夏だからこそ栄養には気をつけて
熱中症の症状はないのに、何となく食欲がなくなったり、疲れやすかったりするなら、夏バテの可能性も。吉村先生によると妊娠中の栄養が足りないことが原因で、体の不調を訴えるプレママも少なくないとのことで、夏バテ気味の方は注意が必要かもしれません。
なお日本産婦人科学会(※1)のデータには、妊娠中に多く必要となる栄養の代表として、細胞の新陳代謝をうながす葉酸と赤ちゃんの骨や歯を作るカルシウム、赤ちゃんに栄養と酸素を届ける血液の成分になる鉄分が挙げられています。
ちなみに、緑黄色野菜に多く含まれる葉酸は、妊娠前の約2倍の480㎍、豆製品や魚、肉に多い鉄分も約2倍の21.0mgが必要となっています。食卓に乳製品が少ない日本人はもともとカルシウムが不足しているという指摘もあります。
「葉酸は必要量を食事で摂るのは難しい」という吉村先生はサプリメントを上手に利用することを提案しています。
「鉄はたんぱく質やビタミンCと一緒に摂ると吸収が良くなるなど、知識があれば改善できることもあります。また、日本人の女性はやせ志向が強くて、炭水化物などエネルギーも足りていません。出産時には妊娠前より10~12㎏ぐらい体重が増加しているのが理想なんです。栄養状態を改善するためには、医療機関などで食事指導を受けるのも有効ですよ」(吉村先生)
妊娠しても体重がそれほど増えなかったママから生まれる赤ちゃんは、低体重(2500g以下)になりやすいと言われています。小さく生まれた赤ちゃんは、子宮内の低栄養にさらされた代謝経路を持ったままで成長するために、成人してから生活習慣病になるというDOHaD(ドーハッド)仮説(※2)が、最近の医学界では主流になっているそうです。
「夏だから、暑いから、食べられなくても仕方がない…というのではなく、少しずつ何回にも分けて食べる“分食”など、自分なりに工夫して、十分な栄養を摂り、体重の維持、増加を心がけてください。それでも食べられなかったら医療機関で点滴を打ってもらうなりしてください。なにもしないで放置するのが一番よくないですよ。わが子の将来のために健康な体の基礎を作ってあげられるのは、ママだけなのですから」(吉村先生)