スマホを使う前に…「子どもの発達に何がいちばんいいのか」に立ち返って

スマホを使う前に…
「子どもの発達に何がいちばんいいのか」に立ち返って

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スマートフォン、タブレットと子育てについて、アンケート結果専門家の意見をお伝えしてきましたが、今回はその3回目。“スマホを使うことで子どもの体と心への影響はあるの?”というママたちの疑問を解消するべく、小児科医にお話を聞いてきました。

答えてくれたのは、長年子どもとメディアの関係について警鐘を鳴らしてきた2つの組織、NPO法人「子どもとメディア」(福岡・福岡市)と「日本小児科医会」(東京・新宿区)に所属する、佐藤和夫先生です。

 

ブルーライトは日内リズムを崩す原因に

「子どものスマホ利用に関する調査」では、子どもにスマホやタブレットを使わせたことのある人が6割というのは多いですよね。ウェブアンケートなので、普段からよくインターネットを使う人が答えていて、数字が高めに出たということはあるかもしれません。けれど、時代的に増えているのは間違いないと思います。

では、アンケートで多くのお母さんが心配されていた、子どもの心身への影響についてお答えしていきましょう。

まず電磁波について。スマホではなく、フィーチャーフォンの時代に、耳に当てて使うと聴神経腫瘍が増える可能性があることが示唆され、ヨーロッパでは耳の近くで子どもに携帯電話を使わせないようにという勧告が出ています。小さい頃は聴覚をつかさどる神経細胞が発達する段階なので、大人の僕らより影響が大きいということは否定できません。電磁波のことをものすごく恐れる必要はありませんが、注意しなくてはなりません。

ブルーライトに関しては、日内リズムと関連が深い問題です。朝、人間は体温がゆっくり上がって覚醒して、日中活動し、夜になって眠ります。太陽にリズムがあるように、人間の体内のホルモンや体温にもサインカーブがあるのです。昼は覚醒するホルモンが出て、夜になって暗くなるとメラトニンというホルモンが出る。また、成長ホルモンも夜出るんですね。これを日内リズムといいますが、ブルーライトはこのリズムを崩す原因になります。光は本来、体を起こすための刺激だからです。たとえば、アメリカなど時差のあるところに行くと調子が悪くなり、いわゆる“時差ぼけ”状態になりますが、これが日常生活で起こっているのと同じ。夜、光を浴びていつまでも起きていると、翌朝起きられないし、きついし、フラフラするし、注意力が散漫になります。女性の場合は、ひどいときには生理の不調がきたりもします。

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生まれたばかりの赤ちゃんは、日中でも寝たり起きたりしているのが普通ですが、半年、1年とたつと、だんだん朝の光を浴びて起きて、夜暗くなって寝るというリズムが確立してきます。だから、乳幼児期の子どもが夜寝る前にスマホの光を見ることは、せっかくできてきた日内リズムを崩していくことになってしまうのです。

僕は、1か月健診のときにこういっています。「今まであまり昼夜がなかったかもしれないけど、赤ちゃんは、これから少しずつ昼は昼らしく、夜は夜らしくなっていきます。昼間の明るいときにたくさん親子でかかわりあいましょう。そして、夜は授乳がすんだら暗く静かにして、寝かしつけましょう。たとえお父さんが夜11時くらいに帰ってきても、それから遊ぶのではなく、休日などできるだけ昼間に多くの時間かかわってもらうようにしてください」と。

1歳くらいだと、夜長く寝てくれるお子さんと、夜中に何度も目を覚ますお子さんがいると思うのですが、これも生育環境によるところが大きいでしょうね。赤ちゃん自身の個人差のように思っている方もいるかもしれませんが、その家族の生活リズムが大きくかかわってきます。ふだんはなかなか寝てくれない子でも、早起きをさせて、昼に一生懸命、キャッキャッと声をあげて喜んで体を使ってたくさん遊んだら、その日の夜はコトンと寝てくれます。

15歳まで子どもの目は発展途上 とくに乳幼児期は注意を

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視力への影響もあると思います。「日本眼科医会」が「子どものIT眼症」についてまとめています。IT眼症とはIT機器を長い時間、または不適切に使うことで起こる目の病気やその他の症状のことですが、そもそも、子どもの目と大人の目とはまったく違うもの。少なくとも15歳までは眼球の大きさや形とともに、見る機能や目を動かす機能も発展途上であり、見る環境がそれらの発達に大きく影響すること。また、特に3歳までの目の発達はめざましく、知的・身体的発達も同様に急速であることが記されています。

少し前の提言なので、スマホについての言及はなく、乳幼児は視力検査ができないので視力がグンと落ちたというデータもとれませんが、理論的に考えてスマホが目にいいわけがありません。

子どもの目は、生まれたときには未完成で、毎日自然に物を見ることで次第に見えるようになっていくのです。遠くを見たり、近くを見たり、何かをじっと見つめたり、動くものを見たり。それは、パソコンやスマホなどを近く、一定の焦点距離で見ることとは違うんです。そうやってみることは自然ではないことですから、子どもにとってもよくないと思いますね。

スマホに時間が奪われ心身の発達が遅れるケースも

最後は、心の発達運動発達について。

スマホに限らず、テレビを見たり、ゲームをしたりなど、電子メディアと接する時間のことを「スクリーンタイム」といいますが、これによって、大きく分けて二つの影響があるといわれています。

