「子どもたちと高齢者への応援歌」をマニフェストとし、区長として7年間いろいろな施策を行ってきました。その中に先ほどからお話ししている、待機児童解消への努力もありますが、そこで気づいたのは、文京区の「合計特殊出生率」の低さです。この数値は、人口規模が大きい都道府県では低く、人口規模が小さい都道府県では高く示されることが以前から指摘されています。都会のほうがより子どもを産み育てることが可能な女性の、非婚化や晩婚化の問題があり、文京区も例外ではなかったのですが、このことに対して何らかの手を打つ必要があると感じました。
ちょうどその頃、政府の「少子化危機突破タスクフォース」の第2期メンバーに選ばれ、少子化対策の施策に対して、議論する役を任じられました。いろいろな議論が展開されたのですが、その結果、国が交付金事業を行うことになり、文京区では健康の観点からの取り組みをしたいと名乗りを上げることに。そして始まったのが、文京区版少子化対策である、「ハッピーベイビープロジェクト」です。
地方自治体として何ができるかを考えたとき、最も大切だと思ったのは、男女ともに「正しい知識を早く届けること」。特に女性がキャリアを重ね、ひと段落したところで妊娠しにくいことなどのさまざまな事情に気づくということは、なくしていきたいと思いました。
そのためには、中学時代など早い時期から自分の身体や妊娠の仕組みについて知ることが重要です。そこで、少子化対策への取り組みをしていた民間の有識者や学識経験者をメンバーに、「ぶんきょうハッピーベイビー応援団」という文京区版タスクフォースを立ち上げました。その中で健康に着目して少子化対策を行っていた、予防医療コンサルタントの細川モモさんに座長に就任いただき、活動しています。
具体的な取り組みを挙げると、区の保健師に細川さんへの講義を聞いてもらうなどの研修を実施し、そこで学んだことを含めて、「ハッピーベイビー健康相談」と銘打って、区民の相談に保健師が答える形で正確な知識を伝えていく機会を設けました。また、細川さんが主宰する「社団法人Luvtelli(ラブテリ)東京&ニューヨーク」の全面協力により、区が発行する「ハッピーベイビーガイドブック」も配布しています。
さらに、中学生向けに学習教材として冊子を作成しているところです。そこには、後で「知らなかった」ということがないように、女性の身体と妊娠について記しています。バランスのとれた食生活を心がけ、健康的な身体をもつことが将来の妊娠、出産には大切なこと。また、過度なダイエットが女性の身体に大きな影響を与えることなどです。
来年3月22日には、後楽園のプリズムホールで、「ハッピーベイビー・フェスタ」を開催します。妊娠、出産を望む区民に対して、シンポジウムや講演会、子育て応援企業の紹介をし、これからのライフプランを考えるきっかけになるようなイベントにする予定です。また、2人目、3人目を産みたいと考える人にも役立つような内容も盛り込みたいと考えていて、同プロジェクトの応援団委員のみなさんの協力を得て、さまざまなコーナーも検討しています。かなり大がかりなイベントにしていこうと工夫していますので、ぜひ、多くの人にお越しいただきたいと思っています。
来年4月からは、今まで発行してきた「子育て応援メールマガジン」のほかに、「予防接種アプリ」や「男性不妊検査費助成」も始めます。
妊娠、出産に関する正しい知識を広め、安心して子どもを産むことができる環境を整えること。このことが少子化を食い止め、明るい未来を描ける一歩になると考えています。
【プロフィール】
成澤廣修(なりさわ・ひろのぶ)
1966年、東京都文京区生まれ。駒澤大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了。1991年文京区議会議員となり、2007年から文京区長を務める。2010年長男誕生を機に、「育児休暇」を取得。当時、自治体の首長として初めての取得だったため、大きく報じられる。昨年、内閣府の「少子化危機突破タスクフォース(第2期)」のメンバーに選ばれる。
【関連リンク】
文京区 公式ホームページ
http://www.city.bunkyo.lg.jp/
社団法人Luvtelli 東京&ニューヨーク
http://www.luvtelli.com/