小さい時にあちこち旅行に連れて行ったのに、すぐに忘れてしまったとがっかりしている先輩ママ・パパの話を聞くことがあります。いわんや生まれて初めての旅なんて、子どもの記憶に残るものではないでしょう。もっとも、ママやパパのリフレッシュのために行く旅行と考えれば、そもそも記憶に残るか残らないかは、気にすることではないかもしれません。
一方、村田さんはこうおっしゃいます。
「たしかに1歳未満はもちろん、幼い時の記憶は、成長すれば覚えていないでしょう。実際に、私の息子は高校生になりますが、小さい時の旅は忘れていることも多いです。ただ、旅をしながら母として見守ってきた経験から、覚えていなくても、日常から離れた新しい経験に笑ったりびっくりしたり、ママやパパと過ごした心地よい時間は、心の成長や安定感に寄与すると強く感じます。幼児教育や脳科学の先生にもお話を聴く機会があったのですが、幼い時の経験は、思い出せないだけでしっかりと残っている。その後の成長やものを考えるプロセスにも影響してくるそうで、すごく腑に落ちました。旅先で撮った写真やムービーなど旅をカタチにしておくと、それを少し成長してから家族で見返すことができます。こんな楽しい思い出があったんだ、こんなにも愛されていたんだとわかると、それはそのまま自己肯定感にもつながると感じます」(村田さん)
子どもとどんどん旅に出るべき————村田さんはインタビュー中に、何度もそう言います。それは自身が子育てをしてきて、そしてお子さまと旅をしてきて、たくさんの大切なものを見つけたから言える言葉なのでしょう。
「日ごろ仕事や家事で忙しくして、子どもとゆっくり接することができないことに罪悪感を抱いているママやパパこそ家族旅行に行ってほしいと思います。旅は仕事や家事から解放されるので、子どもと向き合ったり、家族の絆を深める機会でもあります。また子どもが1歳、2歳、3歳と成長するにつれて、旅が持つ意味、意義深さも変わってきます。少しお兄さん、お姉さんになったら一緒に旅行計画を立ててみるのもいいと思います。旅行計画中に想像力や考える力を身につけ、そして旅先で本物と触れるリアルに体験することで、いろいろな刺激を受けて、日常では学ぶことができない多くのことを学べると思うんです」(村田さん)
大人になるまでに、愛する我が子と何度旅に行けるものなのでしょうか。限られた親子の時間。初めての旅行は、これからの親子の物語を彩るいい思い出になることは間違いありません。
今月末から始まる大型連休。赤ちゃんとのはじめての旅行、計画してみませんか?
【プロフィール】
村田和子(むらたかずこ)
旅行ジャーナリスト 旅で子どもの知的好奇心やコミュニケーション力を育てる「旅育」を提唱し、『旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(2018年・日本実業出版社)』を出版。1児の母。息子さんが9歳の時には、子連れ旅行で47都道府県を制覇し、海外旅行の経験も豊富。子育て向け雑誌や新聞など、各種メディアで子連れ旅行・旅育について紹介。現在はトラベルナレッジ代表として、講演やコンサルティングなど、幅広い活動を旅の魅力を伝えている。