【小児科医・高橋孝雄の子育て相談】
生まれてから“最初の12か月”を楽しむべき理由

小児科医 / 高橋孝雄先生

子どもの成長のペースは個人差があります。そのことで思い悩んだり、不安に感じたりするママ、パパもいることかと思いますが、果たして親はわが子の成長を見守る際、どんなことに注意し、子どもの「どこ」を見ていればいいのでしょうか?
小児医療の最前線で多くの子どもと接している慶應義塾大学医学部の小児科教授の高橋孝雄医師に、編集部スタッフのKがお話をお聞きしました。
(本記事はミキハウス出産準備サイトにて2017年3月1日に配信された記事の再掲となります)

高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 

専門は小児科一般と小児神経。
1982年慶應義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

成長の目安は身長、体重のほか、頭囲も

成長の目安は身長、体重のほか、頭囲も

スタッフK(以下、K):赤ちゃんの成長の早さには本当に驚かされます。何もできない状態で生まれてきたのに、首がすわり、体がしっかりしはじめ、1年が経とうとする頃には、歩くことができるようになる子もいます。発達をうながすために、親は何をしたらいいのでしょうか?

高橋先生:まずお話しておきたいのは、1年ではなくて12か月ですね。大人にとっての変化は1年単位で感じられるものかもしれませんが、子どもは、特に生まれてからの1年間の赤ちゃんは、1か月ごとに成長し、発達していきます。5か月と8か月、10か月と12か月では、驚くほどの変化がありますから。

K:おっしゃる通りですね。

高橋先生:また、赤ちゃんに起こる変化には「成長」と「発達」があり、これらは似ていますが違うものなんですね。お父さんとお母さんは、これらを両方意識しながら育てていく必要があります。

K:なるほど。「成長」と「発達」はどのように違うのでしょうか?

高橋先生:はい、成長というのはその名のとおり“長くなる”こと、大きくなることですね。親はその都度、背が伸びたな、体重が増えたかな、などとても気になるところですね。でも、頭が大きくなる、ということも大変重要なことなのです。身長、体重、そして頭囲。この3つの数値が正常な範囲にあること、つまり“成長曲線”に沿って増えていれば一安心だというわけです。

K:身長、体重はよく聞きますが、頭囲も重要な要素なのですね。

高橋先生:そうです。なぜなら、頭囲の増加は脳の発達と密接に関連しているからです。ところで、頭の大きさは遺伝的要因、つまり生まれながらの個性で決まる場合がほとんど。食事の内容など、環境の影響を一番受けやすいのが体重ですが、身長や頭囲は、実は生まれる前から遺伝的な体質によって決められている部分が大きいのです。つまり、ご両親の背が高ければ、お子さんも背が高くなる可能性が高く、ご両親の頭が大きめであれば、お子さんの頭囲も大きくなる可能性が高い、ということです。

K:なるほど。

高橋先生:例えば、発展途上国などで飢餓によってひどい低栄養になった子どもたちでも、特に頭囲については、大きな影響を受けずに、守られることが知られています。さらに、妊娠中に胎盤の働きが低下して胎児が低栄養の状態になっても、生まれてくる赤ちゃんの頭囲は比較的正常に保たれていることが知られています。

K:そうなんですね。知りませんでした。

高橋先生:いずれにしても身長、体重、頭囲などの数値が正常に推移していると、順調に“成長”しているということです。これが、成長の話です。次に発達について説明します。“成長”により体が大きくなり、そこに「機能」が宿る過程が“発達”です。生まれたての赤ちゃんの脳は直径10センチくらい。頭囲でいうと33センチくらいですが、これが1歳の誕生日頃には46センチくらいまでに大きくなっていきます。大きくなった脳には、大事な神経の機能が宿っていくのです。

K:成長するにつれ発達するというわけですね。

高橋先生:そういうことです。逆に言うと、“名は体を表す”ではありませんが、頭の形、大きさなど、成長の異常が発達の異常の表れであることがあります。とはいえ、成長や発達には大きな個人差がございますので、頭の大小や形の特徴を、あまり気にする必要はありません。先ほど述べましたように、生まれつきの体質の表れであることも多いので。

K:心配があれば先生に相談することが大切ですね。

高橋先生:ええ。一般的に、お父さん、お母さんが子どもの成長についていちばん気にしているのは体重、それから身長ですが、頭囲はあまり気にされませんよね。

K:頭囲は小さいほうが「小顔」でいいかな、なんて思う方もいるかもしれませんね。大人の世界では「小顔」って、褒め言葉ですし(笑)。

高橋先生:ハハハ、そうですね。実は子どもの成長や発達にとって、ちょうどいい脳の大きさ、ちょうどいい頭囲、つまり正常範囲というものがあります。これをデータ化したのが母子健康手帳にもある成長曲線の中の頭囲曲線です。このグラフはとても重要です。首から下も確かに大事だけど、神経発達の機能が宿るのは脳ですから。脳に機能が宿って、立ち上がり、おしゃべりをするようになるのです。

K:そう聞くと俄然気になります……。目安となる頭囲ってどれくらいなのでしょうか?

高橋先生:生後4か月で、だいたい頭囲40センチあることが目安だと言われています。

K:「4か月で頭囲40センチ」と覚えればいいですね。発達面ではいかがですか?

高橋先生:すべての発達には個人差や誤差があるので、まず、そのことを良くご理解いただきたいと思います。その上で、たとえばのお話をさせて頂くと、赤ちゃんには「声を出して笑う」という発達指標があり、生後4か月を過ぎても声を出して笑わなかったら、発達が思うように進んでいない可能性についてチェックをしても良いかも知れませんね。また、たまに「ウチの子は、生後1か月でハハハって笑ったのよ」ってお母さんもいますけど、そんなに早く声を出して笑う子はいませんよね(苦笑)。残念ながらお母さんの勘違いでしょう。発達につきものの個人差を経験から良く知って、その上で発達の遅れや異常に早く気付くことは、なかなか難しいことです。ここが、ベテラン小児科医の腕の見せ所でしょうか(笑)。

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