【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.1  相談「コロナ禍は、子どものコミュニケーション能力に影響する?」ほか

【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.1 
相談「コロナ禍は、子どものコミュニケーション能力に影響する?」ほか

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“今、日本一相談したい小児科医”と言われる、慶應義塾大学医学部教授で小児科医の高橋孝雄先生。本連載をきっかけにさまざまなメディアで活躍、2冊出版した自著の累計発行部数も10万部を超え、ますます注目を集める存在となっています。そんな高橋先生を迎えて、出産準備サイトと本屋「B&B」がコラボして、子育て相談イベント「いま、日本一相談したい小児科医高橋孝雄先生の〈子育てアレコレ相談室〉」をさる11月25日に開催しました。参加者が口をそろえて「素晴らしい内容だった」と絶賛した同イベント。出産準備サイトで、その様子を一部レポートいたします!

 

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<プロフィール>
高橋孝雄(たかはし・たかお)
慶應義塾大学医学部 小児科主任教授 医学博士 専門は小児科一般と小児神経
1982年慶應義塾大学医学部卒業後、米国ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院小児神経科で治療にあたり、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で現在まで医師、教授として活躍する。趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

 

コロナ禍で子どものコミュニケーション能力の発達に不安が…

担当編集I(以下、I):さて今回のイベントは、参加希望者の方からリアルな子育てのお悩みを集めております。時間が許す限り、できるだけ多くの相談にお答えいただければと思っております。

高橋先生:はい、よろしくお願いします。

I:では早速、お一人目のご相談です。

Q1

高橋先生:まず結論から申しますと、子どもたちの将来を考えたときに、(コロナのせいで)発達が遅くなったり、コミュニケーション能力に乏しい人間に育ってしまうなんてことはないと僕は考えます。なぜなら、大人以上に子どものレジリエンス(=回復力)、苦境に打ち勝って生きていく力がすごいから。語弊を恐れず言えば、これくらいでは、子どもの未来を大きく変えることはありません。

I:それを聞くと安心できますね。

高橋先生:レジリエンスは、大人より子どもたちの方がずっと高いので、今の社会状況がきっかけで数年後に子どもたちの発達やコミュニケーション能力に影響を及ぼすことは考えづらいし、そこまで心配する必要はないと思います。ただ、今の質問で面白いなと思ったのが、このお母さんは、ベビーマッサージに通っていらっしゃっていて、そこにいるのは生後3か月から1歳くらいのお子さんであると。相談者のSummergirlさんは、その場で泣いちゃう子が多いと助産師さんに言われたことで、人に会うことに慣れていない赤ちゃんがコロナのせいで増えたからでは? との“気づき”があったと。

I:ええ、小さい子どもたちなので、家族以外の人と触れ合えていないため、そういう風になっているのではないか、と不安がられているようですね。

高橋先生:そもそもですが、生後6か月を境に、赤ちゃんっていうのはガラっと変わるんです。ざっくり言うと、生後6か月までは、赤ちゃんは人見知りをしません。脳の中の扁桃体というところがまだ未熟なので「怖さ」を意識できないんですね。ですから生後3か月からベビーマッサージに行ってらっしゃるということですが、生後6か月未満の子どもたちに関しては、その場で泣く子はあまりいないと思います。

I:つまり泣いているのは生後6か月以上のお子さんではないかというご指摘ですね。

高橋先生:はい。これは病院でも同じです。病院に連れて来られる子も、生後6か月ぐらいより小さい子であれば割と簡単に診察させてくれるんですね。抱っこしてあげても喜んで抱っこされる。しかし6か月以降から特に1歳前後くらいまででしょうか、大体“人見知り”がひどいですよね。で、これはベビーマッサージだろうがどこだろうが、あるいはコロナが流行していようがいまいが関係なく、しっかり泣くべき時期だと思います。人には緊張感や恐怖心を持って、自分を守る必要がありますから、泣くというのは、これは正常な発達の反応。ですので、新型コロナの影響で、(家族以外の)人と会う機会が減っているからと、ご心配なさっていると思いますが、少なくとも生後半年から1歳すぎまでのお子さんが、人見知りとか新しい場所に対して泣いてしまうのは、ごく自然なこと。まったく心配される必要はないと思います。

