細血管から血液が小葉という部分に取り込まれて母乳ができます。小葉で作られた母乳は乳管を通って乳頭に達し、赤ちゃんに吸われて、成長のエネルギーになります。乳腺とは小葉と乳管を合わせた部分を指します、

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一般的には出産が終わり、赤ちゃんがママの乳首を吸って乳腺が刺激されると、母乳が分泌され始めます(産前から母乳が出るかたもいらっしゃいます)。この乳腺に母乳がたまって腫れたり、炎症を起こして詰まってしまうのが乳腺炎です。母乳育児をがんばる多くのママたちを悩ませる乳腺炎ですが、その種類は「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2種類があります。それぞれ原因別に対処法を、産婦人科医の吉村泰典先生に教えていただきましょう。

 

■「うっ滞(うったい)性乳腺炎」について

「粘度の高い初乳は乳管に詰まりやすい上に、母乳を分泌するために拡張した血管やリンパ管に乳管が圧迫されたりして、母乳の流れが悪くなり、『うっ滞性乳腺炎』を引き起こすことがあります。『うっ滞』とは血流などが静脈内などに停滞した状態のこと。このタイプの乳腺炎は、産後2~4日で発症することが多く、症状はおっぱいが赤く腫れて硬くなり、熱を持ちます」(吉村先生)

授乳を始めたころに両方のおっぱいが硬くなるようなら、「うっ滞性乳腺炎」の前兆かもしれません。マッサージで血液やリンパ液の流れをよくすると同時に、赤ちゃんがおっぱいをくわえやすくなるように少し搾乳して、乳輪付近を柔らかくしてから与えるといいようです。

「産後数週間は赤ちゃんが頻繁におっぱいを吸うことで母乳の量が増えてきます。授乳後には残ったおっぱいを搾乳しておくと、母乳もよく出るようになるし、乳腺炎の予防にもなりますよ。またママが授乳に慣れ、赤ちゃんが大きな口を開けておっぱいに吸い付くようになれば、このタイプの乳腺炎は自然と治ることが多いです」(吉村先生)

 

■「急性化膿性乳腺炎」について

急性化膿性乳腺炎は、人間のからだに存在して健康維持に役立っているブドウ球菌や連鎖球菌などの常在菌が、授乳の際にできた乳首の傷などから乳管やその周辺に侵入して炎症を起こすものです。突然おそってくる悪寒や高熱が特徴で、授乳ができなくなるほどの痛みを感じることもあります。

「『急性化膿性乳腺炎』は、どちらかのおっぱいの上半分の外側に発症することが多いものです。急におっぱいにしこりができて痛み始めたら、できるだけ早く医師に相談してください。熱を下げて炎症を静めるために、解熱剤や抗生剤を処方されるでしょうから、授乳はしばらく控えた方がいいこともあります」(吉村先生)

慣れない育児に奮闘するママの疲れや睡眠不足が炎症を悪化させることもあるようです。おっぱいに異常を感じたら、パパや周りの人にも協力してもらってなるべく体を休めて、悪化しないように心がけたいものですね。

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