【小児科医・高橋孝雄の子育て相談 特別編】vol.1 
相談「コロナ禍は、子どものコミュニケーション能力に影響する?」ほか

小児科医 / 高橋孝雄先生

子どもがあまりチャレンジしたがらない傾向があります。

【相談3】
4歳の娘が、上手にできないことに対してチャレンジしたがらない傾向があります。
上手にできることがいいこと、
上手にできないことや失敗は恥ずかしいこと
というイメージがあるようです。
上手にこだわらず、失敗を恐れず
いろんなことにチャレンジできるようになるといいなと思っていますが、
どのように寄り添っていくのが良いでしょうか?(ringo)

高橋先生:先ほどと同じ方の質問なので4歳と2歳のお子さんがいて、これは上の4歳のお子さんが慎重になっている、失敗を恐れてしまうような傾向があるという相談ですね。なるほど。まずお伝えしたいのでは、そういう上のお子さんの性格、特徴をringoさんはしっかり把握してらっしゃる。僕はそれで充分じゃないかと思いますね。

I:大前提として、そこが見えている、見ようとしているringoさんの姿勢が、素晴らしいと。

高橋先生:はい、先ほど「小さな失敗を用意してあげましょう」と申し上げましたけど、多分もう、ご自身でお分かりになっていると思います。それからこの今の質問に関してですが、怖いからやらないとか、できないからやらないっていうのは、誰にでもある感情です。僕もそんな子でしたし、今でもそんな気がしますよね。それ自体、人間として間違った考えではないですよね。多少、慎重派なだけなんです。

I:石橋を叩いて渡る、というタイプですね。

高橋先生:その4歳の上のお子さんが慎重派になったひとつの背景としては、お母さんが少し“先回り育児”をしてしまったからかな?という風には思います。今、それを少し修正してあげようと感じているのなら、これからはいろんなことを失敗させてみるというのも、一つの手だと思います。失敗はよくあることなんだよ、負けることなんて何でもないことなんだよ、と。それで誰かが責めたり、笑ったりするものじゃないんだよって、そういういい体験をさせてあげると良いんじゃないでしょうか。

I:そもそもチャレンジをする、チャレンジをすごくしたがる子、したがらない子の傾向というのは、それは生まれながらで決まっている「個性」なんでしょうか?

高橋先生:それは色々だと思います。双子の研究でも言われていましたが、遺伝というか、意外にそういうところが親に似るんですね。ですから何にでもチャレンジして失敗を重ねながら成功を手に入れてゆく人もいますし、非常に慎重に準備をして、勝率が高い形で成功を積み上げてゆくという人もいます。そして生まれ持っての考え方が親に似る場合もあるし、そういう親に育てられたから、そういう傾向になることもあり。(相談者の)ringoさんが、上のお子さんが慎重派なのは、教育方針の結果かもしれないし、持って生まれたものかもしれない。それはわかりませんが、僕はどちらでも良いと思うんですね。

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高橋先生:色んなチャレンジをしていく子が良い子のように思えますが、それはたくさん失敗もしますし、場合によっては人に迷惑をかけているかもしれません。それなりに苦労はしますよね。それはもちろん素晴らしいんですが、一方、非常に慎重で引っ込み思案と言われながら、でも実はいろんなことを頭の中で考えて努力していて、いざやるとなるとちゃんとできる子もいますよね。それぞれのやり方なので。そのパターンというのは割と生まれながらに持っているものです。男の子か女の子かによっても違いますし、長女か次女か、一人目か二人目かって特徴もありますよね。そういった遺伝の影響と環境の力のバランスで「人格」が作られていくんだと思いますね。

I:なるほど。少し話を元に戻しますが、ringoさんのご相談内容からすると、お母さんの中の「こうした方が良い」っていうルール、お約束もいっぱいあるのかなというのが感じ取れるんですね。一方で、小さな失敗をさせてあげた方がいいのでは、という先生のご意見も当然、ringoさんも納得されると思うんですけど、その小さな失敗を、どういう風に親として考えていったら良いのか。身体的にリスキーな失敗はもちろん回避するとして、実際に子育てする上で悩ましいのは、そこのボーダーラインをどのあたりに引くかだったりしますよね。

高橋先生:そうですね。たとえば電車の中で静かにしなさいというのは、それは失敗というよりは、躾の話だと思いますので、それは別問題として…。失敗を繰り返して、失敗を苦としない、そういう強い子に育てる一番有効かつ効率的な方法は、友だち同士で遊ばせることだと思います。

I:はい、ここでも「遊び」がポイントになってくるんですね。

高橋先生:子どもの遊びって、だいたい勝負事が絡んでいますよね。おもちゃを奪い合うとか、勝ち負けや失敗・成功が組み込まれている。だから子どもの遊びはすごいんです。そういう意味でも、子ども同士を遊ばせる、なおかつ親は、あまり口を出さないっていうのが、“ほどよい失敗”を重ねる上手な方法かなと思います。

I:なるほど。チャンジしたがらないこと自体はお嬢さんの「性格」「性質」の可能性もあるし、それ自体は問題ないことだけれども、もしチャンジ精神を育みたいなら“ほどよい失敗”を経験させることが大切で、それは特別なことをさせるというよりも、お友だちとの遊びの中で実体験を積むのが一番だということですね。ありがとうございました!


「いま、日本一相談したい小児科医高橋孝雄先生の〈子育てアレコレ相談室〉」のレポート記事第一弾はここまで。いかがでしたでしょうか? コロナ禍で子育てに不安を抱えてらっしゃるママ・パパも多いかと思いますが、子どもは大人が思っている以上に強くたくましいと高橋先生はおっしゃいます。今こそ子どものチカラを信じて、できるだけ明るく前向きに子育てをすることが大切だということを教えていただきました。さて次回以降も、その他のテーマについての回答をまとめていきますので、お楽しみに!

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