I:なるほど。加えて先程おっしゃったように、コロナに関しては、大きな社会的インパクトはあるものの、子どもの将来への影響はあまり心配する必要がなく、そもそも子どもには「そんなこと」では負けない強さがある、ということですよね。

高橋先生:はい。子どもが必要としているコミュニケーションすべき相手というのは、意外に少ないんです。まずはお母さん、お父さんですよね。僕は(母子家庭でしたので)お母さんだけでしたが。それから兄弟、姉妹がいれば、なお良いですね。

I:家庭内でしっかりコミュニケーションできていれば問題ないと。

高橋先生:基本的にはそうです。さらに時々お友だちと…それも外で一緒に遊ぶ。それぐらいがあれば子どもたちがコミュニケーションを育む上では十分ですね。

I:コロナで人と会いづらくても、家庭内のコミュニケーションを疎かにせず、またお友だちとも感染対策をしながら、しっかりと外で遊んでおけば、なにも心配することはないということですね。

高橋先生:そういうことですね。この状況ですから感染対策は必要です。ですが、子どもたちも外遊びをしてはいけない、お友だちと一緒に遊んではいけないなど、非常に大きな制限を受けているわけですけど、過剰になるのはよくないと個人的には思っています。感染に気をつけながら、しっかり子ども同士で遊ばせることはとても大切なことだと僕は考えますね。

I:子ども同士で遊ぶことから学ぶことは多いですからね。ありがとうございました。それでは次の相談にいきましょう。

リスク回避の“先回り育児”は子どもに悪影響ですか?

Q2

高橋先生:なるほど、お子さんが間違ったことをする前に先回りをして、事前に注意をしておいてあげる。失敗がないようにしてあげるという子育ての方法ですね。「先回り育児」――これは今思いついた言葉ですが――は、ある意味でお母さんが、お子さんを大事にしている、温かい気持ちで育児をしている証拠だと思います。それは全然悪いことではないです。ただその一方で、長女のことを“慎重なタイプの子ども”にしてしまっている面もあるかもしれません。もちろん小さい時に慎重だからといって、慎重な大人になるとも限らないんです。なので、ずいぶん先のことを心配する必要はないと思います。

I:はい。まずは心配しなくてよい、と。

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高橋先生:言うまでもなく、大きな失敗とか本当に危ないことは、先回りして親が注意して防いであげなければいけません。けれども、子どもにとって非常に重要なことは、【取り返しのつくような小さな失敗】をたくさんさせてあげることだと思います。

I:本にも書かれていたことですね。

高橋先生:ええ。ただ、このringoさんは、自分でも「注意ばかりしていいのだろうか」と、そういうふうに気づいていらっしゃるので、一言で言うと問題はないと思います。もし何か伝えるべきことがあるとするならば、まだ子どもが小さいうちに、小さな失敗を少しずつさせてあげて、それを自分でリカバリーする、そういう経験を積ませてあげてください。できなくてもいいからやってごらん、とかそういう言葉がけが良いのではないかと思います。

I:ありがとうございます。ringoさん、いかがでしたでしょうか? 是非参考になさってください。それでは、次の質問ですが…これも、ringoさんからのご相談ですね。

子どもがあまりチャレンジしたがらない傾向があります。

Q3

高橋先生:先ほどと同じ方の質問なので4歳と2歳のお子さんがいて、これは上の4歳のお子さんが慎重になっている、失敗を恐れてしまうような傾向があるという相談ですね。なるほど。まずお伝えしたいのでは、そういう上のお子さんの性格、特徴をringoさんはしっかり把握してらっしゃる。僕はそれで充分じゃないかと思いますね。

I:大前提として、そこが見えている、見ようとしているringoさんの姿勢が、素晴らしいと。

高橋先生:はい、先ほど「小さな失敗を用意してあげましょう」と申し上げましたけど、多分もう、ご自身でお分かりになっていると思います。それからこの今の質問に関してですが、怖いからやらないとか、できないからやらないっていうのは、誰にでもある感情です。僕もそんな子でしたし、今でもそんな気がしますよね。それ自体、人間として間違った考えではないですよね。多少、慎重派なだけなんです。

I:石橋を叩いて渡る、というタイプですね。

高橋先生:その4歳の上のお子さんが慎重派になったひとつの背景としては、お母さんが少し“先回り育児”をしてしまったからかな?という風には思います。今、それを少し修正してあげようと感じているのなら、これからはいろんなことを失敗させてみるというのも、一つの手だと思います。失敗はよくあることなんだよ、負けることなんて何でもないことなんだよ、と。それで誰かが責めたり、笑ったりするものじゃないんだよって、そういういい体験をさせてあげると良いんじゃないでしょうか。

I:そもそもチャレンジをする、チャレンジをすごくしたがる子、したがらない子の傾向というのは、それは生まれながらで決まっている「個性」なんでしょうか?