ひとつは、「ディスプレスメント」。言葉の意味は“置き換え”ということですが、電子メディアが他の時間を奪ってしまうということです。一日は24時間と限られていますから、スクリーンタイムが長くなると寝る時間は短く、運動する時間は短く、勉強する時間は短くなります。つまり、メディア漬けは、睡眠、体力、学力に悪影響を及ぼすということです。

小さい子の場合について考えてみると、スクリーンタイムによって取られる時間は、遊ぶ時間ですよね。お母さんやお父さんと遊ぶ時間が減ります。親子の触れ合いという大事な時間が奪われるのです。スマホに限らず、テレビ、ゲーム、DVDも同じです。

もうひとつは「コンテンツセオリー」。触れるコンテンツの内容に影響を受けるということです。これは少し大きくなってからの話になりますが、たとえば、暴力的なもの、怪奇的なものを見ているとごく一部の人はそれに引っぱられるかもしれません。性的な内容に興奮したり、たばこのCMを見てかっこいいと思い喫煙したりすることも、コンテンツセオリーの問題です。

お母さんたちがスマホ利用に関して、漠然と不安をもつというのは、それを感覚的にわかっているからじゃないかなと私は思います。スマホは便利だけれど、それによって子どものハイハイを一生懸命追いかけたり、“いないいないばあ”をしたりと、昔からやってきたいろいろな遊びをしていないことに気づいているからではないかと。

言葉の発達に関しても当てはまりますよね。子どもは、親としゃべりながら言葉を覚えるものです。ごはんを食べながら、お母さんに「マンマね」と声をかけてもらったり、犬を見たときにお母さんが「ワンワンね」といったりするから、言葉を覚えるんです。何回も何回も自分の耳で聞いて、そのものを見て、統計をとってそれがマンマであり、ワンワンであることがわかるのです。そういうやりとりの時間もメディアが奪ってしまう可能性があります。

2歳までスマホの利用はやめましょう そして親子での触れ合いを

アンケートの中でスマホを使わせるのは、「外出先で子どもの機嫌が悪く、静かにさせたいとき」が1位でしたね。これは“電子ベビーシッター”と呼ばれています。出かけたときだけでなく、食事のしたくなどの家事の最中にというときも含まれます。スマホを子守り代わりにする使い方です。

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僕は、子育ての中でスマホを使うことを全否定するつもりはありません。お父さんは仕事から帰ってくるのが遅い、おじいちゃんおばあちゃんも近くにいないし、助けてくれる人がいないような場合もあるでしょう。お母さんが電子ベビーシッターに頼る状況は理解してあげる必要があります。ただ、いつもスマホに子守りをさせることはけっしてよくないです。アプリで、いないいないばあを見せるより、お母さんがやってあげたほうが楽しいですから。「子どもの心身の発達にとって、何がいいのか」ということを考えることが大切だと思います。

最近のお母さんは子どもとの遊び方を知らなかったりします。手遊びの「1本橋こちょこちょ」を知らないお母さんもいるんです。実際の子育て文化を引き継いでいないから、日中どんなふうに遊んでいいかわからない。だから、こちょこちょをするとか、公園に行って葉っぱを踏んだり拾ったりして遊ぶんですよとお母さんに教えたりすることが必要です。そうすると、電子メディアに頼らずにすむんです。

これは、社会や僕たちにも責任がありますよね。お母さんを責めるだけではだめだと思います。

あとは、早期教育の一環として、知育アプリやその他の電子メディアを使うということですね。子どもが生まれた途端、「今、あなたのお子さんの能力を伸ばさないでどうしますか?」と家庭に上手に商業主義が入ってきますよね。自分の子どもに賢く育ってほしいと思わない親はいないですから、子どものためになるならと始めてしまうのも無理はないことでしょう。

ただ、電子メディアが早期教育に役に立つかどうかはまったく証明されていません。アプリでも、何か問題が与えられてそれが達成できると、「よくできました」とはいうけれど、お母さんに「よくできたね!」といわれたほうが絶対いいんですよ。双方向性のある関わり合いを大切にしてほしいですね。

1999年にアメリカ小児科学会が「2歳以下の子どもにはテレビを見せないようにしましょう」と提言を出しました。これをNPO「子どもとメディア」、日本小児科医会でも採用しています。当時、対象はテレビでしたが、今はスマホという便利なツールまででてきてしまって、一気に広まっている状況です。スマホはコンセントもいらないし、外出先でも使えるので、スマホは遠ざけるのが難しい。

またこれは、お母さんに限ったことではありませんが、スマホに依存している人は多いですよね。「本当に今、それをやらなくちゃいけないの?」という場面でもスマホをいじってしまう。スマホに使っている時間を考えることは、子どもの問題じゃなくて、僕ら大人の問題です。

メディアリテラシーという言葉も一般的になっていますが、「使い方を学び、注意して使いましょう」という、使うことを前提とした考えが乳幼児期の小さい子にまで適用されることに、大きな疑問を感じます。それよりも、五感を通して、ともにかかわりあって、昔ながらの子育てをしましょう。“子どもの心身の発達に何がいいのか”ということを基本に考えれば、安易に子育てにスマホを使うという状況が健全でないことはわかると思います。

【プロフィール】

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佐藤和夫(さとう・かずお)
九州医療センター 小児科医長。約30年小児科医として活躍中。NPO法人「子どもとメディア」代表理事、「日本小児科医会」子どもとメディア委員会委員も務める。

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