--母乳には赤ちゃんの成長に必要なものがすべて含まれていると考えていいのでしょうか。
和田先生:基本的にそう考えても差し支えないと思います。しかしながら、足りないものもある。その代表格が出血を予防するビタミンKです。大人なら腸内細菌が作ってくれるものですが、赤ちゃんには大腸菌が少なく、母乳中のビタミンKの濃度も非常に低いことが分かっています。ですから私たちは、母乳育児の赤ちゃんについては、生まれた直後と退院前、それに1か月検診の時にビタミンKを投与しています。
--“ケイツーシロップ”と言うお薬ですね?
和田先生:そうです。小児科学会では母乳育児なら、生後3か月までは週1回飲ませることをすすめています。ママが緑黄色野菜や納豆などビタミンKを多く含む食品を食べるようにすると、母乳を通じて赤ちゃんにも与えることができますよ。
--ママが食べたものが血液となり、母乳になるわけですから食生活にも気をつけたいですね。
和田先生:そのとおりです。あと最近問題になっているのはビタミンDの欠乏です。これは紫外線に当たることで作られるビタミンで、骨を丈夫にします。ところが女性たちが美白に関心を持つようになってから、母乳中のビタミンDが少なくなり、その結果赤ちゃんの骨の発育に問題が生じる可能性が指摘されています。こうした現状を補うために、粉ミルクはビタミンKとビタミンDが強化されている商品もあるようですね。このあたりの栄養がしっかり含まれているのは、粉ミルクの強みです。
--そういう意味では、粉ミルクとの併用も理にかなっていると言えるかもしれませんね。他に授乳中の栄養で気をつけたいものはありますか?
和田先生:基本は食事をバランスよくきちんと食べるということでしょう。赤ちゃんのお世話で大変な時期ですから、外食でもファーストフードでも、出来合いのおかずでもいいのですけれど、偏りすぎないようにいろいろな食材を食べていただきたいと思います。
--最近のママたちの中には、産後すぐにスリムな体型に戻したいと思って授乳中にダイエットする方もいると聞きます。
和田先生:ママの食事は母乳の成分に確実に影響しますから、食事や水分を制限する過度なダイエットは赤ちゃんのためにも避けた方がいいでしょう。ママのからだも子宮などが回復していく大切な時期です。授乳中は充分に栄養を摂っていただきたいですね。