赤ちゃんの頃はあどけない笑顔でママやパパをいやしてくれたわが子が、「イヤ!」と言うようになって自己主張を始めたら…。昔から「イヤイヤ期」はほとんどの子どもが通る成長のプロセスとも言われますし、“魔の2歳児”という言葉もあるほど。ただ、こうした「現実」を目の当たりにすると、どう対応していいのかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。
第6回目の「高橋たかお先生の何でも相談室」は、自我が芽生えはじめた子どもの意思をどこまで尊重したらいいのか、社会の一員としてのふるまいを教える“しつけ”のあり方はどうあるべきかについて、慶應義塾大学医学部小児科教授の高橋孝雄医師にお伺いいたします。
自分で決めて失敗する——そこから子どもは多くを学びます
担当編集I(以下、I):個人差はあるでしょうが、2歳ぐらいになると、急に子どもが「イヤ、イヤ」と言い出して、ママ・パパとしてもどうしたらいいかわからなくなることも多くなります。いわゆる「イヤイヤ期」というやつです。
高橋先生:そういう時期はほとんどの子どもにあります。
I :やるなって言ってもそれをやる。逆にやってほしいことをやらない。もちろん、押さえつけるのではなく自主性を重んじるのがいいのかなぁとも思いつつ、放置していたらわがままなになってしまうのでは…とも思うわけです。これ、境界線というか、親としては、どこまで許していいのかを判断するのは難しいところですよね。
高橋先生:まぁ、そうですね。ただ、基本は自主性に任せる、やりたいようにやらせるのがいいと思います。もちろん命に関わるようなことをやりたがったら、それは止めるべきでしょう。でもたいていの場合、子どものやりたいようにやらせたって、それほど大変なことが起きるわけではありません。
I :まぁ、そうですが…。
高橋先生:まずは、やりたいようにやらせればいい。失敗して痛い目にあうこともあるでしょう。転んで痛くて泣いたり、お友達とケンカになったり。好き嫌いを言って与えられた食事を食べないと、あとでおなかが空くこともあるだろうし。子どもは必ずそれで「何か」を学ぶんです。わざと失敗するように仕向ける必要はないけれど、大人にとってはわがままにしか聞こえないことでも、本人がそうしたいと言うなら一度はやらせてみるといいんじゃないですか? 失敗は貴重な経験ですよ。
I :なるほど。
高橋先生:もちろん失敗せずに一生暮らせたら、それはそれで幸せなことかも知れません。でもそんな人がいるのかな。小さな子どもでなくても、大人だって失敗をすることはありますよね。大人であれば自分の判断で失敗したら、それは自業自得と納得するでしょ? 子どもだって同じなんじゃないかな。
I :親がどうこうできる問題じゃないんですね。つまり自我が芽生えて、イヤイヤ期になったら、命にかかること以外は子どもの自主性に任せて、親は見守るしかないと。
高橋先生:そう。世の中には失敗っていう教訓が用意されているので、どこまでも暴走できるものではありませんよ。どこまで許すかとか考えるよりも、まずは子どもの思うようにさせてみれば、子どもは失敗から自然と学んでいくのではないでしょうか。そして、それくらいのスタンスでいた方が、親も子どもも楽だと思います。