生まれてからおおよそ1年で体重は約3倍、身長は1.5倍ほどになる赤ちゃん。言葉を発したり、たっちができるようになるなど発達も目覚ましく、人間は生後1年間で最も成長すると言われています。
この時期の赤ちゃんの栄養源は母乳や粉ミルク。著しく成長を遂げる赤ちゃんのからだをつくる母乳と粉ミルクとは、いったいどのようなものなのでしょうか? 今回の特集記事では、赤ちゃんの健やかな成長のために知っておきたい母乳と粉ミルクについて、専門家にお話を伺っていきます。
まず登場していただくのは、東京女子医科大学新生児医学科教授の和田雅樹先生です。新生児医療の最前線で活躍する先生に授乳について教えていただきましょう。
母乳でも粉ミルクでも、しっかり与えれば赤ちゃんは問題なく育ちます
--最近は世界保健機関(WHO)などが中心になって世界中で母乳育児を推奨しています。どうして母乳は赤ちゃんに良いとされているのでしょうか?
和田先生:その前に大前提として申し上げておきたいことがあります。それは赤ちゃんが必要な栄養をきちんと摂ることができて健やかに成長するなら、母乳か粉ミルクかは大きな問題ではないということです。母乳をあげたいけど、思うように出ないママもいるでしょうし、外で働いている方であれば粉ミルクが中心になる場合もあるでしょう。前者の場合は、「どうして母乳が出ないんだろう」と自分を責めるママもいらっしゃるかもしれないけど、そんなことを思う必要はまったくありません。母乳と粉ミルク、どちらかがよい・悪いではなく、ママ・パパが育児に負担を感じない方法を選択すればいいと思います。
--おっしゃる通りですね。改めてお伺いいたしますが、医師の立場からみて、こと健康面からいうと母乳でも粉ミルクでもそれほどの違いはないと?
和田先生:厳密にはないわけではありませんが、神経質になるほどの違いはないと考えていただいてよいかと思います。たとえば昭和40~50年代の日本では、粉ミルクは栄養価が高いと奨励されていましたよね。では、その頃に生まれ、粉ミルクで育った人は、その後の成長や発達、または健康に支障をきたしたかというと、そうではありません。それに粉ミルクの品質は、年々より良いものになっているわけですから、今のママ・パパ世代が粉ミルクで育てることに、栄養面での不安を感じる必要はないと言っていいでしょう。