【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.4 
相談「学習障害のわが子が受験…親はどうすればいいですか?」ほか

小児科医 / 高橋孝雄先生

幼稚園や保育園はどんなところに行かせるべき?

幼稚園や保育園はどんなところに行かせるべき?

【相談】
3歳の子どものことです。
次が年少さんです。
幼稚園入園予定ですが、どの幼稚園に行かせるか悩んでいます。
私は自由なカリキュラムで子どもを尊重してくれる園がいいと思っています。
ですが主人は、カリキュラムがしっかりした、体操や音楽や絵画に力を入れているところがいいと。
たしかに子どもにいろんなことを体験させてくれる幼稚園もいいのかと思いますが……。
先生は幼稚園選びについて、どのようにお考えですか?
(みーくんまま)

高橋先生:これもよくある質問です。結論から言うと、どちらでもいい(笑)。保育園がいいか幼稚園がいいかというのもいろいろです。子育て中の女性小児科医でも、お子さんを保育園に通わせる人もいれば、時短勤務で幼稚園に行かせている人もいます。答えなんてないですし、夫婦間で意見が違って当然ですよね。おふたりの意見が違うというのは悪くない。いいじゃないですか。

I:悩まれていることがいいことだと。

高橋先生:意見の違いはあっていいと思います。お子さんが精神的に病んで病院に来るような家庭を見ていると気づくのですが、そういうご家庭のご両親は、割と同じ方向を向いているんです。両方とも厳しかったり、両方とも無頓着だったり。一方、両親がある程度が違う考えを持っていると、子どもはその“隙間”で割と自由に深呼吸出来て、動ける。

I:両親の考えの違いが、子どもにとっての隙間になると。

高橋先生:もちろん程度問題だし、例外もあるかと思いますけど、今回の相談者の方くらいの「意見の違い」は、子どもにとって悪いものではないと思います。自由な幼稚園に行かせたいお母さんと、カリキュラムがしっかりした幼稚園に行かせて小学校入学に備えたいというお父さん……うん、良いバランスだと思います。注意しなければいけないのは、子どものいる前で親が喧嘩をしない。そうなると子どもが板挟みになっちゃいますからね。それさえしなければ、このような悩み、幸せな家庭の証だと思います。

【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.4 相談「幼稚園や保育園はどんなところに行かせるべき?」

I:ちなみに自由な幼稚園とカリキュラムガチガチの幼稚園では、一長一短もちろんあると思いますが、先生としては、どちらの方が良いとお考えです? それとも本当にその子に合わせて行かせた方が良い、としか言えないものでしょうか。

高橋先生:そこは、何とも言えないのですが……特定の幼稚園の名前を出すと、僕は入園希望者がとても多い青山学院幼稚園の園医をやってるんですが、あそこ、思いっきり自由なんですよ。素晴らしいと思います。受験があったり厳しい側面もありますが、行ってみるとカリキュラムはほぼ遊びなんです。その遊びがまた結構ワイルドなんですね。段ボールを使っていろんなもの作ったり、のこぎり、くぎ、かなづち、水たまり、動物との触れ合い。一見、危ないと思われるようなものも園内にいっぱい置いてあります。

【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.4 相談「幼稚園や保育園はどんなところに行かせるべき?」

(※写真はイメージです。青山学院幼稚園とは関係ございません)

I:すごく自由な幼稚園なのですね。

高橋先生:それを自由と言うのであれば、僕は自由なカリキュラムというのは素晴らしいと思います。なぜなら、そこにいる子どもたちが、みんな生き生きしているから。一方で、しっかりしたカリキュラムのある幼稚園、僕はあんまり存じあげないんですね。だから良い悪いというのはなかなか言えない。

I:なるほどなるほど。良いも悪いも実態をあまり知らないから、軽々には言えないと。

高橋先生:ええ。ただ、しっかりとしたカリキュラムがある幼稚園に入れて、子どもを一体どういう風にしたいのか? ということは一度考えて欲しいと思います。小学校に上がる前に、ひらがな全部書けて、足し算が出来ることを目指したい。もし、そこを目指すのであれば、どちらかと言えば時間とお金の無駄かも知れないと思うんです。

I:はっきりとおっしゃるのですね(苦笑)。では、やっぱり自由な幼稚園の方がいいとお考えですか?

高橋先生:いや、そこもはっきりは言えなくて。規律がある、しっかりとしたルールがある、そういう幼稚園で、そこに集まってくる子ども達と一緒にすごす時間――そこに実は貴重なものが隠れている可能性だってありますよね。なので、どちらのタイプの幼稚園の方がいいということは、やっぱり言えないと思います。

I:相談者の方からの補足ですが、こちらのママもカリキュラムがしっかりしてる園=色んな体験も用意してくれていることも気になっているようです。幼稚園によっては体操ですとか、芸術・アート、音楽とか、それぞれテーマがある幼稚園、何かに特化した幼稚園もありますよね。そういうところも良いかもな、と悩まれているのかもしれません。

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高橋先生:実は私の自宅の近くにある保育園がそういう“テーマ”を提供するところだったんです。四季折々に、餅つきから始まって、大根を自分で収穫しに行ったり。園児がみんな背中に大根を一本背負って帰ってくるんです。ありとあらゆることを体験することに重きを置いているんですね。それはそれで良いですよね。両方入れてあげたいぐらいです(笑)。

I:たしかに(笑)。でもそれは無理なので……やっぱり難しい問題ですねぇ。

高橋先生:そうですね。でも、シンプルに考えて、これってフランス料理がいいか中華料理がいいか、と悩んでいるようなもの。どちらも美味しいんですよ。でもどちらか一方しか選べないなら、もうどちらでも良いのではないでしょうか、としか言えないですよね。3歳だからまだ子ども自身は選べないですから。でも悩みごとの主役は子どもですね。

I:お母さんもお父さんも、目指している思いは共通していますよね。お子さんのことをちゃんと本気で考えて、議論してぶつかるっていうのは、幸せなことかもしれないですね

高橋先生:本当にそう思います。とても幸せな悩みですよ。


今回は高校受験を控える中学生のママ、そして幼稚園選びに悩むママと幅広い年代からの悩みにお答えいただきました。悩みの内容は違うとはいえ、いずれも共通しているのはわが子を大事に思う親心。そんななかで親ができることはなにか……悩みは尽きませんが、とにかく親は子どもを思い、子どもに寄り添い続けるしかありません。最後は、子どもたちがそれぞれの意志と希望で、自らの道を切り開いていくはず。親はそれを見守るしかないのかもしれませんね。

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