特集「男性不妊」(後編)自分自身について知ることから始まる パパの不妊対策

特集「男性不妊」(後編)
自分自身について知ることから始まる
パパの不妊対策

妊娠・出産インフォ

日本産科婦人科学会では、不妊を「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年経っても妊娠しないこと」と定義しています。赤ちゃんが欲しいと思っているのに、1年経っても妊娠の兆しがないなら、男性か女性のどちらか、もしくは両方になんらかの不妊の原因があると言えます。つまり、不妊の原因は女性だけでなく男性にもあるのです。

そこで特集「男性不妊」では、獨協医科大学埼玉医療センターの小堀善友先生に男性が原因の不妊についてインタビュー。前編の「精子の話」に続き、後編では「不妊に対する男性の意識改革」を考えていきましょう。

 

不妊治療の一歩目にすべきは男性の「精液検査」

2-02

「妊娠するのは女性」ということから、長い間不妊は女性の問題と考えられていました。でも受精には男女の存在が必要です。原因がどちらにあるにしろ、不妊は2人の問題と言えるでしょう。

WHO(世界保健機構)の調査でも、男性側にも不妊症の原因があるケースは48%と約半数に上るとされています。

2-03

ところが、自分が不妊かも知れないと考える男性は、「実態よりもかなり少ない」と小堀先生は指摘します。

「男性側に不妊の原因がある場合、多くは精子の機能に問題があります。故に、不妊治療の第一歩目にやるべきことは、男性の場合は精液検査になります。これをやっておけば、まず自分の精子が自然妊娠できる能力を有しているかどうかがわかるわけですから。しかし、“男の沽券”にかかわると思っているのか、精液検査をする男性は非常に少ない。自分の妊娠能力に疑いを持つ人が少ないというか、不妊はパートナー側の問題だとどこかで思っているのでしょう」(小堀先生)

不妊の疑いがあれば、男性はまず精液検査をすることが重要です。ちなみに精液検査を受けた男性に対するアンケートでは、検査のタイミングは「パートナーの検査が終わってから」という回答がほぼ半数を占めていたそうですが、「加齢により精子の質も劣化することを考えれば、少しでも早く検査を受けておいた方が得策です」と小堀先生。

男性の不妊に対する「意識改革」は急務だと言えます。しかし、男性不妊を検査する医療機関が足りていないという別の問題もあるようです。

「男性も気軽に受診できるような不妊治療専門のクリニックは、大都市圏にわずかにあるだけです。ある調査では、精液検査を受けた男性の70%以上が、最初の精液検査を受けたのは産科・婦人科だという結果が出ています。産科や産婦人科で男性が検査をする、というのはなかなか抵抗を感じられる方も少なくないと思います。今後はもう少し、抵抗感なく精液検査ができる医療機関、たとえば男性不妊専門の泌尿器科を増やすなどの対策が必要でしょう」(小堀先生)

ご自宅で簡易検査する方法もあります

2-04

男性が検査をしない問題。背景にあるのは“沽券(=プライド)”、“そもそもの意識の低さ”、“検査環境の不備”など、さまざま要因があるようです。そうした問題がありながらも、今ある危機をなんとかしようと小堀先生は、誰でも気軽に自分の精子を確認できる「スマートフォン用 精子観察キット」をメーカーと共同開発したそう。

それがこちら。

2-05

TENGA MEN’S LOUPE
テンガメンズルーペ【スマートフォン用 精子観察キット】(参考価格 1620円)

このキットは、拡大レンズに乗せた精子をスマートフォンのカメラで動画撮影して観察する仕組みになっています。最大550倍に拡大した精子の画像を見ることができるそうです。

「精子の数とか運動量とか、これを見れば一目瞭然です。どうも量が少ないな、動きが鈍いなと思ったら、医療機関に受診してみてください。もちろん精子の様子は、疲れなど体の状態によっても違いますから、何度か試していただけると。とにかく自身の精子を調べることが、不妊治療の第一歩になります。これを機会に不妊治療に積極的に取り組んでいこうという行動になっていくのではないかと期待しています」(小堀先生)

実際にキットで自分の精子を調べてから、本格的に不妊治療を始めた男性もいるそうです。まずは“自分自身”を知ることから始めてみましょう。

 

さて、男性不妊の中には検査で原因を特定して、薬や手術で治療して、自然妊娠が可能になった例はたくさんあると小堀先生は言います。一方、男性不妊の半分は突発性と呼ばれる原因不明の疾患で、治療ができないという現実も。そうなれば自然妊娠は望めません。

「繰り返しになりますが、不妊対策は早めに検査をすることがなにより。仮に男性の精子が原因で自然妊娠が叶わないとしても、今や妊娠は自然妊娠以外の方法もあるわけですから、希望を失わずにその他の方法を模索すればいい。年齢を重ねれば重ねるほど男女ともに子どもが出来づらくなることだけは確かですから、まずは早くに行動を起こすことが重要です。ですから男性はとにかく精子の検査をすることからはじめてください」(小堀先生)

最後に、小堀先生は「男性不妊疾患別内訳比較」(2014年度)の調査結果において、性機能障害が13.5%と大きく増加している点について、こう語ります。

2-06

「ここまで精子の量や質についてお話してきましたが、昨今で特に増加しているのは性機能障害です。性機能障害には、大きく分けて勃起障害と射精障害があります。勃起障害は、最近ではほとんどが薬で治る病気になりましたが、女性の膣の中に射精できない射精障害は、2014年度は全体の7%を占めるほどに増加しています。男性が膣内に射精できなければ、自然妊娠はできません。こうした性機能障害の原因は精神的なものだけでなく、性習慣によってひき起こされる場合もある。つまり、氾濫する性の情報の中で間違った習慣を身につけてしまうことが射精障害につながっているのです。これは特に若い世代に顕著に見られる傾向ですが、妊娠を望むカップルにとっては大きな課題のひとつとなりつつあります」(小堀先生)

深刻化する不妊問題を受けて、近年、政府や自治体も不妊治療費用の助成や、不妊相談窓口の設置など、対策(※)に乗り出しています。不妊の悩みは、ふたりで抱え込まないで、可能な限り専門医に診てもらったり、有用な情報を入手するなどしてください。その上で、お互いをいたわり妊娠のために努力することで、二人の絆も強くなっていけば、それは夫婦やカップルにとってかけがえのない時間になるのではないでしょうか。

〈参考文献〉
※「不妊に悩む夫婦への支援について」(厚生労働省 平成25年)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html

 

dr

【プロフィール】
小堀善友(こぼり・よしとも)
獨協医科大学 埼玉医療センター リプロダクションセンター 准教授。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピスト。男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症を専門とする。著書に、「正しいマスターベーション」、「妊活カップルのためのオトコ学」、「泌尿器科医が教える男の『性』活習慣病」などがある。

books

妊娠・出産インフォ トップに戻る