太古の昔から、ママたちは自分のからだの中に芽生えた小さな命を育て、出産し、成長を見守って、次の世代をこの世に送り出してきました。
特集「産前産後のママのからだ」の最終回となる第4部は、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典医師にこれまでの内容を総括していただきます。妊娠中のママのからだはどうあるべきか、出産による変化やダメージを最小限にするためにできることなど、日本を代表する産科医のお話を伺いましょう。
妊娠中は適切な体重増を目指して、適度に太ってください
厚生労働省が発表した平成29年度国民健康・栄養調査結果(※1)よると、BMI(体重÷身長÷身長であらわされる体格指数)が18.5以下の「やせ」の女性は、20代で21.7%、30代で13.4%となっています。昭和58年のデータでは、20代が13.4%、30代になると7.7%でしたから、この40年弱の間に女性のやせ傾向は顕著になっているようです。
「昔の産科医は、妊娠して太りすぎるプレママが高血圧や糖尿病になることを心配したものです。ところが最近はもともとやせている上に、妊娠しても太りたくないという女性が多くなっている。その結果、赤ちゃんの成長に影響が出ているという研究も発表されています」(吉村先生)
(第1部「妊娠中の体重はしっかり増やすのが『正解』 その理由とは」)
おなかの赤ちゃんの成長とともに、ママの子宮は大きくなり、羊水も増え、赤ちゃんに栄養を届けるための血液量も妊娠前に比べて40~50%増えていくそうです。胸も授乳に備えて乳腺などが発達し、大きく重たくなってきます。普通の体格のプレママなら、出産までに体重が7〜12㎏増えるのは当たり前のことのようです。
そして出産。ママのからだはかつてない変化を経験することになります。「赤ちゃんが3㎏、子宮は1㎏、胎盤や出血でだいたい1㎏ぐらいなので、出産直後の体重は出産前より5~6㎏減っているでしょう」と吉村先生。
その上、母乳を与えはじめたママは、赤ちゃんの分もエネルギーを摂らなくてはなりません。厚生労働省が策定した基準(※2)でも、普通に活動する18〜49歳の女性の摂取カロリーは一日1950〜2000㎉ですが、授乳中はそれに350㎉をプラスする必要があるとされています。ミルクの場合でも、赤ちゃんのお世話で体力を使うので、妊娠前と同じように食べていると体重は増えていきません。
吉村先生によると、「産後6〜8週の産褥期が過ぎると、ママのからだは医学的には妊娠前の状態に戻っていく」ということですが、わずか10か月で体重が7~12㎏も増えて、腹部を中心に大きくふくらんでいたママのからだは、腹筋も皮膚もすぐに元に戻るというわけにはいかないようです。