母乳は赤ちゃんのための“オーダーメイド食” 〜授乳の話〜(前編)

2019.02.07

ミキハウス編集部

母乳の成分は、必要に応じて成分が変わっていきます

--そもそもの話ですが、母乳はどのような成分でできているのでしょうか?

和田先生:たんぱく質と脂肪、炭水化物、それらの働きを助けるためのビタミン類とヨウ素などの微量元素が含まれています。不思議なことに同じ哺乳類でも牛や馬など種が違うと、乳の成分の割合が違うんですよね。母乳は人間の赤ちゃんのために長い年月をかけて進化してきたものですから、人間の発育にいちばん適した成分になっているのは間違いないでしょう。

--なるほど。赤ちゃんの成長に最適の栄養ということですね。

和田先生:はい。母乳の素晴らしいところは、完全に“オーダーメイド”だということ。赤ちゃんの成長スピードにあわせて、成分も微妙に変わっていくんです。たとえば出産後1週間ぐらいまでの母乳は“初乳”と呼ばれ、たんぱく質や免疫力を補う成分が多く含まれているために黄色っぽい色でドロッとしています。初乳には、(この時期の母乳にしかない)抗体などの成分も含まれているので、産後1週間ぐらいは少しでもあげられるといいですね。もちろん出る出ないの個人差はありますから、可能な限りで結構です。

--成長にあわせて成分が変わるなんて、それも神秘的ですね。

和田先生:そうですよね。その後1週間から2週間経って、“移行乳”と言われるものになります。少しずつ色が薄く白っぽくなってくるのが特徴です。だいたい1か月ぐらいで分泌が安定して“成乳(成熟乳)”になり、脂肪が減って糖質が増えます。成乳はさらっとしていて甘味が増すのが特徴です。また母乳の特徴として、成乳でも一回の授乳の中で飲み始めと飲み終わりの時の成分が違うことも分かっています。おそらく徐々に飲みやすくなるように調整されているのではないかと考えられるんですよね。

--まさにオーダーメイドですね。すごいです。

和田先生:はい。ちなみに初乳の粘度の高さは、生まれたばかりの赤ちゃんでもむせずに飲めるという利点もあります。ただ逆に、乳腺がちゃんと開通していないママにとっては詰まりやすいものでもあります。そのために赤ちゃんにこまめに吸ってもらうことが重要です。その刺激でママのからだのホルモンバランスが変化して、子宮の回復が促されるという効果もあります。ママも赤ちゃんも慣れていないので大変だと思いますが、できるだけ頑張って与えてもらいたいですね。

--授乳は赤ちゃんとママの共同作業ということですね。ちなみに「母乳は欲しがるだけ与えていい」とよく聞きますが、飲みすぎて肥満になってしまうという心配はないんでしょうか。

和田先生:赤ちゃんは生後2か月ぐらいまでは満腹感を感じにくいと言われていますが、生後すぐは母乳の分泌量が多くないので、飲みすぎることは基本的にありません。粘度が高いために、たくさん飲む前に赤ちゃんが疲れてしまうのも一因でしょう。また、その後、飲みやすい移行乳になっても、飲みすぎをそこまで気にする必要はありません。赤ちゃん本人が満足するまで、飲ませてもらって大丈夫です。

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