高橋先生:それは色々だと思います。双子の研究でも言われていましたが、遺伝というか、意外にそういうところが親に似るんですね。ですから何にでもチャレンジして失敗を重ねながら成功を手に入れてゆく人もいますし、非常に慎重に準備をして、勝率が高い形で成功を積み上げてゆくという人もいます。そして生まれ持っての考え方が親に似る場合もあるし、そういう親に育てられたから、そういう傾向になることもあり。(相談者の)ringoさんが、上のお子さんが慎重派なのは、教育方針の結果かもしれないし、持って生まれたものかもしれない。それはわかりませんが、僕はどちらでも良いと思うんですね。

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高橋先生:色んなチャレンジをしていく子が良い子のように思えますが、それはたくさん失敗もしますし、場合によっては人に迷惑をかけているかもしれません。それなりに苦労はしますよね。それはもちろん素晴らしいんですが、一方、非常に慎重で引っ込み思案と言われながら、でも実はいろんなことを頭の中で考えて努力していて、いざやるとなるとちゃんとできる子もいますよね。それぞれのやり方なので。そのパターンというのは割と生まれながらに持っているものです。男の子か女の子かによっても違いますし、長女か次女か、一人目か二人目かって特徴もありますよね。そういった遺伝の影響と環境の力のバランスで「人格」が作られていくんだと思いますね。

I:なるほど。少し話を元に戻しますが、ringoさんのご相談内容からすると、お母さんの中の「こうした方が良い」っていうルール、お約束もいっぱいあるのかなというのが感じ取れるんですね。一方で、小さな失敗をさせてあげた方がいいのでは、という先生のご意見も当然、ringoさんも納得されると思うんですけど、その小さな失敗を、どういう風に親として考えていったら良いのか。身体的にリスキーな失敗はもちろん回避するとして、実際に子育てする上で悩ましいのは、そこのボーダーラインをどのあたりに引くかだったりしますよね。

高橋先生:そうですね。たとえば電車の中で静かにしなさいというのは、それは失敗というよりは、躾の話だと思いますので、それは別問題として…。失敗を繰り返して、失敗を苦としない、そういう強い子に育てる一番有効かつ効率的な方法は、友だち同士で遊ばせることだと思います。

I:はい、ここでも「遊び」がポイントになってくるんですね。

高橋先生:子どもの遊びって、だいたい勝負事が絡んでいますよね。おもちゃを奪い合うとか、勝ち負けや失敗・成功が組み込まれている。だから子どもの遊びはすごいんです。そういう意味でも、子ども同士を遊ばせる、なおかつ親は、あまり口を出さないっていうのが、“ほどよい失敗”を重ねる上手な方法かなと思います。

I:なるほど。チャンジしたがらないこと自体はお嬢さんの「性格」「性質」の可能性もあるし、それ自体は問題ないことだけれども、もしチャンジ精神を育みたいなら“ほどよい失敗”を経験させることが大切で、それは特別なことをさせるというよりも、お友だちとの遊びの中で実体験を積むのが一番だということですね。ありがとうございました!

 

「いま、日本一相談したい小児科医高橋孝雄先生の〈子育てアレコレ相談室〉」のレポート記事第一弾はここまで。いかがでしたでしょうか? コロナ禍で子育てに不安を抱えてらっしゃるママ・パパも多いかと思いますが、子どもは大人が思っている以上に強くたくましいと高橋先生はおっしゃいます。今こそ子どものチカラを信じて、できるだけ明るく前向きに子育てをすることが大切だということを教えていただきました。さて次回以降も、その他のテーマについての回答をまとめていきますので、お楽しみに!

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