パートナーとともに…「男性不妊」治療の現場(前編) 

ミキハウス編集部

妊娠、出産は女性ひとりが担っているものではありません。当然のことながら、新しい命を宿すには、男性の存在が不可欠です。

1998年に世界保健機関(WHO)が「不妊」の原因に関する調査結果を発表しました。それによると、「男性側に原因」のある場合が24%、「男女ともに原因」のある場合が24%、「女性側に原因」のある場合が41%、残りの11%が原因不明となっています。約半数の不妊が、男性側にも問題があるという現実に、驚く人も多いのではないでしょうか? 

男性不妊治療の専門医として、第一線で活躍する「リプロダクションクリニック大阪」の石川智基医師にお話をうかがいました。

 

男性不妊でいちばん多い「乏精子症」とは?

――男性不妊の原因の中でいちばん多いものは何でしょうか?

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順番に上げると、「乏(ぼう)精子症」「無精子症」「性機能障害」です。

男性が病院にいらしたら、まず視診、触診の後、「超音波検査」や「精液検査」を受けていただきます。精液検査では、精子の数や動きのよさなど、さまざまな項目をチェックします。

WHOの基準でお話しすると、ひとつに、精液中の「精子濃度」が1500万以上/mLであるかどうか。ふたつめに「精子運動率」といって、射精2時間以内の精液において40%以上が運動をしているかどうか。三つめに「奇形率」と呼んでいますが、精子の4%以上が正常形態かどうかなどです。

この基準に合致しない人は、精液所見に問題があると診断されます。精子濃度が1500万未満/mLであれば「乏精子症」、精液中に精子の存在が認められない場合は「無精子症」に。また、精子運動率が40%未満であれば「精子無力症」となります。

――なぜ精子の数が少ない人、精子のいない人がいるのでしょうか?

何が原因かを特定するのは非常に難しいです。正直、はっきりとした原因がわからないことも多いのですが、乏精子症の場合は「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」をまず疑います。精索静脈瘤はほとんど左側にだけ発生するのですが、精巣の静脈に血流が逆流しているために、細い静脈が拡張して「こぶ」のようになっている状態。右側の精巣(せいそう)は、下大(かだい)静脈という大きな血管に還(かえ)っていくのですが、左側は、左の腎静脈に還っていく。この違いが、左側に静脈瘤が発生しやすい理由なのです。

なぜ、精索静脈瘤が造精(ぞうせい)機能によくないかというと、精巣が「温度ストレス」の影響を受けるからです。血管の温度は37~37.5度くらいあるのですが、静脈瘤があると、精巣のまわりを血管が取り囲み、精巣が温まってしまうわけです。もうひとつは、腎臓、副腎からの不純物が入ってきて「酸化ストレス」を受けます。つまり「エイジング」と同様のことが起きます。これらが原因で、精液所見が悪くなってしまうのです。

そのため、精索静脈瘤がなくなれば、だいたい7割の人は精液所見がよくなっていきます。自然に妊娠する可能性も出てくるというわけです。

そのほか、「造精機能障害」であることも考えられます。これは、精子を造る機能に問題があるもの。よく「成人男性がおたふく風邪になると種無しになる」などといわれますが、これはおたふく風邪のウイルス感染で精巣炎になったケースを指しています。「精巣炎=精子がなくなる」ということではないのですが、機能障害に陥るケースはあります。

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