「ハナ」「ナオミ」はグローバルな名前?
米国人研究者が分析する日本の名づけ

ミキハウス編集部

元号が平成から令和へと変わった2019年。ミキハウスは今年度も「名づけ調査」を行い、全国のママ・パパを対象に、名づけに関する意識や考え方などについて尋ねました。本記事では、2017年度、2018年度に行った同様の調査と今年度の結果を比較しつつ、日本人の名前や名づけについて研究している立正大学心理学部准教授のウンサーシュッツ・ジャンカーラ先生の取材をもとにまとめました。

〈調査概要〉

名づけ調査2019調査概要

※2017年度と2018年度は、それぞれ以下の方法で行われました。
2017年度/調査期間:2017年12月12日~18日、有効回答数:4286名(調査対象者、調査エリア、調査方法は今回と同じ)
2018年度/調査期間:2018年12月27日~2019年1月6日、5086名(調査対象者、調査エリア、調査方法は今回と同じ)

 

名づけは多様化しましたが、性別のわかりづらい名前は増えていません

日本の名前や名づけについての論文を数多く発表している立正大学心理学部准教授のウンサーシュッツ・ジャンカーラ先生。米ニューヨーク出身ながら、日本の名前や名づけの奥深さに興味を抱き、日々研究をされています。

ウンサーシュッツ・ジャンカーラ先生

それではアンケート結果と照らし合わせながら、現代日本の名づけの傾向について解説していただきましょう。

――先生に最初に見ていただくのは【お子さまの名前を決める際に意識したことや、気をつけたことを教えてください】のグラフです。まずは率直に、この結果について先生はどう見られますか?

子どもの名前を決めるときに意識したこと、気をつけたこと

ウンサーシュッツ先生:納得できる結果かなと思います。私が研究しているなかでも同じなのですが、ほとんどのママ・パパは音の響きを最初に決める方が多いようですね。音が決まると、次に漢字を探す。そこで字画を見るというパターン。たしかに今回のアンケート結果でも、字画を意識している方は多いようですが、実はその前につけたい名前の「響き」が先にあることが多いような気がします。そもそも、現代の日本で暮らす人々が、字画を意識するというのも大変興味深いですよね。少し“占いチック”というか、普段の生活ではそこまで信心深くない方でも、我が子のことなると話は別ということでしょう。

――たしかにおっしゃるとおりですね。普段、迷信めいたことを信じない人でも、名づけの際の字画は気になるものなんですよね…。

ウンサーシュッツ先生:ただ、日本に限らずどこの国でも子どものことになると親は保守的になるものです。日本ではいつもは神社やお寺には縁のないママ・パパが、赤ちゃんのことになると安産や健やかな成長を祈願しに行きますよね。字画へのこだわりはそれと同じで、わが子の幸せを願う親心なのでしょう。字画にこだわった結果、赤ちゃんの名前が見慣れない漢字の組み合わせになって、キラキラネームと言われてしまう…というのもありがちなのではないかと思います。

赤ちゃんの足

――アンケートの結果では漢字の読みさすさや文字に書いた時の見た目も気になるポイントのようですが、女性・男性らしさにこだわったという回答も目立ちます。ジェンダーレスな社会へと向かいつつあると言われるなかで、名づけに関してはかなりジェンダーを意識しているとも言えるのでしょうか。

ウンサ―シュッツ先生:まずは女性・男性らしさについて考えてみましょう。現代の名づけがニュースやネットで取り上げられる時、多様性の流れの中で『中性化している』と言われてしまいがちですが、今回のアンケート結果ではどうもそうではないと。実は、これは私が過去に分析した結果とも一致します。

――実際にそうなんですね。

ウンサーシュッツ先生:はい。名前は確かに昔に比べて多様化しましたが、性別のわからない名前が増えたかというと、そういうわけでもありません。実際、最近の名前で使われる漢字や音の構成をみると、性別がわかるものが圧倒的に多いんです。「止め字」と呼ばれる最後の漢字に、◯子、◯夫を使うことは今ではほとんどなくなりましたが、その代わりに女の子だと、美(み)、恵(え)、奈(な)だったり、男の子には真(ま)とか人(と)などを止め字に使う名前が多くなっています。例えば「な」で終わる男性名はほとんどないし、最後の音が「ま」という女性名もあまり見られませんよね。性別のわからない名前が増えたわけではないのは、こういうところからも言えるのではないでしょうか。

――毎年発表される名前ランキングや実生活での経験上、名前の“種類”が増えているとは感じていましたが、性別がわかるような “決まった型”は依然としてあるということですね。

ウンサーシュッツ先生:そう思います。また止め字は変わっても、語幹といわれるメインの漢字は意外と変わっていないということもあります。「和」という字を使った女の子の名前を例に上げると、以前は「和子(かずこ)」が多かったのですが、今は和菜(かずな)とか和音(かずね)などあり、止め字はバリエーションに富んできました。でも「和」の読みや意味は変わっていないので、名前に込める親の願いは、そういう意味では変わっていないと言えそうです。

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