――日本人男性が子育てをしたくても思うようにできないでいる背景には、個人の意志の問題というより、社会の問題もあるかもしれません。そもそも、みなさんの国で「イクメン」にあたるような考え方、言葉はあるのでしょうか?
クリスさん:アメリカにはそのような言葉はありませんね。“子育てに積極的に関わろうとする男性”は当たり前の存在なので、あえて「イクメン」という言葉は必要ありません。日本でここ数年よく使われているのは、まだ当たり前の存在になっていないからですよね。ただ、アメリカでは、母親が家計を支える大黒柱になっている家庭も増えてきていて、その場合は、夫が専業主夫になるケースも珍しくなくなってきています。そんな旦那さんのことを「トロフィー・ハズバンド」といったりします。この“trophy husbands”とは「料理や洗濯などの家事一切を引き受け、妻の弁当を用意して、子どもと遊んであげて、さらにジムで身体を鍛えるなど健康意識の高い夫」を指すのですが「イクメン」よりだいぶ先をいっていますね(笑)。
ベンさん:フランスでは、最近「新しいパパ」という表現がでてきました。お母さんの役目もするお父さんといったニュアンスの言葉ですが、「お父さんはお父さんらしくしなければならない」という批判と男女平等の観点から、この言葉の是非が議論されています。「イクメン」にしろ「新しいパパ」にしろ、古い価値観にとらわれず、新しい父親像をこれからつくっていくべきなのでしょう。
――新しい父親像をつくっていくために、職場環境はとても重要なものになると思います。みなさんは、日本企業がどのように変われば、日本人男性がもっと子育てに参加できるようになると思いますか?
盛さん:もっとみんな「効率」を重視して働くべきだと思いますね。どうすれば効率よく仕事をすることができるかを考えて、より積極的に子どもと一緒に過ごす時間を確保すべきです。私の上司は、働く時間の長さで仕事を評価しません。時間内に効率よく仕事をして結果をだす、そのことを評価してくれるのがとてもありがたいです。
ベンさん:確かに「効率」は大事ですね。日本はクライアントを納得させるために、必要以上の人員を割いたり、礼儀を重んじ過ぎたりして余計な時間を使いすぎているように感じます。本来は、ちゃんといい仕事をしていたらそれで問題ないはずなのですが、体裁を重んじるというか…。
金さん:そのためには、数値等の客観的な評価基準も必要ですね。日本で最初に入った会社は、それがなかったため、上司の属人的評価で長い時間働いている人が評価される傾向にありました。つまり、残業している人の方が偉い(笑)。今の会社は数値で評価してくれるためそれに応えていれば、子どもの世話などで休みが必要になっても温かく送り出してくれます。