響きで印象、性格も変わる!? 名づけと音の関係

ミキハウス編集部

ミキハウスがベビークラブの会員さまを対象に毎年行っている「名づけ調査」。今年で5回目を迎えたこのアンケート調査で、今年最も多くのママ・パパが「名前を決める時に意識したこと、気を付けたこと」にあげたのは、「音の響きがよい」ということでした。そこで今回は慶應義塾大学言語文化研究所の准教授で、音声学者の川原繁人先生に音の響きと名前の関係について教えていただきます。

 

自由になった名づけから生まれた“音の響き”へのこだわり

自由になった名づけから生まれた“音の響き”へのこだわり

2017年以来、ミキハウスはベビークラブ会員さまを対象に名づけの意識調査を実施しています。今年9月に行った「名づけ調査2021」では、「お子さまの名前を決める際に意識したことや、気をつけたこと」(複数回答可)」に対して、63.6%のママ・パパが「音の響きがよい」ことを選んでいます。毎年多くの支持を集める「音の響きがよい」ですが、今年は「字画がよい」(58.9%)や「キラキラネームを避ける」(46.4%)を押さえて1位になりました

お子さまの名前を決める際に意識したことや、気をつけたことを教えてください。

かつては漢字の意味や字画を気にすることが多かった名づけで、音の響きがこれほど重視されるようになったのはどうしてなのでしょうか。自身も6歳と3歳の娘さんを育てる現役の子育てパパの川原先生に、音の響きと名づけの関係について伺いました。

――まず、先生はこの調査結果をどう見られますか?

川原先生:確かに近年、子どもの名前を考える時に音の響きを重視する傾向は強くなってきていると感じています。昔は漢字の意味に思いを込めて、かつ、女の子だったら「子」をつけるなど、テンプレート型が多かったように思います。しかし、最近のお父さん、お母さんは伝統的な名前よりも、オリジナリティがあって知人や周りのお子さんとかぶらない名前を好む傾向にあるように感じます。自由な発想の名づけが容認されるようになり、音の響きにこだわる余地が生まれたということだと思います。

―確かに「子」がつく名前の女の子は昔に比べ少なくなっていますね。

川原先生:明治安田生命の「生まれ年別名前ベスト10(※)」を見ると、1970年代には「子」がついている女の子の名前は、10位以内に半数ぐらいあったのですが、1980年代前半から減少していき、後半になるとほとんど姿を消しています。名前が多様化してきたことの現れの一つでしょう。その結果、もしくはその過程で、音の響きを大事にするようになってきたとも言えるんじゃないでしょうか。

――名づけの自由度が増したことが、音の響きへのこだわりを生んだということですね。

川原先生:そうですね。音の響きによって、人が受ける印象は変わります。丸いイメージ、優しいイメージ、強いイメージ、透明感のあるイメージ…親御さんはわが子に「こうあってほしい」という思いを、響きに反映させているのだと思います。実は近年、ビジネスの場面でも音の響きが持つイメージを利用しようとする研究が盛んに行われています。たとえば新商品を出すときのネーミングについて、商品特性を消費者に感覚的に伝える響きを分析して、実際の商品の名づけに応用するといった試みです。

――音の響きによって人に与えるイメージが変わるということは、言い換えると、何かを伝えるために、最適な音があり、音の響きが特定のイメージと結びつくということでしょうか?

川原先生: ええ。こういう音に対して、人はこういうイメージを持つ傾向にあるという規則が成り立つことが分かってきています。言い換えると、特定のイメージに結びつく音がいくつかあるんですね。ちなみに、これは心理学の領域になりますが、人間の五感はお互いに影響を及ぼし合っていると言われています。昔は、五感は聴覚なら聴覚、味覚なら味覚、とお互いに独立したものと考えられていたのですが、現在の研究では、聴覚情報は味覚に影響するし、視覚にも、触覚にも、嗅覚にも影響を与えうるということが分かってきています。

また、この世には文字を色で感じたり、音階と色が結びついて聞こえる「共感覚者」と呼ばれる人たちがいらっしゃいます。五感を感じる脳部位が明確に専門化されていないために、そういう感じ方をするのだろうと言われていますが、実は人間は生まれた時はみな共感覚者なのではないかという仮説もあります。

――みんなが?

川原先生:あくまで推察ですが。一般的には、後頭葉には視覚の、側頭葉には聴覚の処理にとって特に重要な場所があります。成長に伴って脳の各部位の機能が特化してきて、五感が分かれていくということです。一方、生まれたばかりの赤ちゃんは、脳の各部位の明確な専門化が起こっていないので、外界の刺激を視覚でも聴覚でも触覚でも、脳全体として感じている。

また、母乳やミルクを飲むときに、その味だけでなく、お母さんの匂いや肌の柔らかさなども同時に感じていることを考えると、赤ちゃんは五感全部を使って外の刺激を同時に感じていると考える方が自然だと思います。そうした感覚間同士の影響が大人になっても多少残っているとすると、音によってイメージが喚起されることも自然なことだろうと考えられます。

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